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テラ・ドス・ヴェルメロス(11)
地図にない王国(14)
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「……アレがソレか」
「どれがソレ?」
「ほれ、見りゃあわかる」
オクルスがレインスに暗視鏡を手渡す。
「……ああ、やっぱり全体は確認できないけど、アレね」
「あの坊さんが言ってたヤツか?」
アルマージュが暗視鏡を覗くまでもなく述べた。
頷きながら、レインスはララに暗視鏡を回す。
ララは暗視鏡の向こう、樹海の中を何かが蹂躙しながら進んでいるのを見た。
大樹たちよりもほんの少し背丈が小さいソレは、その全体像を見せてはいないがなるほど、坊さん――ハイアーマウントが言っていた通り“巨人の連隊”あるいは“ひと繋がりの巨体”のようにも見える。
「何なんだアレ? マジで」
「間近に近づけたらなあ。アズールでひとっ飛びしてみるか?」
「バカ言え。君子危うきに近寄らずだ」
オクルスをアルマージュが制する。
と、レインスが二人の肩を叩きながら言った。
「ねえ、ちょっと見て」
「いや、暗視鏡がないと何も見えねえって」
アルマージュは答えながら、暗闇に目を凝らした。
ぼんやりとではあるが、樹海の中に赤黒い点のような光が見え始めた。
次の瞬間、樹々の中から赤いレーザーが放たれた。
地上から上空にかけてうねるように放たれたソレは、“何か”の前方を一瞬照らし、夜空に消えていった。
「ララさん、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です、オクルスさん。望遠鏡そのままで見ていたら危なかったかもですけど、この暗視装置?のお陰で直視せずに済みました」
「何だアレ? 何をしたんだ?」
アルマージュが問いかける。
ララがアルマージュに暗視鏡を手渡しながら答えた。
「多分、鳥を落としたんだと思います」
「鳥?」
「はい。オクルスさんとレインスさんも、あの何かのちょうど真上に、鳥の群れができていたのを見ませんでしたか?」
「そう言えば、確かに見たわ。あんだけ樹々を騒がせながら進んでるんだから、そりゃあ鳥も怒るわよね」
「ええ。ソレを薙ぎ落とすコトが目的だったようです」
「みたいだな。レーザーを逃れた鳥たちが慌てて逃げてるよ」
アルマージュが暗視鏡を覗き込みながら話す。
「鳥たちが苦手なのかねえ」
「……あるいは食べるため、とか」
「ヒエッ」
思わぬララの想像に、アルマージュは肩をすくめてみせる。
オクルスがレインスに言った。
「しかしレインス、よく肉眼でレーザーの発射前動作に気づいたな」
「あら。女の方が赤い光がよく見えるから、男よりも夜景が綺麗に見えるって知らない?」
「そうか、今は女だったな」
「誰かさんのお陰でね」
「どれがソレ?」
「ほれ、見りゃあわかる」
オクルスがレインスに暗視鏡を手渡す。
「……ああ、やっぱり全体は確認できないけど、アレね」
「あの坊さんが言ってたヤツか?」
アルマージュが暗視鏡を覗くまでもなく述べた。
頷きながら、レインスはララに暗視鏡を回す。
ララは暗視鏡の向こう、樹海の中を何かが蹂躙しながら進んでいるのを見た。
大樹たちよりもほんの少し背丈が小さいソレは、その全体像を見せてはいないがなるほど、坊さん――ハイアーマウントが言っていた通り“巨人の連隊”あるいは“ひと繋がりの巨体”のようにも見える。
「何なんだアレ? マジで」
「間近に近づけたらなあ。アズールでひとっ飛びしてみるか?」
「バカ言え。君子危うきに近寄らずだ」
オクルスをアルマージュが制する。
と、レインスが二人の肩を叩きながら言った。
「ねえ、ちょっと見て」
「いや、暗視鏡がないと何も見えねえって」
アルマージュは答えながら、暗闇に目を凝らした。
ぼんやりとではあるが、樹海の中に赤黒い点のような光が見え始めた。
次の瞬間、樹々の中から赤いレーザーが放たれた。
地上から上空にかけてうねるように放たれたソレは、“何か”の前方を一瞬照らし、夜空に消えていった。
「ララさん、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です、オクルスさん。望遠鏡そのままで見ていたら危なかったかもですけど、この暗視装置?のお陰で直視せずに済みました」
「何だアレ? 何をしたんだ?」
アルマージュが問いかける。
ララがアルマージュに暗視鏡を手渡しながら答えた。
「多分、鳥を落としたんだと思います」
「鳥?」
「はい。オクルスさんとレインスさんも、あの何かのちょうど真上に、鳥の群れができていたのを見ませんでしたか?」
「そう言えば、確かに見たわ。あんだけ樹々を騒がせながら進んでるんだから、そりゃあ鳥も怒るわよね」
「ええ。ソレを薙ぎ落とすコトが目的だったようです」
「みたいだな。レーザーを逃れた鳥たちが慌てて逃げてるよ」
アルマージュが暗視鏡を覗き込みながら話す。
「鳥たちが苦手なのかねえ」
「……あるいは食べるため、とか」
「ヒエッ」
思わぬララの想像に、アルマージュは肩をすくめてみせる。
オクルスがレインスに言った。
「しかしレインス、よく肉眼でレーザーの発射前動作に気づいたな」
「あら。女の方が赤い光がよく見えるから、男よりも夜景が綺麗に見えるって知らない?」
「そうか、今は女だったな」
「誰かさんのお陰でね」
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