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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(10)

接近遭遇(19)

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「ゴーレムが出現した時点でへ、部屋の設定が変化します。く、繰り返しが終わるんです」

「で、今の状態になると」

「そ、そうです。む、向こう側のゴーレムに触れた人物はへ、部屋の奥の闇へと落下してしまうみたいです」

「参ったな。じゃあどうすればいいんだ?」

「め、メイさーん!」

カップが遠くのメイに向けて、またも直接呼びかけた。
近くの、ゴーレムの方を通してメイが答える。

「コッチに話しかけてくれていいわよ、カップ。どうしたの?」

「め、メイさんが落ちようとしている方向、な、何か見えませんか?」

メイは自らから見て下の方向、闇の奥を凝視した。
微かに、何かきらめくものが見えた。

「あー、何かあるわね」

「今からめ、メイさんをソコまで下ろします」

「大丈夫なのか?」

「ゆ、ゆっくり下ろします……」

カップが杖を少し前後に振った。
メイの身体が、ゆっくりと下りていく。
ゴーレムの方もツヅキたちから遠ざかっていった。

「そのな、何かあるというのが恐らく、つ、次の部屋への扉です」

「どういう仕組みなんだ?」

「た、多分さっきの部屋もこの部屋も、そ、そして次の部屋も『官能審査』を模しているんだと思います」

「官能審査って、茶葉の品質チェックのコトか?」

「は、はい。さ、さっきの部屋は『外観』の、特に『香り』のテストの部屋だったんだと思います。
茶葉の香りはわ、私たちの魔術のイレギュラーさを象徴しています。現にあの部屋での異常への対応にはわ、私たちの中で最も香りが特徴的だったウィーさん、品種『ごこう』のウィーさんが一番適していました」

「確かに」

「そ、そしてこの部屋。わ、私の重力操作の魔術は品種『おくみどり』の『味』、特に『底味』と言いますか、そ、ソレが適しているんだと思います。も、もちろん全ての『おくみどり』に底味があるワケではないのですが……」

「あーでも確かに、カップの茶葉のその……底味? あの審査の時に何と言うかカップらしい芯の強さは感じたよ」

「あっ! で、でも! ソレは品種だけでどうにかなるものじゃあなくて、皆さん、特にツヅキさんの覆いのかけ方とかも良かったので……」

カップはそう言うと、少し下を見て唇を一文字に閉じた。

「そうなのか」

「は、はい」

「ちょっと、私を忘れないでほしいのだけれど。そろそろ例の場所に着きそうよ」

メイがゴーレムを通してそう伝えてきた。
本物のメイの方は遥か先に小さく、ゴーレムの方はちょうどツヅキのゴーレムの隣ぐらいまで“下がって”いた。
よっておおよそ、部屋一つ分さらにメイは先に行ったコトになる。
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