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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(10)

接近遭遇(14)

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「さて、困ったわね」

何度も“同じ廊下”を歩いた末、メイが言った。

「まあ、一方向に歩き続ければ解決するなんていう話なワケはなかったか、やっぱ」

ツヅキが答える。

「良い運動にはなったけどね。もう100回ぐらいはリピートしたかしら」

「まさか。20~30ぐらいだろ」

「に、28回ですね」

「ほら、流石はカップ。じゃあキリよく30で一回休憩するか?」

「そうしましょうか」

そして30。変化なし。
相変わらず真っ白の廊下だ。

「ふう」

床に直に座って、背中を壁に預けるツヅキ。
メイはその対面に少しズレて座り、ウィーがその隣にちょっと離れて座った。

「どうする? 次こそはっていう考えもなくはないが、かなり希望的観測だぜ」

「……そうね。何か対処方法を考えないと、体力を擦り減らすだけだわ」

「……にしても、随分と余裕だな」

「誰が? 私が?」

ツヅキはメイが心を読まずに会話しているコトに驚きつつも、続けた。

「ああ。そりゃあオレもカップももちろん心配していないワケじゃあないが、まだ焦ってもしょうがないコトだと割り切れる。つまり、ウィーの件だが」

メイは不思議そうな顔を一瞬してから、言った。

「当然、あなたたちよりウィーとは長い付き合いだから、焦る気持ちは多いわよ。けど、だからこそソレは逆ね」

「逆?」

「ウィーとは長い付き合い。でもだからこそわかる。まだまだしぶといわよ、彼女は」

ソレを聞いてツヅキとウィーは安心すると同時に、相当ウィーもコレまでメイに苦労させられたコトだろうと邪推した。
いや、彼女の性格なら案外そうでもなく切り抜けていたかも。

「……ところで私、この部屋の脱出について案がないワケでもないのだけれど」
「奇遇だね、オレもだ」

二人は話を切り替え、カップの方を見た。

「えっ、えっ」

「いやいや。カップ、ほらアレだよ。龍騎士団茶舗の団長の部屋」

「もっと早く言おうとも思っていたけれど……」

「いっ、いやっ。す、すみません……。団長のへ、部屋ってアレですよね。こ、この部屋みたいなく、繰り返しのイタズラのコトですよね」

「やっぱそりゃあカップも思ってたよな……」

「ってコトは、解決法はなし?」

龍騎士団茶舗の団長の部屋は、入って両サイドの扉が今いる廊下の入口と出口のように繋がっていた。
ソレを思いだし、二人は茶舗に所属しているカップなら、解決法を知っているのではないかと思ったのだった。

「カップも当然、すぐに気づいてたわよね。気づいてて何か探しているようだったから、今まで言いだせなかった、というと私の言い訳になるのだけれど……」

「い、いいえ! お気を遣わせてしまって、申し訳ありません……」

ほう、メイが気を遣うとは、と思うツヅキ。
そういや、さっきから言い方も下手にでている。

「め、メイさんが仰る通り、この繰り返しのま、魔術の核を探してはいました」

「ありそうか? てかソレが見つかれば何とかなるのか?」

「む、むしろ、ソレしか解除方法を知らないというのが、ほ、本音です……。じゅ、術の核さえ見つかれば、後はソレを細かく分析すれば……」

「その核って、オレでもわかる?」

「ぶ、物理的実態はあるとは思いますが、な、何かでソレ自体が隠されていれば魔術的心得がないと、む、難しいかと思います」

「じゃあカップとメイの出番だな」

「……えーと、あんまり言いたくはないのだけれど、私はムリなのよ、ソレ」

「なんで?」

「茶葉の官能審査の、内質審査(熱湯に浸出し、浸出液の香味を確認する審査)をしたでしょう? 私はわかりやすい、まあ誤解を恐れず言ってみれば表面的な味だったと思うけど、カップは底からの力強い味わいが特徴だったはず」

「ああ、そうだったかな」

「だから隠されたモノを見つける能力はカップのが上なのよ。ソレが何であれ、物理的実態があるのなら、例えば壊したりする自信はあるけどね」

「ほーん。まあよくわからんが納得」

「なんかそんなふうに納得されるのも、どっかムカつくわね」
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