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バクエット・ド・パクス(10)
他国に入っただけなのに(12)
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「どうしたんですか? カトリーヌさん」
「何がですか? ノワールさん♪」
「いや、後ろの二人と距離が離れてしまっているので、何か急いでらっしゃるのかな、と」
「ああ! 距離は“離している”のですよ♪」
「……何故です?」
「あの二人にしかわからないコトも、あるでしょうから」
カトリーヌがチラリと後方の二人を見る。
ミサトと目があった。
ミサトに微笑むカトリーヌ。
ミサトは少し間を置いて、ウインクで返した。
カトリーヌはソレを見て、受け取ったウインクをノワールにパスする。
「ね♪」
◇◇◇
「アイツも何か気づいてやがんな、相変わらず抜け目なく」
隣のブレーズに聞こえる声でそう述べるミサト。
「…………いないのは…ノワール……でしょうか?」
「そうだねえ、ノワールだけ仲間外れだねえ」
フッ、と笑うミサト。
「まあでも彼女のおかげって面もあるし、一番の功労者かもねえ」
◇◇◇
最初に気づいたのは、タクシー内での会話だ。
しかもソレは決定打でもあった。
『……運転手さんは、人間なんですか?』
ノワールの問いかけにより始まった会話と、その終わりの運転手の言葉。
『そうソレだ』
この終わりの言葉は、ミサトが話に入った結果、返された言葉だ。
以下のミサトの一言に対しての。
『チューリングテスト?』
この世界は“私の世界ではない”。ミサトはソレを今一度反芻した。
この世界と私の元いた世界は、ある程度類似した歴史的部分もある。
だが、人名は物品名になっているコトが殆どのハズだ。
そのような奇妙なズレが存在する。
そして、数学者アラン・チューリングもこの世界には人としては存在しないはずなのだ。
よって、彼が発案した機械の人間性判断テストである『チューリングテスト』を、一介のタクシー運転手が知っているハズがない。
もう一つ、ソレはあの運転手の去り際、最初の言葉。
『ソレじゃあ、いい旅をな。お嬢さん方も』
コレはただの“イチャモン”というヤツかもしれないが、『お嬢さん方“も”』というのが引っかかる。
コレは、話し手が“旅”のコトを知っている人物だからこそ言えることではないのか?
つまり、その帰結としてあの運転手の“中の人”は、このU.J.Iの“旅の一行”と関わりのある人物……
ミサトは以上の自らの推理を脳内で改めて明文化し、辿り終えた。
運転手の“中の人”も、私が以上のコトを推測していると推測しているだろう、とミサトは思った。
敢えて『チューリングテスト』なんていう小難しい単語を引きださせて、相手が異世界人か品定めするような人物だ。
思わず焦燥感が高まった。
じゃあ、ソコまで相手に先手を取られて、コッチはどうする?
だが、すぐにミサトは心を落ち着かせた。
何故なら今、自分たちが生き延びているコトで安全は一時的ではあるが保証されてもいるからだ。
その気になれば自分の“ガワ”ごと、タクシーを墜落させるなりできたのに、運転手はソレをしなかった。
ミサトはFBU本部を再度見上げた。
そしてこう思った。
相手は私たちをある意味で見逃したのだと思う。
だからこのコトは皆には、まだ今は言わないでおこう。
どうせ、そうだという確信もまだないのだから
遥か高くの階にいる誰かさんと、目が合ったような気がした。
「何がですか? ノワールさん♪」
「いや、後ろの二人と距離が離れてしまっているので、何か急いでらっしゃるのかな、と」
「ああ! 距離は“離している”のですよ♪」
「……何故です?」
「あの二人にしかわからないコトも、あるでしょうから」
カトリーヌがチラリと後方の二人を見る。
ミサトと目があった。
ミサトに微笑むカトリーヌ。
ミサトは少し間を置いて、ウインクで返した。
カトリーヌはソレを見て、受け取ったウインクをノワールにパスする。
「ね♪」
◇◇◇
「アイツも何か気づいてやがんな、相変わらず抜け目なく」
隣のブレーズに聞こえる声でそう述べるミサト。
「…………いないのは…ノワール……でしょうか?」
「そうだねえ、ノワールだけ仲間外れだねえ」
フッ、と笑うミサト。
「まあでも彼女のおかげって面もあるし、一番の功労者かもねえ」
◇◇◇
最初に気づいたのは、タクシー内での会話だ。
しかもソレは決定打でもあった。
『……運転手さんは、人間なんですか?』
ノワールの問いかけにより始まった会話と、その終わりの運転手の言葉。
『そうソレだ』
この終わりの言葉は、ミサトが話に入った結果、返された言葉だ。
以下のミサトの一言に対しての。
『チューリングテスト?』
この世界は“私の世界ではない”。ミサトはソレを今一度反芻した。
この世界と私の元いた世界は、ある程度類似した歴史的部分もある。
だが、人名は物品名になっているコトが殆どのハズだ。
そのような奇妙なズレが存在する。
そして、数学者アラン・チューリングもこの世界には人としては存在しないはずなのだ。
よって、彼が発案した機械の人間性判断テストである『チューリングテスト』を、一介のタクシー運転手が知っているハズがない。
もう一つ、ソレはあの運転手の去り際、最初の言葉。
『ソレじゃあ、いい旅をな。お嬢さん方も』
コレはただの“イチャモン”というヤツかもしれないが、『お嬢さん方“も”』というのが引っかかる。
コレは、話し手が“旅”のコトを知っている人物だからこそ言えることではないのか?
つまり、その帰結としてあの運転手の“中の人”は、このU.J.Iの“旅の一行”と関わりのある人物……
ミサトは以上の自らの推理を脳内で改めて明文化し、辿り終えた。
運転手の“中の人”も、私が以上のコトを推測していると推測しているだろう、とミサトは思った。
敢えて『チューリングテスト』なんていう小難しい単語を引きださせて、相手が異世界人か品定めするような人物だ。
思わず焦燥感が高まった。
じゃあ、ソコまで相手に先手を取られて、コッチはどうする?
だが、すぐにミサトは心を落ち着かせた。
何故なら今、自分たちが生き延びているコトで安全は一時的ではあるが保証されてもいるからだ。
その気になれば自分の“ガワ”ごと、タクシーを墜落させるなりできたのに、運転手はソレをしなかった。
ミサトはFBU本部を再度見上げた。
そしてこう思った。
相手は私たちをある意味で見逃したのだと思う。
だからこのコトは皆には、まだ今は言わないでおこう。
どうせ、そうだという確信もまだないのだから
遥か高くの階にいる誰かさんと、目が合ったような気がした。
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