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南山城国(10)
忌村(14)
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“食事”が終わると、肉塊は一体となって立ち上がった。
何本かの手足で、地面から少し浮いたのを“立ち上がる”と表現するならばの話だが。
「皆さん、上からもです!」
龍之介が叫ぶ。
先程、彼に襲いかかった触手と同じものが、今度は何本も屋根の上から姿を現し始めた。
一方、肉塊はドタドタと、しかし結構なスピードで皆に走ってきた。
遠藤がショットガンを打ち込むと、水たまりに無数の泥くれが叩きつけるような音がして、後方にゴロゴロと転がっていったが、またもすぐさま起き上がり向かってくる。
童仙は周囲の屋根上から降りてくる触手を素早く斬り落としたが、そのどれもが肉塊の方へと蛇のように這っていって融合した。
そして、屋根上からは更に次から次へと触手が現われる。
カオルはこんな状況ながら童仙の剣技を見て何となく、南山城国君主である月野ヶ瀬夢絃が茶葉の収穫時に僅かだけ見せてくれた、残像すら残さぬ剣技を思いだした。
尤も、童仙のソレには素人目にもまだ残像が残っていたが。
「キリがないね、童仙殿」
「ええ。カオル殿、ココは逃げましょう」
「そうですね。全面賛成」
「龍之介殿! 通りは走り抜けられますか?」
龍之介が通りを確認する。
幸い、通りには敵の姿は見えなかった。
「大丈夫です! 行けます!」
「では皆さん、通りを抜けましょう!」
童仙らが龍之介の方へ向かって走りだす。
殿は遠藤だ。
後方で、何かが家の壁に勢いよくぶつかる音が聞こえた。
例の肉塊が外にでて、勢い余って隣の家の壁に体当たりしたのだろう。
先頭の童仙は、前と横からにじみ寄ってくる触手を斬り落としながら進んだ。
真ん中をカオルが守られながら走る。
遠藤は音だけで、後ろを見ず肩越しに、背後から追跡してくる触手を撃ち払っていた。
龍之介まであと少し。彼は太刀を担いで、構えて待っている。
「そのまま走ってください」
横をすり抜けた三人に、ポツリと龍之介が述べた。
カオルが一瞬見た龍之介の瞳は、獲物を前にして据わっていた。
走っていた三人は触手の相手で無我夢中だったが、肉塊も確実に彼らを追ってきていた。
しかも走れば走るほどに加速していた。いつかは追いつかれる。
龍之介は三人を待ち構えながらソレを悟り、ココで仕留めるコトに決めたのだった。
カオルが振り返った時には、龍之介の目の前まで肉塊が迫っていた。
龍之介は横に転がり肉塊を避けると、地面に膝をついたまま太刀を横に差しだした。
肉塊がそのスピードもあって、自ら太刀を自分の身体に食い込ませる。
龍之介は充分にその刃が食い込んだコトを手応えで確認すると、力を込めて斬り抜けた。
肉塊の下半分はその無数の手足と共に崩れ倒れ、上半分は通りの向かいの家の壁まで吹っ飛んでベシャリと衝突した。
龍之介は太刀を地面に刺すと、地面を斬るようにして肉塊の下半分に向かって走りだした。
肉塊に達すると、太刀を斬り上げてソレをまたも両断した。
「龍之介殿、もう充分です!」
童仙が呼びかける。
龍之介はハッと我に返ると、皆を追いかけた。
何本かの手足で、地面から少し浮いたのを“立ち上がる”と表現するならばの話だが。
「皆さん、上からもです!」
龍之介が叫ぶ。
先程、彼に襲いかかった触手と同じものが、今度は何本も屋根の上から姿を現し始めた。
一方、肉塊はドタドタと、しかし結構なスピードで皆に走ってきた。
遠藤がショットガンを打ち込むと、水たまりに無数の泥くれが叩きつけるような音がして、後方にゴロゴロと転がっていったが、またもすぐさま起き上がり向かってくる。
童仙は周囲の屋根上から降りてくる触手を素早く斬り落としたが、そのどれもが肉塊の方へと蛇のように這っていって融合した。
そして、屋根上からは更に次から次へと触手が現われる。
カオルはこんな状況ながら童仙の剣技を見て何となく、南山城国君主である月野ヶ瀬夢絃が茶葉の収穫時に僅かだけ見せてくれた、残像すら残さぬ剣技を思いだした。
尤も、童仙のソレには素人目にもまだ残像が残っていたが。
「キリがないね、童仙殿」
「ええ。カオル殿、ココは逃げましょう」
「そうですね。全面賛成」
「龍之介殿! 通りは走り抜けられますか?」
龍之介が通りを確認する。
幸い、通りには敵の姿は見えなかった。
「大丈夫です! 行けます!」
「では皆さん、通りを抜けましょう!」
童仙らが龍之介の方へ向かって走りだす。
殿は遠藤だ。
後方で、何かが家の壁に勢いよくぶつかる音が聞こえた。
例の肉塊が外にでて、勢い余って隣の家の壁に体当たりしたのだろう。
先頭の童仙は、前と横からにじみ寄ってくる触手を斬り落としながら進んだ。
真ん中をカオルが守られながら走る。
遠藤は音だけで、後ろを見ず肩越しに、背後から追跡してくる触手を撃ち払っていた。
龍之介まであと少し。彼は太刀を担いで、構えて待っている。
「そのまま走ってください」
横をすり抜けた三人に、ポツリと龍之介が述べた。
カオルが一瞬見た龍之介の瞳は、獲物を前にして据わっていた。
走っていた三人は触手の相手で無我夢中だったが、肉塊も確実に彼らを追ってきていた。
しかも走れば走るほどに加速していた。いつかは追いつかれる。
龍之介は三人を待ち構えながらソレを悟り、ココで仕留めるコトに決めたのだった。
カオルが振り返った時には、龍之介の目の前まで肉塊が迫っていた。
龍之介は横に転がり肉塊を避けると、地面に膝をついたまま太刀を横に差しだした。
肉塊がそのスピードもあって、自ら太刀を自分の身体に食い込ませる。
龍之介は充分にその刃が食い込んだコトを手応えで確認すると、力を込めて斬り抜けた。
肉塊の下半分はその無数の手足と共に崩れ倒れ、上半分は通りの向かいの家の壁まで吹っ飛んでベシャリと衝突した。
龍之介は太刀を地面に刺すと、地面を斬るようにして肉塊の下半分に向かって走りだした。
肉塊に達すると、太刀を斬り上げてソレをまたも両断した。
「龍之介殿、もう充分です!」
童仙が呼びかける。
龍之介はハッと我に返ると、皆を追いかけた。
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