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南山城国(10)
忌村(13)
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「龍之介くん! 後ろ!」
カオルが言うのとほぼ同時に、触手が振りかぶった。
龍之介が右手を刀まで運ぶ、もしくは振り返るのをソレは待ってくれないだろう。
龍之介は、鞘に添えていた左手の親指で素早く脇差の鍔を弾いた。
上向きに弾かれ、勢いよく小刀が射出される。
顔の高さまで飛んだ、その刀面に映った敵影を把握すると、龍之介はのたうつソレの一撃を回避した。
太い触手が家の外壁を破壊する。
そのまま振り向きながら、遠心力も上乗せした太刀の一撃を、龍之介はソレへと加えた。
気味良く触手が切断される。
切り離された触手の先端側は、自らが破壊した壁から、家の中へと吹っ飛んでいった。
根本側は屋根の上へ姿を消した。
と、カオルの前の壁がより勢い激しく叩かれ始めた。
流石に、壁も壁であるコトを維持できず崩れていく。
童仙がカオルの前に立って敵を斬りつける体勢に入ったが、その前に遠藤がショットガンを大きくなりつつある壁の隙間に対して向けた。
瞬間、閃光が煌めいたかと思うと、無数の弾丸と壁の残骸を全身に浴びて身体をのけ反らせる敵の姿が見えた。
普通の人間なら大きく吹き飛ばされ、身体に大穴が空いていたろうが、“奴ら”であるソレは身体に穴こそ空きはしたものの、即座に塞がりつつあった。
体勢ももう立て直しそうだ。
遠藤が二発めを、童仙も改めて今度こそ刀を抜こうとした時、体勢を完全に立て直し一歩を踏み出した敵が何かに引っかかったように歩みを止めた。
敵自身も思いもよらなかった異常に、自らの胴を確認する。
カオルや童仙、遠藤もサーモグラフィ越しに確認した。
ソレの胴に、温度表示としては青く見える“帯”が巻きついている。
その色は、上空で今も静止している“蝶”、そして先ほど龍之介の背後に現れた触手と同様だった。
“帯”に巻きつかれた敵が、身体をくの字に強制的に曲げられ、後方に引っ張られる。
ソレが引っ張られ連れて行かれる先には、のたうつ青い複数の“帯”と、二人分の恐らく“奴ら”を構成していたであろうパーツの寄せ集めのような塊が見えた。
「私の斬った触手です!」
龍之介が話す。
「私が斬った先端が、中にいた二匹を食い始めたんです!」
引っ張られて行った一匹も“肉塊”に直撃すると、触手たちに覆いつくされ始めた。
触手はその表面で奴らを食っているのか、覆いかぶさっては剥がしちぎるように、新しく肉塊に加わった一匹の皮膚と肉をえぐったり、あるいは逆にそうして身体に開いた穴から、体内に侵入していた。
サーモグラフィ越しでもソコまで判別できるのだ。
直接に見ることができたなら、より悍ましい光景だったに違いない。
カオルが言うのとほぼ同時に、触手が振りかぶった。
龍之介が右手を刀まで運ぶ、もしくは振り返るのをソレは待ってくれないだろう。
龍之介は、鞘に添えていた左手の親指で素早く脇差の鍔を弾いた。
上向きに弾かれ、勢いよく小刀が射出される。
顔の高さまで飛んだ、その刀面に映った敵影を把握すると、龍之介はのたうつソレの一撃を回避した。
太い触手が家の外壁を破壊する。
そのまま振り向きながら、遠心力も上乗せした太刀の一撃を、龍之介はソレへと加えた。
気味良く触手が切断される。
切り離された触手の先端側は、自らが破壊した壁から、家の中へと吹っ飛んでいった。
根本側は屋根の上へ姿を消した。
と、カオルの前の壁がより勢い激しく叩かれ始めた。
流石に、壁も壁であるコトを維持できず崩れていく。
童仙がカオルの前に立って敵を斬りつける体勢に入ったが、その前に遠藤がショットガンを大きくなりつつある壁の隙間に対して向けた。
瞬間、閃光が煌めいたかと思うと、無数の弾丸と壁の残骸を全身に浴びて身体をのけ反らせる敵の姿が見えた。
普通の人間なら大きく吹き飛ばされ、身体に大穴が空いていたろうが、“奴ら”であるソレは身体に穴こそ空きはしたものの、即座に塞がりつつあった。
体勢ももう立て直しそうだ。
遠藤が二発めを、童仙も改めて今度こそ刀を抜こうとした時、体勢を完全に立て直し一歩を踏み出した敵が何かに引っかかったように歩みを止めた。
敵自身も思いもよらなかった異常に、自らの胴を確認する。
カオルや童仙、遠藤もサーモグラフィ越しに確認した。
ソレの胴に、温度表示としては青く見える“帯”が巻きついている。
その色は、上空で今も静止している“蝶”、そして先ほど龍之介の背後に現れた触手と同様だった。
“帯”に巻きつかれた敵が、身体をくの字に強制的に曲げられ、後方に引っ張られる。
ソレが引っ張られ連れて行かれる先には、のたうつ青い複数の“帯”と、二人分の恐らく“奴ら”を構成していたであろうパーツの寄せ集めのような塊が見えた。
「私の斬った触手です!」
龍之介が話す。
「私が斬った先端が、中にいた二匹を食い始めたんです!」
引っ張られて行った一匹も“肉塊”に直撃すると、触手たちに覆いつくされ始めた。
触手はその表面で奴らを食っているのか、覆いかぶさっては剥がしちぎるように、新しく肉塊に加わった一匹の皮膚と肉をえぐったり、あるいは逆にそうして身体に開いた穴から、体内に侵入していた。
サーモグラフィ越しでもソコまで判別できるのだ。
直接に見ることができたなら、より悍ましい光景だったに違いない。
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