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テラ・ドス・ヴェルメロス(10)

地図にない王国(7)

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「さて、と」

オクルスが気も新たに、砂のミニチュアに近寄る。

「ちょっと巻き戻してもらえない?」

「ええ」

男が砂を裏手で薙ぐような動作をする。
ミニチュアが崩れ、小さな砂嵐に包まれたかと思うと、最前の状態が再生された。
そして、またも森の端から巨大な何かが、樹木の間を蠢き進んできた。

「……」

「ソレが現れたのは5日前です。我らの領域を警戒している者からの報告を受け、現場に駆けつけましたが既に姿を消していました。
その時以来、散発的な報告はあったものの、コレほどの巨体と推定される物体にも関わらず、我々は姿を掴むコトができずにいました。
そして1日前、偶然にも高所にて監視していた者がこの砂像の元となる光景を確認しました。
……その後に皆さんが現れるのも」

「なるほどね。で、オレたちはココにいるってワケだ」

アルマージュも砂像に近づき言う。
オクルスは像から目を離さず、男に聞いた。

「で、オレたちが敵でないってわかったからには、お誘いいただいた者としてはもう一つ、先にお願いしたいコトがあるのだけれど」

「もちろんですね。では、改めて」

全員が男の方を向く。

「私はハイアーマウント・メイクス・デュークエイセス、そして此処はテイル・オブ・ティーグラウンズです」


◇◇◇


アルマージュが耐えきれず吹きだした。
続いて、レインスも笑いだす。
男、ハイアーマウントは少し居心地悪げに、頭を掻いた。

「いや、失礼。私としては笑うつもりはなかったんだけど、コイツ(アルマージュ)が先に笑うからさ」

「何だよ、オレのせいかよ」

「いえ、無理もありません。“キョート”内ではどちらかと言えば南山城国風の出で立ちながら、名乗りはU.J.Iですからね。むしろ笑っていただいた方が、コチラとしても気が楽です」

ララもそこまで聞いて少し微笑んだが、オクルスは違った。
目を見開いて、ハイアーマウントを凝視している。
ララが問いかける。

「オクルスさん?」

「……マジで言ってるんですか? マジでハイアーマウント? その意味の通りに?」

「ええ」

「おいおい、オクルスどうした? 確かにお前のネーミングセンスと相通じ合う点はあるが、それ程に感動するコトでもねーだろ」

アルマージュもオクルスにそう問いかけたが、オクルスは依然ハイアーマウントから目を逸らさなかった。

「ハイアーマウント・メイクス・デュークエイセスだぞ! 妙な場所に迷い込んだと思ったが、そういうコトか!」

「どういうコトだよ」

「『高い山の男』さ。この人がそうなら、この寺院は『コウサン』だ」

「はぁ? 降参?」

「……いやマジか?」

レインスも気づいたのか驚きのあまり、口を覆いながらポツリと呟く。

「待て待てお前ら、オレとララさんを置いて勝手に納得するな」

「勘の鈍いヤツだな。この国は地図にない王国、『トガノオ』だってコト!」
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