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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(9)

接近遭遇(13)

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一行は白い廊下を進んでいた。ウィーがいない、一行は。

先の円柱状の部屋、その高所から白木の扉を抜けた先は、暗い小部屋だった。
その小部屋には、入ってきた白木の扉の対面に、現代風の扉があった。
尤も、“現代風の”という評価はツヅキだけが感じたものであったが。

その扉も抜けると、次は継ぎ目一つない、真っ白の廊下が姿を現した。
25mぐらい先に、入ってきた扉と瓜二つの扉があるだけの廊下だ。

一行は罠がないかを警戒しつつ、その廊下を進んでいた。
ウィーだけを前の部屋に残して。


◇◇◇


「じゃあ、アレは何処までも私たちを追ってくるってワケ?」

メイがウィーに言う。
アレとは、今にも目の前の白木の扉を破ろうとしている“物体”のコトだ。

「ええ。ですので、ココで食い止めなければ」

「食い止めるって」

メイが言い終わる前に、ウィーが扉へ進む。
あと一歩で扉に触れるというトコロで、ソレは破壊された。

尤も、破壊したのはウィーの方だった。
扉の破片が、暗い小部屋から外の円柱状空間に向かって弾き飛ばされる。

ウィーは杖を構えたまま、外の空間に一歩足を踏みだした。

「ウィー!」

メイが叫ぶ。
ウィーに近づくが、ちょうど白木の扉があった場所に構成された透明な壁によって阻まれた。

「お嬢さま、すみません。私はココまでのようです」

「はぁ!?」

「今、私の足元・頭上・前・そして左右にそれぞれ一枚の壁を“二枚分の”強度で出しています。そしてお嬢さま、貴女と私を阻む壁は残った魔力全てを使った壁です。コレらを維持し続けるためには、私はココに残らないと」

「確かにっ、そうだけど……」

「先に進んでください。万が一、私が打ち負けてもこの背後の壁だけは、最後の魔力でもって補強します。時間は稼げるでしょう」

メイはその言葉を聞いて俯いたままだったが、すぐに踵を返した。

「おいメイ」

「聞いたでしょ。先に進みます」

カップとツヅキがウィーを見る。

「皆さんも、どうぞ進んでください。大丈夫、この程度は朝飯前ですぅ~」

ウィーがいつものように言ってのけてみせる。

「ウィー! 必ず助けに戻る! だからソレまでココ頼む!」

「ええ! か、必ずまた戻ってきます!」

ウィーは何も言わなかった。
彼らはウィーを置いて、先に進んだ。


◇◇◇


一行は廊下の端に辿り着いた。
ココまで、廊下には罠らしい罠は一つもなかった。
皆はその間、何も喋らなかった。

メイが出口である扉を開ける。
もちろん、杖で警戒しながらだ。

カップとツヅキは背後を警戒しながらだったので、扉の向こうを最初に見たのはメイだった。
メイが沈黙を破る最初の一言を述べた。

「なるほど、コレが罠ね。そしてこの廊下自体が“次の試練の部屋”だわ」

カップとツヅキは、メイが見ている扉の先を見ずとも、その意味がわかった。
自分たちが警戒していた背後、その遥か先、一行が最前に入ってきた扉から、メイが顔をだしていたからだ。

廊下は端と端が繋がってループしていた。
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