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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(9)

接近遭遇(11)

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「オレには何も見えないが」

「ピントが合わせにくいわ。部屋の中央、透明の四角いヤツよ」

ツヅキが目を凝らす。中央の空間だけを見ようとして、一瞬、めまいがするような錯覚に襲われる。
見えた。

部屋の中央に、細い透明の棒で形作ったような、四角い箱が浮かんでいた。
ゆっくりと回転している。

「み、見えました」

「何ですかねぇ、アレ」

カップとウィーも首を傾げる。
メイが杖を取りだした。

「気味が悪いわね。吹き飛ばそうかしら」

「イヤ、触らぬ神に祟りなしとも言うぜ」

「じゃあ、無視?」

「いや、注視して進もう」

一行が登るのを再開する。横目で件の物体を確認しながらだが、特に変化はない。

件の物体は、一行がいる高さからは少し上にあった。
もう数段で高さが並ぶ。

そして、並んだ。

何も変化はない。
そのまま、足取りを進め続ける。

だが、ソレに気づいたのはカップだった。

「み、皆さん。あ、アレ、な、何か変じゃあありませんか?」

皆が足を止め、物体へ視線を集中させる。

「……さっきと変わらなくないか?」

「か、回転が早くなってませんか?」

……確かに、先程はその回転する四角い物体の、次の面を見るのに3秒程度がかかっていた。
だが今は、1~2秒ぐらいのスピードだ。

「何? 誰か、触らぬ神に触ったの?」

メイが再度、杖を取りだす。

「まあ回転が早くなっただけ、と言えばソレだけだが……」

「何か変な物体だわ。いつでも吹き飛ばすつもりで進みましょう」

メイがウィーの用意した、次の“階段”へ足をかけた。
その時だった。

「お嬢さま」

「どうしたの?」

「少しお待ちを」

ウィーがらしからぬ声音で告げる。

例の物体が大きくなってきているように、皆、最初は錯覚した。
すぐに、正しい空間把握が皆に舞い戻る。
物体が、近づいてきていた。

「何かマズいわね……! 私が」

「いえ、まずは様子を」

ウィーが杖を壁に向ける。
壁のツタを魔力で引きはがすと、空中を迫ってくる物体にぶつけた。

ツタは物体の中に“沈んだ”かと思うと、次の瞬間には内部でバラバラに破砕された。

「やっぱり“敵”のようね」

間髪入れず、メイが攻撃する。
杖の先端の空間が一瞬歪んだかと思うと、目には見えないが、“力”が放たれたコトがツヅキにも感じられた。

物体に“力”が衝突すると、鈍い光が発せられた。
しかし次の瞬間には物体は“力”をすり抜け、内部の粉々になったツタだけが、“力”とともに向こう側の壁にブチ当たった。

向こう側の壁が大きく、円形に凹んでひび割れる。
砕け散った石クズが階下に力なく落下していった。

物体の方は依然、無傷でコチラに近づいている。
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