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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(9)
接近遭遇(8)
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一行は壁を歩き、そのまま天井も歩いて、今や床面となった“入口”に到達した。
「えーっと。確か壁から三歩で、向かい合って右から六つめ、下から八つめの石を、と」
メイはそう言って、どれも同じに見える、天井を構成する石々の中の一つをタッチした。
その石は青白く光ったかと思うと、天井の中へ沈んでいった。
「……」
「『コレで終わりか?』じゃあないわよ。離れて」
メイはツヅキの心を読むと、そう言った。
と、石が沈み込んだ部分から波紋が放たれるように、周りの石も回転しながら沈み込み始めた。
そして数秒後には、足元に穴が発生した。穴からは白い光が放たれている。
「じゃあ、先に行くわね」
そう言うと、メイは穴のそばに屈み込み、上体から穴に入って消えた。
「大丈夫! ちょっと一瞬酔うかもしれないけど、順番に来て」
穴の向こうからの声に、残された三人は顔を見合わせる。
『ちょっと一瞬酔う』に、全員の疑問符は一致していた。
「じゃあ、オレが行ってみるよ」
「わっかりました。次にじゃあカップさんで」
ツヅキが穴を覗き込む。
水面に反射した顔のように、向こうからメイが覗き込んでいた。
「うわ」
「こういうコトなのよ。まあ、来ればわかるわ」
「どういうコトだよ」
ウィーとカップも穴を覗き込む。
ウィーはにこやかにメイに手を振り振り、カップは興味津々に穴を覗き込んでいた。
ツヅキが穴に手を伸ばし、向こう側へ身体を入れる。
上半身が穴を通過した時、ツヅキを異変が襲った。
いや、ツヅキは異変をようやく上半身全体で感知した。
「何だよコレ!」
ツヅキの身体は穴に途中まで入ったかと思うと、下半身はコチラにそのまま、上半身は腕は向こう側にほぼ入ったものの、そのほとんどが向こうとコチラの“境界”で静止してしまった。
腕をもがかせ、向こうの空間を泳ぐかの如く掻くツヅキ。
「そんなコトしてもムダよ」
メイはそう言うと、ツヅキの腕を掴んで引っ張った。
「うわわっ」
「ほら、地面を掴んで」
ツヅキは引っ張られていない方の腕で、草むした地面を捉えた。
と、“向こう側”に置いてきた下半身が間髪入れず“向こう側”の床を離れる。
直後、勢いがついてツヅキは“コチラ側”、メイのいる方に移るコトができた。
「おっと。何だ何だ一体」
「あー何ていうのかしら、だから」
メイが自分の左手を手のひらを下にして、地面に水平に掲げた。
そして右手の人差し指と中指を手のひらに当てる。
「さっきまで私たちはこう立ってたでしょ。で」
トコトコと右手の人差し指と中指を歩かせ、左手の指先まで到達すると、ぐるりと手の甲側に右手の二指を歩かせる。
「こんな風に、コッチ側に来たワケよ」
「じゃあ今のは……」
ツヅキがメイを真似る。
同じように左手の手のひら側を右手で歩き、手の甲側に移動する時に止める。
「ココで、重力が上と下で拮抗していた?」
「ご明察。私はわかってたから勢いよく穴に入って、そうはならなかったけど」
「じゃあそう言えよ……」
「面白かったでしょ?」
「前に、最初に入った時に、オレみたいにならなかったのか?」
「その時は恐る恐る手だけ入れて、状態を把握してから、向こう側の地面をちゃんと掴んだまま入ったかしらね」
「納得。まあ、キミが迷いなく入ったのを目の前で見ていなかったらオレもそうして慎重にしていたわね」
「そうかしら」
「えーっと。確か壁から三歩で、向かい合って右から六つめ、下から八つめの石を、と」
メイはそう言って、どれも同じに見える、天井を構成する石々の中の一つをタッチした。
その石は青白く光ったかと思うと、天井の中へ沈んでいった。
「……」
「『コレで終わりか?』じゃあないわよ。離れて」
メイはツヅキの心を読むと、そう言った。
と、石が沈み込んだ部分から波紋が放たれるように、周りの石も回転しながら沈み込み始めた。
そして数秒後には、足元に穴が発生した。穴からは白い光が放たれている。
「じゃあ、先に行くわね」
そう言うと、メイは穴のそばに屈み込み、上体から穴に入って消えた。
「大丈夫! ちょっと一瞬酔うかもしれないけど、順番に来て」
穴の向こうからの声に、残された三人は顔を見合わせる。
『ちょっと一瞬酔う』に、全員の疑問符は一致していた。
「じゃあ、オレが行ってみるよ」
「わっかりました。次にじゃあカップさんで」
ツヅキが穴を覗き込む。
水面に反射した顔のように、向こうからメイが覗き込んでいた。
「うわ」
「こういうコトなのよ。まあ、来ればわかるわ」
「どういうコトだよ」
ウィーとカップも穴を覗き込む。
ウィーはにこやかにメイに手を振り振り、カップは興味津々に穴を覗き込んでいた。
ツヅキが穴に手を伸ばし、向こう側へ身体を入れる。
上半身が穴を通過した時、ツヅキを異変が襲った。
いや、ツヅキは異変をようやく上半身全体で感知した。
「何だよコレ!」
ツヅキの身体は穴に途中まで入ったかと思うと、下半身はコチラにそのまま、上半身は腕は向こう側にほぼ入ったものの、そのほとんどが向こうとコチラの“境界”で静止してしまった。
腕をもがかせ、向こうの空間を泳ぐかの如く掻くツヅキ。
「そんなコトしてもムダよ」
メイはそう言うと、ツヅキの腕を掴んで引っ張った。
「うわわっ」
「ほら、地面を掴んで」
ツヅキは引っ張られていない方の腕で、草むした地面を捉えた。
と、“向こう側”に置いてきた下半身が間髪入れず“向こう側”の床を離れる。
直後、勢いがついてツヅキは“コチラ側”、メイのいる方に移るコトができた。
「おっと。何だ何だ一体」
「あー何ていうのかしら、だから」
メイが自分の左手を手のひらを下にして、地面に水平に掲げた。
そして右手の人差し指と中指を手のひらに当てる。
「さっきまで私たちはこう立ってたでしょ。で」
トコトコと右手の人差し指と中指を歩かせ、左手の指先まで到達すると、ぐるりと手の甲側に右手の二指を歩かせる。
「こんな風に、コッチ側に来たワケよ」
「じゃあ今のは……」
ツヅキがメイを真似る。
同じように左手の手のひら側を右手で歩き、手の甲側に移動する時に止める。
「ココで、重力が上と下で拮抗していた?」
「ご明察。私はわかってたから勢いよく穴に入って、そうはならなかったけど」
「じゃあそう言えよ……」
「面白かったでしょ?」
「前に、最初に入った時に、オレみたいにならなかったのか?」
「その時は恐る恐る手だけ入れて、状態を把握してから、向こう側の地面をちゃんと掴んだまま入ったかしらね」
「納得。まあ、キミが迷いなく入ったのを目の前で見ていなかったらオレもそうして慎重にしていたわね」
「そうかしら」
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