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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(9)
接近遭遇(7)
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一行は目的とする場所まで辿り着いた、が。
その場所は行き止まりだった。
「着いたわね。ウィー、私たちの後ろの空間を歪めて、光の漏れださないカーテンにしてくれるかしら。ソレができたら、カップ、照らしてくれる?」
「わっかりましたぁー」
「は、はい。りょ、了解です」
ウィーは杖を取りだし、空間に四角を描くと、その四角に対しふっと息を吹きかけた。
廊下の吹き抜けからの月明かりも今は遠く、周囲は真闇に囚われていたが、ツヅキはウィーのそばにいたため、ソレの一部始終が見えた。
ウィーが四角を描いた時、ソコにはヒラヒラと淡く光る、空間の歪みらしきものが出現した。
その歪みにウィーが息を吹きかけると、歪みは大きく広がりながらウィーからゆっくりと離れ、最後には自分たちが歩いてきた廊下を塞ぐような形で、ピッタリと収まった。
ソレを見届け、カップは自らの杖に光を点した。
「ウィー、コレで光が防げてるのか?」
「え。疑ってます?」
「いや。まあ」
ウィーは顔をわざとらしく歪めると、ツヅキの腕を引っ張った。
二人が空間の歪みから外にでる。
「どうですかぁ~」
歪みから外に一歩でると、確かに、中の光景は相変わらず真闇に囚われていた。
ツヅキは何度か、歪みの幕に対し顔だけを行ったり来たりさせる。
「うん。スゴい」
「でしょー」
二人は中に戻った。
「ソレで、『着いたわね』ってコトだったが、ドアの一つもないぞ? 壁の中に飛び込むのか?」
「いいえ。天井よ」
「天井?」
ツヅキが上を見る。何の変哲もない、床や壁と同様の石造りの天井だ。
「天井に飛び込むの」
「どうやって?」
「壁をつたってよ」
ツヅキは目の前の壁に触れてみる。
「流石に、この壁をクライミングは無理があるぜ。隙間に指も入らねーし」
「こうするのよ」
メイは壁に近づくと、右足を上げた。
そのまま、右足の底を壁につける。
と、次の瞬間にはメイは壁に立っていた。
「どう? この壁には重力魔術がかかってて、手をついたり背を預けても何ともないけど、足裏をつけるとほら、ご覧の通り」
「……スゴいな。てかよくそんなトコ発見したな」
「離すと長くなるのよ」
「えぇ~、聞きたいですぅ~」
ウィーがねだる。ソレを聞いて一旦、メイは“元の床”に戻った。
「在学中、『鏡』のある部屋は隠されているって聞いたから、ありとあらゆる壁を確かめたわ。特に、こんな行き止まりの壁はね。とは言え、行き止まりの壁自体はこの、元は城である学校にはたくさんあったから、最初からココだとはわからなかったけど」
「地図があったんじゃあないのか? ほら、団長んトコで見てた」
「あの地図は、鏡のある部屋に繋がってる部屋を示した地図よ。ややこしいけど、鏡のある部屋に繋がっている部屋もまた、隠されているの。
話を戻すと、部屋はなかなか見つからなかった。ソコで、考えを三次元的にしたのよ。部屋が隠されているんじゃあなく、部屋のある“階”ごと、隠されているってね」
「ソレで?」
「……あー、ソコからは偶然というか、運も実力のウチというか」
「は?」
「……ソレでも見つからなかったから、イラついてこの壁を蹴ったのよ」
「なるほどね」
その場所は行き止まりだった。
「着いたわね。ウィー、私たちの後ろの空間を歪めて、光の漏れださないカーテンにしてくれるかしら。ソレができたら、カップ、照らしてくれる?」
「わっかりましたぁー」
「は、はい。りょ、了解です」
ウィーは杖を取りだし、空間に四角を描くと、その四角に対しふっと息を吹きかけた。
廊下の吹き抜けからの月明かりも今は遠く、周囲は真闇に囚われていたが、ツヅキはウィーのそばにいたため、ソレの一部始終が見えた。
ウィーが四角を描いた時、ソコにはヒラヒラと淡く光る、空間の歪みらしきものが出現した。
その歪みにウィーが息を吹きかけると、歪みは大きく広がりながらウィーからゆっくりと離れ、最後には自分たちが歩いてきた廊下を塞ぐような形で、ピッタリと収まった。
ソレを見届け、カップは自らの杖に光を点した。
「ウィー、コレで光が防げてるのか?」
「え。疑ってます?」
「いや。まあ」
ウィーは顔をわざとらしく歪めると、ツヅキの腕を引っ張った。
二人が空間の歪みから外にでる。
「どうですかぁ~」
歪みから外に一歩でると、確かに、中の光景は相変わらず真闇に囚われていた。
ツヅキは何度か、歪みの幕に対し顔だけを行ったり来たりさせる。
「うん。スゴい」
「でしょー」
二人は中に戻った。
「ソレで、『着いたわね』ってコトだったが、ドアの一つもないぞ? 壁の中に飛び込むのか?」
「いいえ。天井よ」
「天井?」
ツヅキが上を見る。何の変哲もない、床や壁と同様の石造りの天井だ。
「天井に飛び込むの」
「どうやって?」
「壁をつたってよ」
ツヅキは目の前の壁に触れてみる。
「流石に、この壁をクライミングは無理があるぜ。隙間に指も入らねーし」
「こうするのよ」
メイは壁に近づくと、右足を上げた。
そのまま、右足の底を壁につける。
と、次の瞬間にはメイは壁に立っていた。
「どう? この壁には重力魔術がかかってて、手をついたり背を預けても何ともないけど、足裏をつけるとほら、ご覧の通り」
「……スゴいな。てかよくそんなトコ発見したな」
「離すと長くなるのよ」
「えぇ~、聞きたいですぅ~」
ウィーがねだる。ソレを聞いて一旦、メイは“元の床”に戻った。
「在学中、『鏡』のある部屋は隠されているって聞いたから、ありとあらゆる壁を確かめたわ。特に、こんな行き止まりの壁はね。とは言え、行き止まりの壁自体はこの、元は城である学校にはたくさんあったから、最初からココだとはわからなかったけど」
「地図があったんじゃあないのか? ほら、団長んトコで見てた」
「あの地図は、鏡のある部屋に繋がってる部屋を示した地図よ。ややこしいけど、鏡のある部屋に繋がっている部屋もまた、隠されているの。
話を戻すと、部屋はなかなか見つからなかった。ソコで、考えを三次元的にしたのよ。部屋が隠されているんじゃあなく、部屋のある“階”ごと、隠されているってね」
「ソレで?」
「……あー、ソコからは偶然というか、運も実力のウチというか」
「は?」
「……ソレでも見つからなかったから、イラついてこの壁を蹴ったのよ」
「なるほどね」
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