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バクエット・ド・パクス(9)
他国に入っただけなのに(5)
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「と言うと?」
「私は最初から『はかせ』の作為に気づいていたんですよ、ミサトさん♪」
「だからなんだよ」
「その段階から、この商館をでていく方を見張っていました。ゼロです♪」
ミサトがハッと気づき、周りを見渡す。
ノワールも遅れて気づくと、悔しい顔をして言った。
「入る時にぶつかりかけた、あの二人……ですね」
「そうです♪ ノワールさん」
「まあ近くにはもう……いるワケないか。どうする? 追ってみる? 手分けして、とか」
「いいえ、先に進みましょう。どうせ行き先は同じ、ですし」
◇◇◇
一行はデル・ゾーネの北検問まで残り数kmという距離まで近づいた。
デル・ゾーネに入る時に通った東検問は中心市街までの距離が近かったが、北検問はかなり市街から離れている。
そこで一行は馬車を利用するコトにした。もちろん、ゆったりとくつろげる馬車内にスイーツセットとお茶をたっぷりと積み込んで、だ。
そのセットを食べ終わる頃、ソレは同時に夕暮れが始まった頃だったが、一行は現在の地点まで到達した。
北検問間際で最後の街、デル・ゾーネ温泉街だ。
「あー疲れた疲れた」
いち早く外に出たミサトが伸びをしながら言う。
ノワールが続いて外にでた。
「と言っても我々は馬車に揺られながら飲み食いをしていただけですが……確かになんだか気疲れしましたね」
「………知らない……だから」
「そうですね、確かに右も左も知らない他国ですからね」
ブレーズ、そして最後にカトリーヌがでてくる。
その頃には、ミサトが馬車の御者に礼を済ませていた。
「だから皆さん! デル・ゾーネ最後の目的地をココにしたんですよ♪」
デル・ゾーネ温泉街は、赤黄金色の煌びやかな明かりに街路を照らされていた。
南山城国風の和装に身を包んだ観光客が、賑やかに歩いている。
「早速、私たちも着替えましょうか♪」
そう言うと一行は手近にある、和装を借りれる店に入った。
◇◇◇
一行は衣装を一新し、店からでた。
カトリーヌは一言で言って“艶やか”な着こなしだ。
着物が豊満な身体に密着し、そのボディラインを浮かび上がらせていた。長い髪の毛はくくってまとめられている。
ミサトはソレを見て「裸よりもエロいんじゃあねえかこの野郎」と思っていた。
もうちょいケバめに仕立てれば、最高級の花魁に変貌するだろう。
一方、ノワールとブレーズはどちらも、上半身は普通だが下半身は膝丈までの着物をまとっていた。
とは言え、その感じは全く違う。
ノワールは、如何にもボーイッシュな女の子といった感じだった。
しかし男の子然とはしておらず、何と言うか、普段は男として接している相手が夏祭りでふと女っぽさを垣間見せた、というような色気をまとっていた。
「その気はない、その気はないが……」と思いながら、ミサトは眼福を味わっていた。
ブレーズの方はと言うと、その身長の低さも相まって、如何にも祭りを楽しみにきた小さな女の子、という感じだ。
しかし、普段の大人しさが薄れ、快活な印象を与える着こなしだった。綺麗で少し大きめなかんざしもアクセントとして輝いている。
ミサトとしては何となく“可愛い姪っ子”みたいな見た目だった。
かく言うミサトは、実は一番全員を驚かせていた。
無理もない、先ほどまでのガンマニアっぽいホットパンツ&黒タンクトップとは違い、完全に落ち着いた着物令嬢と化したのだから。
カトリーヌのように主張はしない、しかし白い肌とうなじの印象的な令嬢だ。
一行は、夜になって涼しくなった優しい風を感じながら、温泉街の中心に向かって歩きだした。
「私は最初から『はかせ』の作為に気づいていたんですよ、ミサトさん♪」
「だからなんだよ」
「その段階から、この商館をでていく方を見張っていました。ゼロです♪」
ミサトがハッと気づき、周りを見渡す。
ノワールも遅れて気づくと、悔しい顔をして言った。
「入る時にぶつかりかけた、あの二人……ですね」
「そうです♪ ノワールさん」
「まあ近くにはもう……いるワケないか。どうする? 追ってみる? 手分けして、とか」
「いいえ、先に進みましょう。どうせ行き先は同じ、ですし」
◇◇◇
一行はデル・ゾーネの北検問まで残り数kmという距離まで近づいた。
デル・ゾーネに入る時に通った東検問は中心市街までの距離が近かったが、北検問はかなり市街から離れている。
そこで一行は馬車を利用するコトにした。もちろん、ゆったりとくつろげる馬車内にスイーツセットとお茶をたっぷりと積み込んで、だ。
そのセットを食べ終わる頃、ソレは同時に夕暮れが始まった頃だったが、一行は現在の地点まで到達した。
北検問間際で最後の街、デル・ゾーネ温泉街だ。
「あー疲れた疲れた」
いち早く外に出たミサトが伸びをしながら言う。
ノワールが続いて外にでた。
「と言っても我々は馬車に揺られながら飲み食いをしていただけですが……確かになんだか気疲れしましたね」
「………知らない……だから」
「そうですね、確かに右も左も知らない他国ですからね」
ブレーズ、そして最後にカトリーヌがでてくる。
その頃には、ミサトが馬車の御者に礼を済ませていた。
「だから皆さん! デル・ゾーネ最後の目的地をココにしたんですよ♪」
デル・ゾーネ温泉街は、赤黄金色の煌びやかな明かりに街路を照らされていた。
南山城国風の和装に身を包んだ観光客が、賑やかに歩いている。
「早速、私たちも着替えましょうか♪」
そう言うと一行は手近にある、和装を借りれる店に入った。
◇◇◇
一行は衣装を一新し、店からでた。
カトリーヌは一言で言って“艶やか”な着こなしだ。
着物が豊満な身体に密着し、そのボディラインを浮かび上がらせていた。長い髪の毛はくくってまとめられている。
ミサトはソレを見て「裸よりもエロいんじゃあねえかこの野郎」と思っていた。
もうちょいケバめに仕立てれば、最高級の花魁に変貌するだろう。
一方、ノワールとブレーズはどちらも、上半身は普通だが下半身は膝丈までの着物をまとっていた。
とは言え、その感じは全く違う。
ノワールは、如何にもボーイッシュな女の子といった感じだった。
しかし男の子然とはしておらず、何と言うか、普段は男として接している相手が夏祭りでふと女っぽさを垣間見せた、というような色気をまとっていた。
「その気はない、その気はないが……」と思いながら、ミサトは眼福を味わっていた。
ブレーズの方はと言うと、その身長の低さも相まって、如何にも祭りを楽しみにきた小さな女の子、という感じだ。
しかし、普段の大人しさが薄れ、快活な印象を与える着こなしだった。綺麗で少し大きめなかんざしもアクセントとして輝いている。
ミサトとしては何となく“可愛い姪っ子”みたいな見た目だった。
かく言うミサトは、実は一番全員を驚かせていた。
無理もない、先ほどまでのガンマニアっぽいホットパンツ&黒タンクトップとは違い、完全に落ち着いた着物令嬢と化したのだから。
カトリーヌのように主張はしない、しかし白い肌とうなじの印象的な令嬢だ。
一行は、夜になって涼しくなった優しい風を感じながら、温泉街の中心に向かって歩きだした。
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