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テラ・ドス・ヴェルメロス(9)

地図にない王国(5)

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「よし、俺の合図でいいな?」

アルマージュが皆に確認する。皆は頷いて返した。

「3……2……」

皆の身体が飛び出す態勢に入り始めた時、目の前を何かが通った。
思わず全員の視線が引っ張られる。

飛んできた物体は皆からさほど離れていない、洞窟の地面に突き刺さった。矢だ。
矢には何かカプセル状のモノが括りつけられており、ソレからは煙がでている。

何かはわからなかったが、起爆性のモノである可能性が高いと皆が即座に察知した。

「行くぞ!」

誰かが言い放つと共に、皆が外へ飛びだす。
次の瞬間、洞窟内から閃光と爆音。

閃光には全員が背を向ける形となっていたため、その効果は限定的だった。
しかし爆音は違った。

続けざまに、周囲に同じ矢が降り注いだ。耳が聞こえないせいで、コチラの動きは一歩遅れる。
次の閃光からは逃れるコトは不可能だった。

アルマージュとレインスは残された一瞬間の内に、せめてもの抵抗として矢の飛んできた方向に銃撃を加えた。
その結果がわかる前に、地面に刺さった矢から衝撃が発せられた。

最後に皆が感じたのは、重力が逆さになる感覚だけだった。


◇◇◇


レインスが意識を取り戻した。
目に飛び込んできたのは石造りの床面、そしてソレと自らの間にあるガラスだ。

顔を上げる。目の前には黄衣に身を包んだ托鉢僧のような男性が、コチラに背を向けて胡坐をかいていた。
その男性自身は更に目の前の、巨大な仏像を見つめているようだった。

レインスは周囲の状況を把握しようとする前に、その仏像の“一部の異様さ”に目を奪われた。
仏像は顔にガスマスクめいたモノを装着していた。にも関わらず、その首から下の胸元が開いた服装と全身の体勢は、明らかに仏像のソレだった。

数秒、目を奪われはしたが、レインスはすぐに周囲の把握に気を戻した。
左隣にはアルマージュ、右隣にはララと、その奥にオクルスがいた。
全員、透明の鐘のような形状の物体に囚われている。

アルマージュとオクルスはまだ気を失っているようだったが、ララは目を覚ましていた。
とは言え、ララもつい先ほど目を覚ましたのか、レインスのように仏像に見入っている。

レインスは背後を確認した。
どうやらこの、天井が吹き抜けの空間には、私たちと目の前の男以外に人はいないらしい。

ララも周囲を見回し、レインスだけが今のところ起きているコトに気づいた。
ララは思わず声をだしそうになったが、レインスが人差し指を口に当てソレを制止するジェスチャーをした。
目の前の男に気取られないようにだ。

アルマージュとオクルスを起こすべきか、いやそもそもこの透明の檻から脱出する方法はないかと二人が考え始めてからすぐ、その思いが通じたのかアルマージュとオクルスも目を覚ました。

すぐにレインスは、二人が変な物音を立てる前に意思疎通がしなければと焦り始めたが、ソレは杞憂だった。
目の前の黄衣の男が微動だにせず、しかし声を上げたからだ。

「覚醒されたようですね」
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