101 / 271
テラ・ドス・ヴェルメロス(9)
地図にない王国(5)
しおりを挟む
「よし、俺の合図でいいな?」
アルマージュが皆に確認する。皆は頷いて返した。
「3……2……」
皆の身体が飛び出す態勢に入り始めた時、目の前を何かが通った。
思わず全員の視線が引っ張られる。
飛んできた物体は皆からさほど離れていない、洞窟の地面に突き刺さった。矢だ。
矢には何かカプセル状のモノが括りつけられており、ソレからは煙がでている。
何かはわからなかったが、起爆性のモノである可能性が高いと皆が即座に察知した。
「行くぞ!」
誰かが言い放つと共に、皆が外へ飛びだす。
次の瞬間、洞窟内から閃光と爆音。
閃光には全員が背を向ける形となっていたため、その効果は限定的だった。
しかし爆音は違った。
続けざまに、周囲に同じ矢が降り注いだ。耳が聞こえないせいで、コチラの動きは一歩遅れる。
次の閃光からは逃れるコトは不可能だった。
アルマージュとレインスは残された一瞬間の内に、せめてもの抵抗として矢の飛んできた方向に銃撃を加えた。
その結果がわかる前に、地面に刺さった矢から衝撃が発せられた。
最後に皆が感じたのは、重力が逆さになる感覚だけだった。
◇◇◇
レインスが意識を取り戻した。
目に飛び込んできたのは石造りの床面、そしてソレと自らの間にあるガラスだ。
顔を上げる。目の前には黄衣に身を包んだ托鉢僧のような男性が、コチラに背を向けて胡坐をかいていた。
その男性自身は更に目の前の、巨大な仏像を見つめているようだった。
レインスは周囲の状況を把握しようとする前に、その仏像の“一部の異様さ”に目を奪われた。
仏像は顔にガスマスクめいたモノを装着していた。にも関わらず、その首から下の胸元が開いた服装と全身の体勢は、明らかに仏像のソレだった。
数秒、目を奪われはしたが、レインスはすぐに周囲の把握に気を戻した。
左隣にはアルマージュ、右隣にはララと、その奥にオクルスがいた。
全員、透明の鐘のような形状の物体に囚われている。
アルマージュとオクルスはまだ気を失っているようだったが、ララは目を覚ましていた。
とは言え、ララもつい先ほど目を覚ましたのか、レインスのように仏像に見入っている。
レインスは背後を確認した。
どうやらこの、天井が吹き抜けの空間には、私たちと目の前の男以外に人はいないらしい。
ララも周囲を見回し、レインスだけが今のところ起きているコトに気づいた。
ララは思わず声をだしそうになったが、レインスが人差し指を口に当てソレを制止するジェスチャーをした。
目の前の男に気取られないようにだ。
アルマージュとオクルスを起こすべきか、いやそもそもこの透明の檻から脱出する方法はないかと二人が考え始めてからすぐ、その思いが通じたのかアルマージュとオクルスも目を覚ました。
すぐにレインスは、二人が変な物音を立てる前に意思疎通がしなければと焦り始めたが、ソレは杞憂だった。
目の前の黄衣の男が微動だにせず、しかし声を上げたからだ。
「覚醒されたようですね」
アルマージュが皆に確認する。皆は頷いて返した。
「3……2……」
皆の身体が飛び出す態勢に入り始めた時、目の前を何かが通った。
思わず全員の視線が引っ張られる。
飛んできた物体は皆からさほど離れていない、洞窟の地面に突き刺さった。矢だ。
矢には何かカプセル状のモノが括りつけられており、ソレからは煙がでている。
何かはわからなかったが、起爆性のモノである可能性が高いと皆が即座に察知した。
「行くぞ!」
誰かが言い放つと共に、皆が外へ飛びだす。
次の瞬間、洞窟内から閃光と爆音。
閃光には全員が背を向ける形となっていたため、その効果は限定的だった。
しかし爆音は違った。
続けざまに、周囲に同じ矢が降り注いだ。耳が聞こえないせいで、コチラの動きは一歩遅れる。
次の閃光からは逃れるコトは不可能だった。
アルマージュとレインスは残された一瞬間の内に、せめてもの抵抗として矢の飛んできた方向に銃撃を加えた。
その結果がわかる前に、地面に刺さった矢から衝撃が発せられた。
最後に皆が感じたのは、重力が逆さになる感覚だけだった。
◇◇◇
レインスが意識を取り戻した。
目に飛び込んできたのは石造りの床面、そしてソレと自らの間にあるガラスだ。
顔を上げる。目の前には黄衣に身を包んだ托鉢僧のような男性が、コチラに背を向けて胡坐をかいていた。
その男性自身は更に目の前の、巨大な仏像を見つめているようだった。
レインスは周囲の状況を把握しようとする前に、その仏像の“一部の異様さ”に目を奪われた。
仏像は顔にガスマスクめいたモノを装着していた。にも関わらず、その首から下の胸元が開いた服装と全身の体勢は、明らかに仏像のソレだった。
数秒、目を奪われはしたが、レインスはすぐに周囲の把握に気を戻した。
左隣にはアルマージュ、右隣にはララと、その奥にオクルスがいた。
全員、透明の鐘のような形状の物体に囚われている。
アルマージュとオクルスはまだ気を失っているようだったが、ララは目を覚ましていた。
とは言え、ララもつい先ほど目を覚ましたのか、レインスのように仏像に見入っている。
レインスは背後を確認した。
どうやらこの、天井が吹き抜けの空間には、私たちと目の前の男以外に人はいないらしい。
ララも周囲を見回し、レインスだけが今のところ起きているコトに気づいた。
ララは思わず声をだしそうになったが、レインスが人差し指を口に当てソレを制止するジェスチャーをした。
目の前の男に気取られないようにだ。
アルマージュとオクルスを起こすべきか、いやそもそもこの透明の檻から脱出する方法はないかと二人が考え始めてからすぐ、その思いが通じたのかアルマージュとオクルスも目を覚ました。
すぐにレインスは、二人が変な物音を立てる前に意思疎通がしなければと焦り始めたが、ソレは杞憂だった。
目の前の黄衣の男が微動だにせず、しかし声を上げたからだ。
「覚醒されたようですね」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!
天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。
焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。
一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。
コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。
メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。
男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。
トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。
弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。
※変な話です。(笑)
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる