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バクエット・ド・パクス(8)

他国に入っただけなのに(1)

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「おい、止まれ!」

ミサトたち一行は、『デル・ゾーネ』東検問にて門番に制止された。
ミサトは顔を手で押さえる。カトリーヌは「およ?」という顔で振り向いた。

ミサトたちは、魔術国家デル・ゾーネの中で目立たないよう、変装をしていた。
しかしカトリーヌが用意したその衣装に対し、異論は一切認められなかった。

カトリーヌのソレは、最も魔術魔術していた。
とんがり帽子に、先がぐるぐるの長い杖。そして黒い服(胸元の自由度高)だ。

対して、ノワールは男装の魔法使い衣装だった。
背が高いので、ローブの着こなしもスマートだ。眼鏡が容貌の知的さを否応なく増していた。

ブレーズはと言うと、少し趣向が変わっていた。
魔法使いというよりは、お姫さまのようなドレスだ。カトリーヌ曰く「私たちはブレーズの旅を護衛するポジションという設定です♪」とのコト。

そしてミサト。ミサトは何故かホットパンツに黒のタンクトップだった。
「ミサトさんは『戦士』のイメージですが、ビキニみたいなアーマーは嫌でしょう?」とのコト。
いつの時代の女性戦士イメージだ。そしてだからと言って、この服装は戦士なのか。二丁拳銃は似合いそうだけど。

「お前たち、ドコから来た?」

門番がカトリーヌに聞く。

「パクスからです♪」

「パクスでは、今は覆い下の茶しか栽培していないと聞いているが?」

「ノワールのコトでしょうか? ノワールは女性ですよ」

「何? そうなのか」

「見た目で人を判断するのはダメですよ♪」

カトリーヌが人差し指を掲げ、門番にウインクしてみせる。

「まあソレはいい。止めたのは別の理由だ。お前たち、その格好はいったい何だ」

ですよね、とミサトが思う。

「何って、魔術礼装ですけど」

「レトロすぎるぞ」

はい、カトリーヌざまぁ。

「ごめんなさい、パクスの人間は新しい事柄に疎いモノで♪」

「お前たちの為を思って言ってやってるんだ。着替えて出直せ」

「お優しいんですね♪ でも、私たちの為を思うなら見た目で判断しないでくれませんか」

いや、見た目で判断されんかったらマズいんだが、とミサト。
とは言え、私だけはどうか見た目で判断しないでほしい。戦士でもトゥーハンドでもないんだ。
銃の扱いには自信があるが。

カトリーヌは、門番の手を両手で包んだ。
と見せかけて、身体を屈めて両の上腕で自分の胸を寄せる。

「ね♪」

再度ウインクするカトリーヌ。
門番は手を振りほどくと、早く行けと促した。

門から離れ、国の市街に向かって足を進める一行。
カトリーヌが言う。

「最後まで見た目で判断する坊やで良かったですね♪」
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