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テラ・ドス・ヴェルメロス(8)

地図にない王国(2)

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次の日、彼らは朝早くから飛行を再開していた。
3~4時間は飛び続け、いよいよ廃都“キャピタル・キョート・シティ”の北縁部が見えるかという時だった。

横一列で飛んでいた彼らの中から、アルマージュが一人、先に出た。
そして全員の方を振り向いたかと思うと、下を指差した。

全員の視線がその指を辿る。
パッと見はわからなかったが、よく見ると、広がる森の一部に妙な部分があった。

その部分だけは、木々が“まばら”だった。

アルマージュの方を向くと、皆と同じく装着しているヘルメットから、小さな連絡用マイクを引き出していた。
全員のヘルメットに、アルマージュの声が届く。

「降りてみよう! どっちにしろ陽も高くなってきたし、そんな時間だろ?」

オクルスが左右のララ、レインスを見る。二人も頷いていた。

「わかった! 降りてみよう!」


◇◇◇


一行は一番近い、木々の開けた場所に降り立った。
背負っていた“アズール”を下ろし、ヘルメットも外す。

「あっつぅ~! 飛んでる内はまだマシだけど、風を感じなくなる着陸時と離陸時は一番あっついわ!」

レインスが高い声で言う。
「お疲れ様です」と、ララが水を手渡した。

「歩いたらこっから50~100mってトコロか? アルマージュ、お前の見つけた何かは」

オクルスがアルマージュに聞く。

「そんなトコロだな。ちゃんと見たか?」

「何が? なんか妙に木々が薄くなってる部分は見えたが」

「お前らに伝えたの、ちょっと通り過ぎてからだもんな。ちょうど真横を飛んでた時、何か人工物っぽいもんが見えたんだ」

オクルスがレインスの方を見る。
レインスは水の入ったボトルに口を付けたまま、肩を上下させた。『見てない』の合図だ。

「ララさん、何か見えた?」

「いいえ、オクルスさんと同じものしか……」

オクルスがアルマージュの方を向く。

「砂漠のオアシスと同じもんじゃあないだろうな?」

「幻覚だってか? のぼせてる自覚はないが」

「のぼせてるヤツは大抵、初期はそう言うぞ」

「おでこ、くっつけてあげようか?」

レインスが意地悪そうに言う。

「いや、いい」

「そんで、人工物ってのは何を見たんだ?」

「なんか、石組みみたいなヤツだった」

「自然の石組みじゃあ?」

「ナメてんのかお前」

オクルスがアゴに手を当て、考えるポーズを取る。

「しかし真剣に考えて、ココはキャピタルの北部だ。フツーは何も無いはずだぜ」

「ああ、ソレは俺も知ってる。だが、何も無いってのは"何があるかも知られてない"、つまり未開の地って意味だろ?」

「ああ、ソレは俺も知ってる」

オクルスとアルマージュがニヤリと笑い合う。

「ヤレヤレ、男子男子」

レインスがポツリと呟く。ララはそんな光景を見て微笑んでいた。


◇◇◇


一行はヘルメットと“アズール”を装備し直し、徒歩でしばらく歩いた。

かなりの重労働に「やっぱり上空から見たものはもう無視しちゃわない?」と誰かが提案してくれないかと、皆が思い始めた頃だった。

木々が突然開け、ソレが姿を現した。
四角く切り出された巨石を積み上げた、ピラミッドだった。

「……コレって幻覚?」

レインスが目をこすりこすり言う。

「アルマージュに続き、発症者二人目か」

「目ぇ見開いて見上げながら、よくアンタそれ言えるわねオクルス」

ピラミッドは緑がかった巨石で構成されていた。
巨石の表面からは所々、エメラルドが露出している。

また、ピラミッドには巨石が崩れたのか元々その場所は空けてあったのか、石が積まれていない部分があった。
ソコからは、樹が首をもたげている。ソレはこれまた巨大な茶の樹だった。
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