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南山城国(8)
忌村(4)
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飛びかかった犬の牙が、龍之介の首まで数センチと迫った時。
龍之介は素早く、上体を崩した。重力に任せて。
犬は龍之介の身体が倒れ、自らの狙いが外れたコトを悟ったに違いない。
しかし、空中で方向転換は不可能だった。
そして、すぐに自らの運命も悟った。
龍之介の倒れた身体の向こう、刀だけを、龍之介はしっかりと保持したままだった。
犬は、ちょうど刀身に食らいつく格好となった。
龍之介はコレを狙って、刃を最初から自らの方に向けていた。
犬は刃に嚙みつこうとしたが、龍之介は素早く体勢を捻じり変えた。右手の握りを正しく戻し、左手は刀身に添える。
犬は口を閉じたが、歯は刃を捉えるコトはなかった。
犬の喉元まで、深く刀が入った。龍之介はそのまま力を乗せ続け、刀ごと犬を地面に叩きつける。
そして、斬り抜けた。
犬の顎から背中にかけてが解体された。
「……良し! 大丈夫ですか!?」
紋様の効力を復活させた童仙が振り向く。
辺りは、悲惨な光景となっていた。
「御免、童仙殿。ちょっと派手にやりすぎちゃった……。カオルちゃんは大丈夫?」
遠藤が頭をかき、苦笑いしながら振り返る。
童仙もカオルの方を見た。
カオルは、顔を紅潮させながら震えていた。
童仙が問いかける。
「カオルど」
「ぷはーっ! 息できんかった! 二人ともスゴくカッコよかった!」
思いがけない言葉に三人とも、逆に驚いた。
特に、「女性の前でやってしまった……」という表情で、犬を斬り抜いた姿勢のまま顔だけをカオルに向けていた龍之介は、目を完全に見開ききってしまっている。
「遠藤さんの武器ってショットガンなんだ! あ、散弾銃。
あと、龍之介君のその技? 流派? スゴくない!?」
「あ、ありがとう……」
「どうも……ありがとうございます」
龍之介は懐から紙を出して刀を拭い、遠藤はショットガンをしまう。
「まあ、カオルちゃんが元気で何より」
「いやー、シビれました。……そう言えば童仙さんは?」
カオルが振り向く。
童仙は片膝をついたまま、その顔を見て大きく溜め息を吐くと、微笑んだ。
「全く、胆力が過ぎますぞ。カオル殿」
「だって童仙さん、今の二人の、見てないの? 勿体ないなあ」
遠藤が吹き出す。
「カオルちゃん、童仙殿は紋様で手いっぱ」
遠藤の首が後ろに引っ張られた。
カオルと童仙が見るが早いか、龍之介が遠藤の背後の“何か”を斬る。
遠藤の首から、ソレがぼとりと落ちる。ピンク色のロープのように見えた。
「何なんだ一体!」
咳き込みながら遠藤が言う。龍之介が答えた。
「どうやら……敵は思ったより、しぶといようですね」
龍之介の視線の先、犬の死骸の傷口から、無数の触手がのたうち回っていた。
龍之介は素早く、上体を崩した。重力に任せて。
犬は龍之介の身体が倒れ、自らの狙いが外れたコトを悟ったに違いない。
しかし、空中で方向転換は不可能だった。
そして、すぐに自らの運命も悟った。
龍之介の倒れた身体の向こう、刀だけを、龍之介はしっかりと保持したままだった。
犬は、ちょうど刀身に食らいつく格好となった。
龍之介はコレを狙って、刃を最初から自らの方に向けていた。
犬は刃に嚙みつこうとしたが、龍之介は素早く体勢を捻じり変えた。右手の握りを正しく戻し、左手は刀身に添える。
犬は口を閉じたが、歯は刃を捉えるコトはなかった。
犬の喉元まで、深く刀が入った。龍之介はそのまま力を乗せ続け、刀ごと犬を地面に叩きつける。
そして、斬り抜けた。
犬の顎から背中にかけてが解体された。
「……良し! 大丈夫ですか!?」
紋様の効力を復活させた童仙が振り向く。
辺りは、悲惨な光景となっていた。
「御免、童仙殿。ちょっと派手にやりすぎちゃった……。カオルちゃんは大丈夫?」
遠藤が頭をかき、苦笑いしながら振り返る。
童仙もカオルの方を見た。
カオルは、顔を紅潮させながら震えていた。
童仙が問いかける。
「カオルど」
「ぷはーっ! 息できんかった! 二人ともスゴくカッコよかった!」
思いがけない言葉に三人とも、逆に驚いた。
特に、「女性の前でやってしまった……」という表情で、犬を斬り抜いた姿勢のまま顔だけをカオルに向けていた龍之介は、目を完全に見開ききってしまっている。
「遠藤さんの武器ってショットガンなんだ! あ、散弾銃。
あと、龍之介君のその技? 流派? スゴくない!?」
「あ、ありがとう……」
「どうも……ありがとうございます」
龍之介は懐から紙を出して刀を拭い、遠藤はショットガンをしまう。
「まあ、カオルちゃんが元気で何より」
「いやー、シビれました。……そう言えば童仙さんは?」
カオルが振り向く。
童仙は片膝をついたまま、その顔を見て大きく溜め息を吐くと、微笑んだ。
「全く、胆力が過ぎますぞ。カオル殿」
「だって童仙さん、今の二人の、見てないの? 勿体ないなあ」
遠藤が吹き出す。
「カオルちゃん、童仙殿は紋様で手いっぱ」
遠藤の首が後ろに引っ張られた。
カオルと童仙が見るが早いか、龍之介が遠藤の背後の“何か”を斬る。
遠藤の首から、ソレがぼとりと落ちる。ピンク色のロープのように見えた。
「何なんだ一体!」
咳き込みながら遠藤が言う。龍之介が答えた。
「どうやら……敵は思ったより、しぶといようですね」
龍之介の視線の先、犬の死骸の傷口から、無数の触手がのたうち回っていた。
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