カメリア・シネンシス・オブ・キョート

龍騎士団茶舗

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南山城国(8)

忌村(2)

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「私が聞きたぃいっ!」

カオルが額をさすりさすり叫ぶ。
慌てて龍之介が駆け寄った。

「大丈夫です。少し赤くなってるだけですよ」

「ホントぉ? 血とか出てない?」

「お尻の方は大丈夫かい? カオルちゃん」

「はい遠藤セクハラー」

「せく……はら?」

童仙の疑問は無視し、龍之介の手を借りて立ち上がるカオル。
後ろをはたき、土を落とす。うん、叩いた感じどうもない。

「いてて……。何に当たったんだろ」

カオルが遠藤と童仙の方に手を伸ばす。見えない壁に手が触れ、パントマイムのようになった。
下を見るとちょうど、紋様の線の端だ。

龍之介も手を伸ばしてみる。その手はカオルとは異なり、紋様の線の上で宙をかいた。

「うん? カオルちゃん、額をよく見せて」

遠藤が近寄る。

「セクハラ多いですよ、遠藤さん」

「そうじゃあなくて、虫ついてるよ」

「ええっ! うわわっ!」

思わず額から手を離すカオル。しかし虫はついていなかった。
代わりに、赤みが引き始めている額に、薄っすらと紋様が見える。地面の紋様とは違うモノだった。

「コレは……」

「だね、童仙殿。コレが原因だ」

「えぇ~。取ってくださいぃ~」

「落ち着きたまえ、カオルちゃん。虫などではないよ。キミの額に少し変わった紋様が出ているだけなんだ」

遠藤がカオルの前髪を人差し指で上げる。
龍之介もソレをまじまじと覗きこんで、言った。

「コレが原因なんですか?」

童仙が答える。

「ええ。カオル殿は非常に魔力が強いのです。ですから、本来は魔力の種類を見分けられるこの地面の紋様ですが、カオル殿の魔力が強すぎて正常に動作しなかったのでしょう」

「えぇ……。じゃあ私、入れないの?」

「そういうワケにはいきませんし、少しだけ紋様を解除しましょう」

童仙が周囲の門番に伝える。

「大丈夫なんですか? 解除しちゃって」

「数秒だけです。ソレにいきなり、村の中心部というワケでもありませんし」

カオルの疑問に答えながら、童仙は紋様に膝をついた。

「良いですか?」

カオルが頷く。
童仙は唇に指を当てて何やら呟くと、地面を祓った。

紋様が心なしか薄くなる。
カオルが歩き出し、紋様を踏むコトができた。全員が前を向く。

「では、改めて」

全員が紋様を越え、村域内へ一歩踏み出した。
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