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United Japanese tea varieties of Iratsuko(7)
旅立ち(3)
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「へえ、あの村をねえ」
ムサシが顎を撫でながら、ホログラムをまじまじと見る。
「残るデル・ゾーネは、皆でお嬢さまの館へ向かってるわ」
「は? 山脈とは逆方向だぞ。ペイルンオーリン嬢の館だよな?」
「そうだ。忘れ物を取りに帰ってるんじゃあないかと、俺は見てる」
ムサシへそう返すフランシス。ムサシは鼻を鳴らして答えた。
アサヒが口を開く。
「デル・ゾーネの皆さんは、しばらく行方が掴めなかったんですよね?」
「ええ。全く行方が掴めないコトで、却って消去法で場所はわかったけれど」
「確か、“龍騎士団茶舗”でしたっけ?」
「その通り。この後、ムサシに質問攻めにあっても話が進まないから、先に復習しておきましょうか」
「おいおい、俺だってある程度の情報は仕入れてるぜ」
「じゃあ、復習をお願い」
「……」
ムサシは顔を歪ませたが、ぶっきらぼうに片手でホログラムを扱い始めた。
「俺の仕入れた情報じゃあ、こうだ。
デル・ゾーネの“レア”は、同国内の政府機構“オートラグ”から不適格と認定、再召喚のために消滅させられるトコロを、龍騎士団茶舗に匿ってもらった」
「その通り。私たちの『消去法で場所はわかった』というのは、消息を全くもって絶てているという点から。あの国でそんな芸当ができるのはオートラグ自身か、あの茶舗ぐらいしかないわ。
しかしムサシ、貴方にはどうしてそこまでの情報があるのかしら?」
コレが目当てだったか、とムサシは思った。一種の誘導尋問だ。相手に解説させて、痛いトコロを突く。
しかしムサシも馬鹿じゃあない。こういう時には正直に言った方が良い、ある程度は。
とは言え、少し遊ぶか。
「と言うと?」
「私たちはFBUよ。最も科学力の進んだ国であるU.J.I内の、国家機密レベルの情報にもアクセスできる。だからこそ、“消去法”を使える」
「話が見えないな」
「私たちはU.J.Iの管理下にある人工衛星にアクセスしたわ。デル・ゾーネ上空には結界があるから、物理的には国の中のコトは見えないけれど、国から出る人物については把握できる。
デル・ゾーネの国から出た人物に、かの国の“旅団”はいなかった。結界があると言っても、他国の魔力動向が全てわからないワケじゃあない。その魔力動向が追えず、しかし国から出ていないとなれば、後は消去法で、という寸法よ」
アサヒとフランシスはムサシを注視する。
ムサシはしばしの沈黙の後、笑い出した。
「参ったよ、降参だ。しかし、面白い答えは用意できないぜ。あの国へ出入りできる情報筋を持ってるのさ」
「ハッタリね。そんな人物いるワケないわ」
「いやいや、キミが思っているより世界は広いものだよ。その人物はどんな時でも他国と他国を行き来して、重要な情報をかすめ取ってこれる」
ジュディが解せない顔でムサシを見つめる。ムサシは肩をすくめてみせた。
アサヒはフランシスの方を見る。フランシスはアサヒに『ジュディが一本取られたな』と、舌を出してみせた。
この時、南山城国内ではとある人物がくしゃみをしていたが、広い世界におけるくしゃみの一つなど、何も珍しくはない。
ただ、その人物の傍らにいた少女だけが「大丈夫ですか?」と問いかけたにとどまった。
ムサシが顎を撫でながら、ホログラムをまじまじと見る。
「残るデル・ゾーネは、皆でお嬢さまの館へ向かってるわ」
「は? 山脈とは逆方向だぞ。ペイルンオーリン嬢の館だよな?」
「そうだ。忘れ物を取りに帰ってるんじゃあないかと、俺は見てる」
ムサシへそう返すフランシス。ムサシは鼻を鳴らして答えた。
アサヒが口を開く。
「デル・ゾーネの皆さんは、しばらく行方が掴めなかったんですよね?」
「ええ。全く行方が掴めないコトで、却って消去法で場所はわかったけれど」
「確か、“龍騎士団茶舗”でしたっけ?」
「その通り。この後、ムサシに質問攻めにあっても話が進まないから、先に復習しておきましょうか」
「おいおい、俺だってある程度の情報は仕入れてるぜ」
「じゃあ、復習をお願い」
「……」
ムサシは顔を歪ませたが、ぶっきらぼうに片手でホログラムを扱い始めた。
「俺の仕入れた情報じゃあ、こうだ。
デル・ゾーネの“レア”は、同国内の政府機構“オートラグ”から不適格と認定、再召喚のために消滅させられるトコロを、龍騎士団茶舗に匿ってもらった」
「その通り。私たちの『消去法で場所はわかった』というのは、消息を全くもって絶てているという点から。あの国でそんな芸当ができるのはオートラグ自身か、あの茶舗ぐらいしかないわ。
しかしムサシ、貴方にはどうしてそこまでの情報があるのかしら?」
コレが目当てだったか、とムサシは思った。一種の誘導尋問だ。相手に解説させて、痛いトコロを突く。
しかしムサシも馬鹿じゃあない。こういう時には正直に言った方が良い、ある程度は。
とは言え、少し遊ぶか。
「と言うと?」
「私たちはFBUよ。最も科学力の進んだ国であるU.J.I内の、国家機密レベルの情報にもアクセスできる。だからこそ、“消去法”を使える」
「話が見えないな」
「私たちはU.J.Iの管理下にある人工衛星にアクセスしたわ。デル・ゾーネ上空には結界があるから、物理的には国の中のコトは見えないけれど、国から出る人物については把握できる。
デル・ゾーネの国から出た人物に、かの国の“旅団”はいなかった。結界があると言っても、他国の魔力動向が全てわからないワケじゃあない。その魔力動向が追えず、しかし国から出ていないとなれば、後は消去法で、という寸法よ」
アサヒとフランシスはムサシを注視する。
ムサシはしばしの沈黙の後、笑い出した。
「参ったよ、降参だ。しかし、面白い答えは用意できないぜ。あの国へ出入りできる情報筋を持ってるのさ」
「ハッタリね。そんな人物いるワケないわ」
「いやいや、キミが思っているより世界は広いものだよ。その人物はどんな時でも他国と他国を行き来して、重要な情報をかすめ取ってこれる」
ジュディが解せない顔でムサシを見つめる。ムサシは肩をすくめてみせた。
アサヒはフランシスの方を見る。フランシスはアサヒに『ジュディが一本取られたな』と、舌を出してみせた。
この時、南山城国内ではとある人物がくしゃみをしていたが、広い世界におけるくしゃみの一つなど、何も珍しくはない。
ただ、その人物の傍らにいた少女だけが「大丈夫ですか?」と問いかけたにとどまった。
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