77 / 271
United Japanese tea varieties of Iratsuko(7)
旅立ち(1)
しおりを挟む
「なんか顔色悪いな、元々そんなに良い方じゃあなかったけど」
「ほっとけ」
“旅立ち”を目前にしての、打合せのメンバーが揃った。
アサヒ、ジュディ、フランシス、そしてムサシだ。
部屋の中央には、正方形のグリッドが空中に展開されていた。
ソレを囲むように、四人が立っている。
ジュディだけがグリッドに手を掲げて、打合せの準備をしていた。
「もうちょいかかる。ほれっ」
フランシスがグリッドを通して、小さな箱をムサシに投げた。
『カピタン』という名前のタバコだ。
「ちょっと。グリッドに物、通さないでくれる?」
「わりぃわりぃ。煙で見やすくなるから許してくんな」
ジュディが苦言を呈す。
フランシスは、グリッドのホログラムがタバコの煙に反射して、より見やすくなるコトを言い訳にした。
「やべ、先立つもん忘れちまった」
ムサシは箱からタバコを咥え出したが、自らの服を両手で探り探り言った。
「アサヒ、ほれっ」
「うわっと」
フランシスがアサヒにライターを投げ渡す。
アサヒとムサシは近寄ると、ムサシが腰を曲げてタバコを火種の元に近づけた。
アサヒが点火する。
「あざす。何かお前、慣れてんな。元いた世界じゃあガキが大人に火ぃ渡すのは普通なのか?」
「えっと……まぁ」
「準備できたわ」
ジュディが会話を遮るように言った。
フランシスは頭を掻いている。アサヒとムサシの距離を縮めようと促したが、変に近づいた部分もあったらしい。
「旅の問題ってのは別に珍しくもない、アレだろ? 出発の遅れ」
ムサシがタバコをふかしながら言う。
フランシスが答える。
「その通り。茶畑を見てたら当然だな」
「“CS園”よ」
「“CS園”を見てたらよくわかったよ。収穫が遅れてるっぽかったからな」
“CS園”の部分を強調して、ムサシが言う。
「遅れの原因は、日照量か?」
「ああ、今年に入ってU.J.Iは曇りの日がより増えてる。気分も滅入るってもんさ」
「環境破壊進めすぎだろ、我が国」
「まあ、何はともあれ」
ジュディがまたも話を仕切り直す。
「旅の出発が遅れているのは事実よ。私たちは遅れを取り戻す必要があるわ」
「なんか、皆さん、すみません。僕が教えてもらいつつの作業だったので……」
アサヒが反省する。フランシスとジュディがすぐに否定しようと
「いや、アサヒ君のせいじゃあないさ。異世界から来たヤツが茶の育て方を初めから知ってる可能性なんて限りなく少ないし、ソレを踏まえても、キミの管理は見事だったぜ。ちゃば……CS園のな」
ムサシがさらりと言う。フランシスとジュディは口を開けたまま、ムサシを見つめる。
「何だよ」
「いや、お前の言う通りだ」
「そうね、ムサシの言う通り。アサヒのお陰で、私たちのCS園とその収穫物のコンディションは例年に比べて、かなり良かったわ。安心して旅をスタートできる。
出発の遅れは、純粋に天候の不順によるものよ」
ムサシがグリッドに煙を吹きつける。ホログラムが一際、濃くなった。
「とは言え、天候不順だからと言って、他の国々が手加減してくれるわけじゃあねえしな」
「ええ。遅れは何としても、取り戻す必要がある」
「ほっとけ」
“旅立ち”を目前にしての、打合せのメンバーが揃った。
アサヒ、ジュディ、フランシス、そしてムサシだ。
部屋の中央には、正方形のグリッドが空中に展開されていた。
ソレを囲むように、四人が立っている。
ジュディだけがグリッドに手を掲げて、打合せの準備をしていた。
「もうちょいかかる。ほれっ」
フランシスがグリッドを通して、小さな箱をムサシに投げた。
『カピタン』という名前のタバコだ。
「ちょっと。グリッドに物、通さないでくれる?」
「わりぃわりぃ。煙で見やすくなるから許してくんな」
ジュディが苦言を呈す。
フランシスは、グリッドのホログラムがタバコの煙に反射して、より見やすくなるコトを言い訳にした。
「やべ、先立つもん忘れちまった」
ムサシは箱からタバコを咥え出したが、自らの服を両手で探り探り言った。
「アサヒ、ほれっ」
「うわっと」
フランシスがアサヒにライターを投げ渡す。
アサヒとムサシは近寄ると、ムサシが腰を曲げてタバコを火種の元に近づけた。
アサヒが点火する。
「あざす。何かお前、慣れてんな。元いた世界じゃあガキが大人に火ぃ渡すのは普通なのか?」
「えっと……まぁ」
「準備できたわ」
ジュディが会話を遮るように言った。
フランシスは頭を掻いている。アサヒとムサシの距離を縮めようと促したが、変に近づいた部分もあったらしい。
「旅の問題ってのは別に珍しくもない、アレだろ? 出発の遅れ」
ムサシがタバコをふかしながら言う。
フランシスが答える。
「その通り。茶畑を見てたら当然だな」
「“CS園”よ」
「“CS園”を見てたらよくわかったよ。収穫が遅れてるっぽかったからな」
“CS園”の部分を強調して、ムサシが言う。
「遅れの原因は、日照量か?」
「ああ、今年に入ってU.J.Iは曇りの日がより増えてる。気分も滅入るってもんさ」
「環境破壊進めすぎだろ、我が国」
「まあ、何はともあれ」
ジュディがまたも話を仕切り直す。
「旅の出発が遅れているのは事実よ。私たちは遅れを取り戻す必要があるわ」
「なんか、皆さん、すみません。僕が教えてもらいつつの作業だったので……」
アサヒが反省する。フランシスとジュディがすぐに否定しようと
「いや、アサヒ君のせいじゃあないさ。異世界から来たヤツが茶の育て方を初めから知ってる可能性なんて限りなく少ないし、ソレを踏まえても、キミの管理は見事だったぜ。ちゃば……CS園のな」
ムサシがさらりと言う。フランシスとジュディは口を開けたまま、ムサシを見つめる。
「何だよ」
「いや、お前の言う通りだ」
「そうね、ムサシの言う通り。アサヒのお陰で、私たちのCS園とその収穫物のコンディションは例年に比べて、かなり良かったわ。安心して旅をスタートできる。
出発の遅れは、純粋に天候の不順によるものよ」
ムサシがグリッドに煙を吹きつける。ホログラムが一際、濃くなった。
「とは言え、天候不順だからと言って、他の国々が手加減してくれるわけじゃあねえしな」
「ええ。遅れは何としても、取り戻す必要がある」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!
天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。
焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。
一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。
コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。
メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。
男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。
トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。
弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。
※変な話です。(笑)
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる