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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(7)

旅立ち(2)

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「それで、メイさん。“鏡”を使って何処まで旅を短縮するおつもりですか?」

「“鍵”のある“暗黒山脈”の麓までです」

「まあ、ソレが妥当でしょうね」

団長は、自ら淹れた茶を口に運んだ。
本日のお茶は煎茶だった。キレのある程良い苦味が、後口にかけて意識を引き締めてくれる。

「ちょい待ち。“鍵”までその鏡とやらで、ひとっ飛びできないんですか?」

「尤もな質問です、ツヅキ君。ですがその答えは君自身も予想している通り、否です」

「万能なのに?」

「“鏡”は万能でも、使用者である我々はそうではないからですよ。“鏡”は使用者の目指すところへ連れていってくれますが、“鍵”の詳しい在処は“暗黒山脈”領域内へ侵入しないとわかりません」

「あー、なるほど。承知です」

二人が話している間に、メイは一通り煎茶を堪能した。
器を机の上に返したメイに、団長が次の問いを投げる。

「“鏡”は学校の何処にあるんですか?」

「ソレが問題です。学校の地下です」

「やはりそうですか……」

団長がツヅキを見る。ツヅキは会釈して合図した。
当然知らないですよ、の合図だ。

「ツヅキ君は学校についてもほとんど初めて聞くコトばかりだと思いますが、シュナーシュトック魔法学校は忌み地の上に建てられているんです」

「忌み地?」

「ええ、魔術回路の澱みが発生している土地です。魔法学校はソレを塞ぐための施設が前身です。故に、魔法学校の地下はブラックボックスとなっています」

「えらく危ない学校ですね」

「魔法を学ぶ地としては最適なのです。あらゆる種類の魔法を澱みからは引き出すことができますから。澱みというと問題ですが、制御できれば魔術のインデックスです」

会話の機を見極めて、メイが机の上に地図を広げた。
穴あきや年月による染みで、まっとうな地図としては機能しそうにないものだ。
中心近く、辛うじて判別できる小さな小部屋に、メイが杖を指す。

「この部屋に“鏡”はあります」

部屋の二面、地図の上をセオリー通り北とすれば、西側と南側が染みでかき消されていた。
メイは南西側に杖を引いていく。染みや穴を過ぎて、地図の端に辿り着いた。

「ココの小部屋から、染みや穴で判別は難しいですが恐らく部屋三つ分のスペースを隔てて、“鏡”のある部屋に到達するコトができます」
「地図を信じれば確かでしょうね。この地図は……23代目校長の持ち物ですか。ならば信用できますね」

団長は地図の右下に綴られている文字を見て言った。

「恐ろしい人ですね、メイさん。どうしたワケで地図が今ココにあるのかは聞かないでおきましょう」

「もう一つ、聞かないでおいてほしいコトが……」

「?」

メイの表情が曇る。

「学校そのものへの侵入ルートなのですが」

「ええ。ソレはこれから聞こうと思っていました」

「私の家、ペイルンオーリン家の館の、私の自室から行こうと思っています」

「……どういうコトですか?」

「“鏡”をかつてコピーしたんです。不完全なものですが……校内のほとんどの部屋とは繋がっています」
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