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バクエット・ド・パクス(7)

旅立ち(1)

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「さて、ミサトさん♪ いよいよ旅のお話しなんですが」

対面に座っているカトリーヌが話を切り出す。木漏れ日暖かで静かな森の中で、四人が机を囲んで座っていた。
机の上には“キョート”南部の地図と、カトリーヌの胸が乗っている。ソレは下ろせ。

「ルートをそろそろ決めようと思います♪」

「そーね。このルートはどうかな? パクスからこの方向に出発して……」

ミサトが地図上に指で線を引く。
最初の目的地に到達する前に、カトリーヌの手がソレを防いだ。

「ミサトさん、南山城国へはダメですよ♪」

「え、なんで」

「基本的に、他の国を通るのはアウトです♪」

「ちっ」

「しかも、南山城国を通っても近道でも何でもないですよね♪」

黄色い音符ボイスを連発しやがって。目が笑っててもその奥が笑ってないのがバレバレなんだよ。
などと心中で毒づくミサトの手に、右斜め前に座っていたノワールが手を重ねる。

「ミサトさん。気持ちはわかっていますが、ココは戦略的に行きましょう」

じっとミサトの目を見つめ、落ち着く声で述べるノワール。
はい、わかりました……っていかんいかん。イケメンっぽくなったとは言え、コイツは女子だぞと首を振るミサト。

「…山城国…提供……予定だった…を進むのは………でしょうか?」

「はい?」

ミサトは左斜め前に座っているブレーズに聞き返した。
身体と耳もそちらへ傾ける。

「南山城国に提供する予定だった道を進むのはいかがでしょうか?」

ブレーズは外見的には大きな変化はなかったものの、何故か声が極端なウィスパーボイスになった。
寝る前ならとても心地良いのだが、ディスカッション向きじゃあない。

「ブレーズ、ソレは難しいですね。あの道は南山城国の人々だから通れる道です」

「というと?」

カトリーヌへミサトが聞く。

「ミサトさんがよくご存じな通り、南山城国は屈強な男性たちの社会です。そういう人々でないと通れない険しい道が、私たちの国が提供予定だった道です。私たちの身体じゃあ通れませんね♪」

「『通れませんね♪』じゃあねーよ! だったら皆もやっぱり露地(覆いをしない茶畑)で栽培した方が良かったじゃん! 戦略的に」

「ミサトさん、ソレはできません。パクスの倫理的に不可能です」

ノワールに言われてしまうミサト。戦略的にの次は倫理的にかよ、マジ生きづれーなこの国。

「まあ、ココの掟はそうだけどさ……。ってか、ソレじゃあそもそも旅に出るってレベルじゃあねーじゃん! ノワールはともかく、カトリーヌはボンキュッボンで、ブレーズもなんつーかお嬢さまだしさあ!」

「ありがとうございます、ミサトさん♪」

「褒めてねえ!」
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