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テラ・ドス・ヴェルメロス(7)

旅立ち(1)

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「……コレで、いいんですか?」

ララが問いかける。

「バッチリバッチリ」

オクルスはララの方に首と目線だけを向けると、答えた。
彼の両手は、アルマージュが背負っているものに対し、かかりきりになっている。
同じものをララ、そしてレインスも背負っていた。

銀色の六角柱の形をしたソレは、見た目に反し軽い代物だった。
背負い手側の三面以外、つまり反対側の三面の方にはそれぞれ、三つの蓋がついていた。
アルマージュの背負っているソレの蓋の一つを外し、オクルスは作業をしている。

六角柱の上面はのっぺりとした銀板だったが、下面は口が開いていた。
背負ってからは、その下面の方には決して手を伸ばさないようにとは、オクルスの忠告だ。

「アルマージュのはコレでオッケーだな。ララさんの方見てやってくれよレインス」

「りょーかい。ソレ、貸してもらえるかしら?」

「はいよ」

オクルスは、使っていたスパナをレインスに投げる。

すっかり女性のレインスにも慣れてしまった一同。いや、慣れさせられてしまったという方が正しい。
少しでもネタにしようものなら、鉄拳制裁が飛んでくるのだから。

「ララさん、ちょっと踏ん張って、動かないでいてくれるかしら」

「あ、はい」

「ごめんね。オクルスが調整したいトコを、キツく締めすぎてるもんだから」

「いえ……でも、コレで空が飛べるなんて驚きですね」

「飛び心地は保証できないけどね~」


◇◇◇


数日後に迫った旅立ちの計画のため、机には“キョート”の地図が広げられていた。
“キョート”は南北に細長く、北は左に南は右に、少し傾いている。

中央やや下、微妙に右に寄った部分は灰色に区切られていた。その下方にヴェルメロス以外の、U.J.I含む四ヶ国が記載されている。
ヴェルメロスはと言うと、灰色に区切られた部分から緑色の広大な森林と山岳地帯を挟んだ、“キョート”の遥か上方に位置していた。

ヴェルメロスの国土は範囲こそ他の国々よりも巨大だったが、他の国からはほぼ隔絶されていると言える。

「見ての通り、旅の距離だけで言えば俺たちが一番、長いと思う。目的の地、暗黒山脈はここだ」

オクルスが地図を指し示す。“キョート”の中央右、灰色の地域のさらに右隣だ。
細い線で、確かに山脈が描かれている。

「まあ当たり前だが、他の国よりはこの距離はハンデだわな」

アルマージュが言う。ヴェルメロスから山脈までの距離は、ほぼ“キョート”を縦断するに等しかった。

「その通り、だが俺たちにも利点はある」

「他の国から離れすぎているから、よね」

「ソレが、どう利点なんですか?」

「他の国々の上空には、結界が張り巡らされているんだ。お互いの妨害のためにね」

オクルスが説明する。

「暗黒山脈までは飛べばひとっ飛びだ。特にU.J.Iは反重力の飛行機械においては特化しているし、デル・ゾーネも魔術による飛行には特化してる。
でも、お互いにソレを牽制し合うために空中に様々な結界を張り巡らせた。結果、他の四ヶ国は陸路を踏破するしかなくなったのさ」

ふむふむと、ララが頷く。

「でも、結界はヴェルメロスまでは遠く及ばなかった。だから俺たちは、暗黒山脈までは空路を取ることができる。まあコレで、ようやく他の四ヶ国に対しフェアってところかな」

「私が聞きたくないのは、その続きだけどね~」

レインスがジト目でオクルスに言う。

「結構、前に飛んだ時から改良したんだぞ。蒸気バルブのハーマン値をだな」

「ああ~っと。ソレ、俺にもわかるように言ってもらえる?」

アルマージュが口を挿む。
オクルスが口を開けたままそちらを見、その後レインスとアイコンタクトをしてから、言った。

「いや、ソレは無理だな」
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