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テラ・ドス・ヴェルメロス(5)

煎茶畑でつかまえて(2)

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「農作業なんですけど」

ララが切り出す。

「旅の準備も兼ねてる、ってどういうことですか?」

「あー、俺たちは旅のメンバーだよね?」

「ええ」

「そのメンバー育成とでも言うかな」

「……つまり、皆さんは茶の樹の精霊ですから、茶の樹を鍛えたら皆さんも鍛えられるとかですか?」

「精霊って言い方はむず痒いな、この世界じゃあ皆そうなんだが。まあ、鍛えるってのも間違ってないけど、それ以上かな」

「と言うと?」

「んー。最終的にはララさん次第で、まあ助言はさせてもらうけど、性別とかが変わったりする」

「え!?」

思わずカップの煎茶がこぼれそうになる。
オクルスは、レインスとアルマージュの方を向いて言う。

「これも別に普通なんだけどな」

「まあ……大半の生き物は性別が変わったりしないしね」

「いやでもほらあの……なんだ、魚とかで変わるヤツもいるだろ」

「あ、いるか」

「そのなんだ、高等生物ではあんまいないぞ」

「無理して難しい言葉使うな、アルマージュ」

ララの方を向き直すオクルス。

「まあ、一般的じゃあないかもだけど、変わるんだよ」

「どういうことですか?」

「どういうことも何も……毎年、茶の樹ってのは芽が伸びるだろ。……伸びるんですよ。
で、そん時に覆いをするかしないかで変わるんだよ」

「覆い?」

「あーそこからかー」

どう説明したものか考えるオクルス。
アルマージュが言う。

「とりあえず寒冷紗(かんれいしゃ)取ってこいよ」

「お、わかった」

オクルスはカップを置いて別の部屋に行くと、先ほど馬から降ろした荷物の一つを持ってきた。
黒い化繊でできた、巨大な巻物。オクルスの身長の半分はゆうに超える幅のそれが、“寒冷紗”というものらしい。

「これが覆いでして。これを茶畑に直掛けするんですよ」

「直掛け?」

「なんで敬語なんだよ。オクルスちょっと来い」

アルマージュの傍へ近づくオクルス。
アルマージュは素早く銃を抜くと、オクルスの頭を撃ち抜いた。ララが思わず悲鳴を上げる。

と、オクルスの姿が消えた。

「え!?」

「ララさんには悪いけど、論より証拠。おーいオクルス」

アルマージュが窓から茶畑に向かって呼びかける。ララは思わず窓へ近づき、外を覗き込んだ。
月明かりに照らされる茶畑の畝間から、ひょっこりオクルスが顔を上げた。

「お前マジでブン殴るからな!!!」

「ほれ、早く直掛けの説明しろ」

「あーララさん、そっから見えると思うけど、こんな風に寒冷紗を掛けるのが直掛け」

オクルスがくるくると寒冷紗の束を茶の畝の上で回す。
寒冷紗は、端から茶の樹の上に広げられていく。

「こうやって端から端まで茶の樹をカバーすることを、覆いを掛けると言います」

「だから何で敬語なんだよ」
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