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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(5)
ギャザリング(7)
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「ツヅキ君、キミにも是非とも聞いておきたいんだけれど」
「何ですか?」
団長がツヅキに問う。
「キミはこの世界に義理はないはずだ。ましてや、この国にもだし、当然オートラグにもね。だからキミが今ここで『やる気がなくなった』って言っても、理解はできる。まあ、元からなかったなら話は別だが……。正直にというのは、この二人を前にして難しいだろうけれど、是非とも聞いておきたい。
まだ、旅をする気はあるかな?」
「ありますよ」
「何故?」
「いや、元の世界へ戻りたいですから」
「ダウト」
「え?」
「それもあるかもだけど、一番じゃあないと思う」
「……そうですね」
「じゃあ、一番は?」
「……デイルさんと同じ、ではいけませんか?」
団長は少し止まった後、デイルの方を向いた。
デイルも団長の方を向いたが、すぐにツヅキに向き直し、笑うような、しかし何か言いたげな表情になる。
団長はそれを見届けて笑うと、ツヅキに言った。
「わかりました。ではデイルさんと同じく、これ以上は聞かないでおきましょう。
あ、メイさん。ツヅキ君の心は察しないように」
「えっと……」
「その方が全て丸く収まるのです。いいですね?」
「……わかりました」
メイを抑える団長。
ツヅキが口を開く。
「団長、俺からもいいですか?」
「いいですよ。どうぞ」
「団長は、何故ここまでしてくれるのですか?」
「デイルさんとお二人に、ですか? 確かに、旅団メンバーの派遣、皆さんの保護、それも茶園の領域内への移動もと、どだい費用はかかっていますね。
答えは簡単です。ペイルンオーリン家には、それだけのお返しを喜んで支払える、借りがあるのです」
「……なるほど」
「もしツヅキ君が返したいほど恩を感じてくれているのなら、いつでも倍返ししてくださって結構ですよ。良ければ入団をお願いしたいぐらいです。ゼルテーネが入団してくれるのなら、こちらとしては有難い限りですから」
「考えておきます、元の世界に帰れなければ」
団長は軽く頷くと立ち上がる。
「さて、では会議はこの辺りで。下の階へ行って、商館隣の倉庫へ向かってください。
そこにドクター……いえ、『おちゃはかせ』と呼ばれている人物がいます。ヒゲの似合うナイスガイなので、すぐにわかると思います。その人物に、私に言われて来た旨をお伝えいただければ」
◇◇◇
三人が出ていった後、団長は玉露の二煎目を淹れていた。
そして先ほどの自分の質問に対し、ツヅキが答えた意味を思って、笑った。
ツヅキはああ答えれば、それ以上聞かれずに済むと思ったのだろう。
言葉自体がどういう意味だったか、本人の中では何か辻褄が合う説明ができているのだろうが、それは当たっていないに違いない。
当たっていたなら、そうは答えていないはずだからだ。
デイルの時に話を切り上げたのは、あのタイミングでメイがデイルの心を読んでいたからだ。
デイルが何故オートラグを裏切ってまでこのような行いをするのか、答えは一つしかない。メイのためだ。
心を読まなくても察せることだが、心を読んだメイにとっては実際に話されるよりも、そのことがしっかり伝わったに違いない。
なので、そういう理由で会話を切り上げたことがツヅキにもわかっていれば、同じ話法を選択するはずはないのだ。
でも……と団長は思い、またも笑う。普段から団員たちに「ニヤけすぎですよ」と言われる団長だったが、今日は確かに、と自覚した。
ツヅキ君のその返しを聞いた時のメイちゃんの反応、面白かったな。
しかも、それを自分の能力で再確認しようとするところが尚更面白い。
心なしか、そんなことを考えながら飲む二煎目の玉露は、一煎目よりも旨味が強いように感じられた。
「何ですか?」
団長がツヅキに問う。
「キミはこの世界に義理はないはずだ。ましてや、この国にもだし、当然オートラグにもね。だからキミが今ここで『やる気がなくなった』って言っても、理解はできる。まあ、元からなかったなら話は別だが……。正直にというのは、この二人を前にして難しいだろうけれど、是非とも聞いておきたい。
まだ、旅をする気はあるかな?」
「ありますよ」
「何故?」
「いや、元の世界へ戻りたいですから」
「ダウト」
「え?」
「それもあるかもだけど、一番じゃあないと思う」
「……そうですね」
「じゃあ、一番は?」
「……デイルさんと同じ、ではいけませんか?」
団長は少し止まった後、デイルの方を向いた。
デイルも団長の方を向いたが、すぐにツヅキに向き直し、笑うような、しかし何か言いたげな表情になる。
団長はそれを見届けて笑うと、ツヅキに言った。
「わかりました。ではデイルさんと同じく、これ以上は聞かないでおきましょう。
あ、メイさん。ツヅキ君の心は察しないように」
「えっと……」
「その方が全て丸く収まるのです。いいですね?」
「……わかりました」
メイを抑える団長。
ツヅキが口を開く。
「団長、俺からもいいですか?」
「いいですよ。どうぞ」
「団長は、何故ここまでしてくれるのですか?」
「デイルさんとお二人に、ですか? 確かに、旅団メンバーの派遣、皆さんの保護、それも茶園の領域内への移動もと、どだい費用はかかっていますね。
答えは簡単です。ペイルンオーリン家には、それだけのお返しを喜んで支払える、借りがあるのです」
「……なるほど」
「もしツヅキ君が返したいほど恩を感じてくれているのなら、いつでも倍返ししてくださって結構ですよ。良ければ入団をお願いしたいぐらいです。ゼルテーネが入団してくれるのなら、こちらとしては有難い限りですから」
「考えておきます、元の世界に帰れなければ」
団長は軽く頷くと立ち上がる。
「さて、では会議はこの辺りで。下の階へ行って、商館隣の倉庫へ向かってください。
そこにドクター……いえ、『おちゃはかせ』と呼ばれている人物がいます。ヒゲの似合うナイスガイなので、すぐにわかると思います。その人物に、私に言われて来た旨をお伝えいただければ」
◇◇◇
三人が出ていった後、団長は玉露の二煎目を淹れていた。
そして先ほどの自分の質問に対し、ツヅキが答えた意味を思って、笑った。
ツヅキはああ答えれば、それ以上聞かれずに済むと思ったのだろう。
言葉自体がどういう意味だったか、本人の中では何か辻褄が合う説明ができているのだろうが、それは当たっていないに違いない。
当たっていたなら、そうは答えていないはずだからだ。
デイルの時に話を切り上げたのは、あのタイミングでメイがデイルの心を読んでいたからだ。
デイルが何故オートラグを裏切ってまでこのような行いをするのか、答えは一つしかない。メイのためだ。
心を読まなくても察せることだが、心を読んだメイにとっては実際に話されるよりも、そのことがしっかり伝わったに違いない。
なので、そういう理由で会話を切り上げたことがツヅキにもわかっていれば、同じ話法を選択するはずはないのだ。
でも……と団長は思い、またも笑う。普段から団員たちに「ニヤけすぎですよ」と言われる団長だったが、今日は確かに、と自覚した。
ツヅキ君のその返しを聞いた時のメイちゃんの反応、面白かったな。
しかも、それを自分の能力で再確認しようとするところが尚更面白い。
心なしか、そんなことを考えながら飲む二煎目の玉露は、一煎目よりも旨味が強いように感じられた。
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