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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(5)
ギャザリング(6)
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「さて、デイルさん。緊急事態の件ですが」
「ええ、団長。昨夜、ツヅキ君の“再召喚”が決定されました」
「であれば、デイルさんの仕事は今すぐツヅキ君を“消滅”させることでは?」
ツヅキはドキリとする。
もっとも、それを表情には出さなかったが。
「そうですね。ですが私はツヅキ君の味方ですので」
デイルが返す。ツヅキは目線だけを動かしデイルの顔を見る。真っ直ぐに団長を見据えていた。
「なるほど。そして私には、ツヅキ君を“消滅”させるメリットはありません。オートラグとは仲が悪くはないですが、良いとも言えませんし。
ツヅキ君にそこまで肩入れする理由は何ですか? デイルさん」
デイルは少し黙った。ツヅキが窺う。
少しの間、目を伏せ熟考していたデイルだったが、顔を上げ
「あ、いえ大丈夫ですデイルさん。大体わかりました。まあそうだとも思っていましたが」
団長が制止する。横でメイが少し赤くなっているのにツヅキは気づかなかったが、デイルはそれに気づくと、全てを了解した。
「ありがとうございます、団長」
「少し意地悪な質問でしたね」
「いつもですよ、団長」
「これは失礼」
団長はまたクスクス笑うと、机に肘をついて両手を組んだ。
「私と龍騎士団茶舗へのご依頼の一つは、『旅団メンバー最後の一名の派遣』でしたね。まずそれについては既に、下の階で件の者が皆さんに会う用意をして待っているはずです。
また、もう一つの依頼である『旅団の隠匿と保護』ですが、旅立ちまでの皆さんの身については全力でお守りさせていただきます。まあ、オートラグは皆さんがここにいることすら気づけないでしょう。既に欺瞞結界は張り巡らせましたし」
「え。ということは俺たちはしばらく、ここにいることになるんですか?」
「ええ、ツヅキ君が“再召喚”でもいいなら別ですが」
「あ、いや。よろしくお願いします」
「皆さんの茶園も、土壌ごと我々の領域内へ移しました。デイルさん以外は」
「ええ、それで大丈夫です」
メイがデイルの顔を見る。
「私たちと一緒じゃあないの?」
「流石に、私が姿を消すわけにはいかないさ。こう見えてもオートラグの一員でね」
「オートラグ内にはデイルさん以外にも、思考を読める人々が存在します。デイルさんには記憶を一時的に消去した状態で、ここから戻っていただきます」
「お願いします」
「じゃあ、私がここにいることもわからなくなるってことよね?」
「まあそうなるが、大丈夫だ。お前がいなくなって慌てるような私とお母さんじゃあないよ」
メイは複雑そうな顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。
「ええ、団長。昨夜、ツヅキ君の“再召喚”が決定されました」
「であれば、デイルさんの仕事は今すぐツヅキ君を“消滅”させることでは?」
ツヅキはドキリとする。
もっとも、それを表情には出さなかったが。
「そうですね。ですが私はツヅキ君の味方ですので」
デイルが返す。ツヅキは目線だけを動かしデイルの顔を見る。真っ直ぐに団長を見据えていた。
「なるほど。そして私には、ツヅキ君を“消滅”させるメリットはありません。オートラグとは仲が悪くはないですが、良いとも言えませんし。
ツヅキ君にそこまで肩入れする理由は何ですか? デイルさん」
デイルは少し黙った。ツヅキが窺う。
少しの間、目を伏せ熟考していたデイルだったが、顔を上げ
「あ、いえ大丈夫ですデイルさん。大体わかりました。まあそうだとも思っていましたが」
団長が制止する。横でメイが少し赤くなっているのにツヅキは気づかなかったが、デイルはそれに気づくと、全てを了解した。
「ありがとうございます、団長」
「少し意地悪な質問でしたね」
「いつもですよ、団長」
「これは失礼」
団長はまたクスクス笑うと、机に肘をついて両手を組んだ。
「私と龍騎士団茶舗へのご依頼の一つは、『旅団メンバー最後の一名の派遣』でしたね。まずそれについては既に、下の階で件の者が皆さんに会う用意をして待っているはずです。
また、もう一つの依頼である『旅団の隠匿と保護』ですが、旅立ちまでの皆さんの身については全力でお守りさせていただきます。まあ、オートラグは皆さんがここにいることすら気づけないでしょう。既に欺瞞結界は張り巡らせましたし」
「え。ということは俺たちはしばらく、ここにいることになるんですか?」
「ええ、ツヅキ君が“再召喚”でもいいなら別ですが」
「あ、いや。よろしくお願いします」
「皆さんの茶園も、土壌ごと我々の領域内へ移しました。デイルさん以外は」
「ええ、それで大丈夫です」
メイがデイルの顔を見る。
「私たちと一緒じゃあないの?」
「流石に、私が姿を消すわけにはいかないさ。こう見えてもオートラグの一員でね」
「オートラグ内にはデイルさん以外にも、思考を読める人々が存在します。デイルさんには記憶を一時的に消去した状態で、ここから戻っていただきます」
「お願いします」
「じゃあ、私がここにいることもわからなくなるってことよね?」
「まあそうなるが、大丈夫だ。お前がいなくなって慌てるような私とお母さんじゃあないよ」
メイは複雑そうな顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。
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