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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(5)
ギャザリング(4)
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団長室内に入ると、大きな机を前に、若い男性が座っているのが目に入った。
眼鏡をかけたその男性は、書類と本が山積みの机で、何かを書いている。
「団長にご用事ですか?」
「ああ、おられるかな」
「お隣の部屋です」
「左かな、それとも右?」
「どちらでも」
どうやら秘書の男性で、この部屋は前室らしい。ツヅキはその返答を訝しんだ。
メイの方を向くと、メイも同じ意見のようだった。そして、ツヅキ以上に困惑していた。
「ありがとう」
デイルはそう言うと、左の部屋への扉を開けた。すると
「え?」
ツヅキが思わず声を出した。
扉の向こうには、同じ間取りの部屋と、その向こうに自分たちの後ろ姿が見えた。
背後を振り向くと、入って右隣の部屋に繋がっているはずの扉をデイルが開けており、メイが驚いた顔でこちらを見ている。そして、自分が向こうを向いていた。
右隣の部屋からこちらを見ているデイルが笑って言う。
「ほら、入るぞ。ツヅキ君、メイ」
「え? あ、わかりました」
「えっと……どっちに?」
「前だよ。私の向いている方だ」
三人は扉を越えた。目の前の自分たちも扉の向こうへ進む。
デイルが振り向き、扉を閉めた。
困惑するツヅキとメイに、笑い声が届く。二人は声のする方を向いた。
入った部屋は前の部屋と全く同じ光景だったが、大きな机の上、書類と本が無くなっていた。
その机の向こうで、先程の男性が笑っている。
「団長、お待たせしました」
「いえいえデイルさん、時間通りです。こちらこそ二人に謝らないと。申し訳ない、メイさんとツヅキくん。あまりにも二人の反応がそれらしかったので」
「貴方が団長?」
メイが問いかける。
「ええ。龍騎士団茶舗団長の、ロタリオ・ディ・コンティです。よろしく」
「ティウス団長、その名で呼ぶ人は多くないでしょう?」
「その渾名付きで呼ぶのもデイルさん含め、片手で数えられるくらいの人しかいませんよ。大抵は“団長”だけですしね。まあ何はともあれ、おかけになってください」
そう言うと、団長は杖茶杓を取り出し、一振りしてみせた。
団長の机の前に、膝ぐらいの高さの長机と、それを挟んでソファが現れた。
「会議といきましょう。煎茶が良いですか? それとも玉露? 京番茶でも私は、構いませんが」
眼鏡をかけたその男性は、書類と本が山積みの机で、何かを書いている。
「団長にご用事ですか?」
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「どちらでも」
どうやら秘書の男性で、この部屋は前室らしい。ツヅキはその返答を訝しんだ。
メイの方を向くと、メイも同じ意見のようだった。そして、ツヅキ以上に困惑していた。
「ありがとう」
デイルはそう言うと、左の部屋への扉を開けた。すると
「え?」
ツヅキが思わず声を出した。
扉の向こうには、同じ間取りの部屋と、その向こうに自分たちの後ろ姿が見えた。
背後を振り向くと、入って右隣の部屋に繋がっているはずの扉をデイルが開けており、メイが驚いた顔でこちらを見ている。そして、自分が向こうを向いていた。
右隣の部屋からこちらを見ているデイルが笑って言う。
「ほら、入るぞ。ツヅキ君、メイ」
「え? あ、わかりました」
「えっと……どっちに?」
「前だよ。私の向いている方だ」
三人は扉を越えた。目の前の自分たちも扉の向こうへ進む。
デイルが振り向き、扉を閉めた。
困惑するツヅキとメイに、笑い声が届く。二人は声のする方を向いた。
入った部屋は前の部屋と全く同じ光景だったが、大きな机の上、書類と本が無くなっていた。
その机の向こうで、先程の男性が笑っている。
「団長、お待たせしました」
「いえいえデイルさん、時間通りです。こちらこそ二人に謝らないと。申し訳ない、メイさんとツヅキくん。あまりにも二人の反応がそれらしかったので」
「貴方が団長?」
メイが問いかける。
「ええ。龍騎士団茶舗団長の、ロタリオ・ディ・コンティです。よろしく」
「ティウス団長、その名で呼ぶ人は多くないでしょう?」
「その渾名付きで呼ぶのもデイルさん含め、片手で数えられるくらいの人しかいませんよ。大抵は“団長”だけですしね。まあ何はともあれ、おかけになってください」
そう言うと、団長は杖茶杓を取り出し、一振りしてみせた。
団長の机の前に、膝ぐらいの高さの長机と、それを挟んでソファが現れた。
「会議といきましょう。煎茶が良いですか? それとも玉露? 京番茶でも私は、構いませんが」
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