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南山城国(4)

ギャザリング(2)

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「唐笠天狗殿! 久方ぶりですな」

童仙が見上げ、声をかける。
天狗殿は、屋敷の屋根に今にもかからんとする松の枝に座っていた。
笠をクイと上げたその下の顔は、如何にも悪戯好きそうな少年のそれだった。

「童仙殿。その呼び方は止めていただけまいか? 僕にも遠藤二十という歴とした名前があるのだからね」

「貴殿の振る舞い故の呼び名にござる」

遠藤は、ひらりと二人の前に降り立った。

「その服装は……“丹の国”の物との折衷ですか?」

「“丹の国”?……ああ。その通り、テラ・ドス・ヴェルメロスの物だよ」

よく見れば確かに何か、この国には似つかわしくない服装だった。
カオルには、マントを翻すその姿は、歴史の教科書にある南蛮由来の服装のようにも見えた。

「で、コレが今回の“まれびと”殿かい?」

「ええ」

「コレって……」

ちょっとムカつくカオル。

「ああ、失礼。……ふーん、なかなかビューティフルなお嬢さんじゃあないか」

「ビュ、ビューティフルって……!」

「びゅ……何と仰いましたか天狗殿」

「ああ、別嬪って意味さ。いや、これでも通じないか。お美しい、だ」

「成程。それは間違いない」

「道仙さんもそう思ってたんですか!?」

「ええ、おかしいですか?」

「いえ、何もおかしくないです」

遠藤は急に吹き出す。

「いやあ、面白いお嬢さんだ」

「……遠藤さんって、不思議な方ですね」

「真っ向から言われると照れるね」

「この国にしては現代人っぽくありませんか?」

言い終わってから、カオルは通じるかなと訝しんだ。
だが、遠藤は高笑いしてから答えた。

「そうだね、確かに。僕は現代人っぽいね」

カオルはその反応を見て、決めた。

「決めました、童仙さん。この人を二人目の旅の道連れにします」

「え、本気ですかカオル殿」

「ええ」

「ま、まあ……天狗殿さえ良ければ」

遠藤はにやにやしていた。

「計画通りですか?」

カオルが問いかける。

「そうだね、半分は計画通りだ」

「残りの半分は?」

「僕が一人目じゃあなかったことかな。一人目は童仙殿かい?」

「残念でしたね」

「まあ、童仙なら相手に不足はなしさ」

「天狗殿。我々はこれから同じ旅の仲間ですから……」

「もちろんだよ。仲良くしよう」

遠藤が笠を外す。ふわりとしたメンズショートボブで、カオルは思わず女の子らしさを感じてしまった。
遠藤はそのまま、童仙の手を取ると甲に口づけをした。
童仙は思わず手を引っ込める。

「なんですか!? 天狗殿!」

「仲良くのご挨拶さ。ね、カオルちゃん?」
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