29 / 271
United Japanese tea varieties of Iratsuko(4)
ギャザリング(2)
しおりを挟む
「よ、よろしくお願いします」
「それで? フランシス」
「何だ」
「この子には、アレは渡したのか」
「アレ?」
ムサシは会話の途中だったが、通りかかったボーイに指を鳴らした。
「なあ、この娘がトイレに行きたいってさ」
右隣の女性は、怪訝な顔をする。別に行きたくもないらしい。ムサシがその女性に、耳打ちをする。
女性はそれを聞くと、喜んでボーイについていった。
「とびきりデカいのを待ってな!」
ムサシが二人の背中に呼びかける。
アサヒはジュディの方を向く。ジュディは優しく微笑んだ。
「彼女がコレから頭にぶち込まれるのに、同じアレを使うだろ?」
「単刀直入に言ってもらいたいね」
「おいおい、これは別に駆け引きじゃあないぜ。その子に気を使って隠語を使ってんだ」
「……いや、まだ支給されてない」
「なるほど、じゃあ俺がいきなりぶち込まれる心配もないってわけだ」
「もう話は済んだでしょ、契約成立でね。フランシス、帰りましょう」
ジュディが話を切り上げようとする。アサヒも少しホッとした。
「ああ、そうだな。悪いなムサシ、お前との会話は本当に楽しいんだが」
「ああ、俺も本当に残念だ。見送りをつけようか」
「いや、必要ない」
「飲み代は心配すんな、コイツから払っとく」
ムサシがクリアプレートをヒラヒラと掲げる。
◇◇◇
三人は店の外の車に乗り込み、離陸した。
「アサヒ、悪いな。まあ大人の世界っちゃあ大人の世界なんだが」
フランシスがアサヒの方を向き、謝る。
「私からも謝っておくわ、ごめんねアサヒ」
「いえ……」
ジュディは謝りつつも、実はアサヒを連れていくことに関しては、フランシス以上には反対していなかった。
このクソな世界には、どちらにせよある程度慣れていってもらった方が良い。
それに、アサヒは割と既に慣れているはずだ。
「まあとにかく、アイツとも旅をすることになる」
フランシスが会話を続ける。
「アサヒには慣れておいてもらわなくっちゃあな」
「そうね、色んな意味で」
「アンナさんは、何故あの人を旅団に入れるように言ったんですか?」
「ああ、やっぱそう思うよな。アイツは元々は、特捜6課のメンバーだったんだよ」
「そうなんですか?」
「驚きだろ。今では、判明している限りではギリギリ合法ラインで、フリーランスしてるみたいだがね」
アサヒは、さっきまで自分がいた店を振り返った。
裏路地の不健康そうな煙に、店の紫のネオンが煌めいていた。
「それで? フランシス」
「何だ」
「この子には、アレは渡したのか」
「アレ?」
ムサシは会話の途中だったが、通りかかったボーイに指を鳴らした。
「なあ、この娘がトイレに行きたいってさ」
右隣の女性は、怪訝な顔をする。別に行きたくもないらしい。ムサシがその女性に、耳打ちをする。
女性はそれを聞くと、喜んでボーイについていった。
「とびきりデカいのを待ってな!」
ムサシが二人の背中に呼びかける。
アサヒはジュディの方を向く。ジュディは優しく微笑んだ。
「彼女がコレから頭にぶち込まれるのに、同じアレを使うだろ?」
「単刀直入に言ってもらいたいね」
「おいおい、これは別に駆け引きじゃあないぜ。その子に気を使って隠語を使ってんだ」
「……いや、まだ支給されてない」
「なるほど、じゃあ俺がいきなりぶち込まれる心配もないってわけだ」
「もう話は済んだでしょ、契約成立でね。フランシス、帰りましょう」
ジュディが話を切り上げようとする。アサヒも少しホッとした。
「ああ、そうだな。悪いなムサシ、お前との会話は本当に楽しいんだが」
「ああ、俺も本当に残念だ。見送りをつけようか」
「いや、必要ない」
「飲み代は心配すんな、コイツから払っとく」
ムサシがクリアプレートをヒラヒラと掲げる。
◇◇◇
三人は店の外の車に乗り込み、離陸した。
「アサヒ、悪いな。まあ大人の世界っちゃあ大人の世界なんだが」
フランシスがアサヒの方を向き、謝る。
「私からも謝っておくわ、ごめんねアサヒ」
「いえ……」
ジュディは謝りつつも、実はアサヒを連れていくことに関しては、フランシス以上には反対していなかった。
このクソな世界には、どちらにせよある程度慣れていってもらった方が良い。
それに、アサヒは割と既に慣れているはずだ。
「まあとにかく、アイツとも旅をすることになる」
フランシスが会話を続ける。
「アサヒには慣れておいてもらわなくっちゃあな」
「そうね、色んな意味で」
「アンナさんは、何故あの人を旅団に入れるように言ったんですか?」
「ああ、やっぱそう思うよな。アイツは元々は、特捜6課のメンバーだったんだよ」
「そうなんですか?」
「驚きだろ。今では、判明している限りではギリギリ合法ラインで、フリーランスしてるみたいだがね」
アサヒは、さっきまで自分がいた店を振り返った。
裏路地の不健康そうな煙に、店の紫のネオンが煌めいていた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
私、幸せじゃないから離婚しまーす。…え? 本当の娘だと思っているから我慢して? お義母さま、ボケたのですか? 私たち元から他人です!
天田れおぽん
恋愛
ある日、ふと幸せじゃないと気付いてしまったメリー・トレンドア伯爵夫人は、実家であるコンサバティ侯爵家に侍女キャメロンを連れて帰ってしまう。
焦った夫は実家に迎えに行くが、事情を知った両親に追い返されて離婚が成立してしまう。
一方、コンサバティ侯爵家を継ぐ予定であった弟夫婦は、メリーの扱いを間違えて追い出されてしまう。
コンサバティ侯爵家を継ぐことになったメリーを元夫と弟夫婦が結託して邪魔しようとするも、侍女キャメロンが立ちふさがる。
メリーを守ろうとしたキャメロンは呪いが解けてTS。
男になったキャメロンとメリーは結婚してコンサバティ侯爵家を継ぐことになる。
トレンドア伯爵家は爵位を取り上げられて破滅。
弟夫婦はコンサバティ侯爵家を追放されてしまう。
※変な話です。(笑)
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる