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シュロッス・イン・デル・ゾーネ(4)

ギャザリング(1)

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ツヅキは、射撃訓練を行っていた。
デル・ゾーネ近郊の森の中、滑らかな曲線と材質の人型に、銃弾を撃ち込む。

手にしている銃は、弾倉こそリボルバーシリンダーだったが、全体の形状はトカレフに近い奇妙なものだった。
銃身とシリンダーには、青緑色の紋様が浮き出ている。


◇◇◇


「急須? 要らねえよ、そんなもん」

口頭試問後、最初の“仕事”が急須の受け取りとは、ツヅキは思わなかった。

「急須と言っても、特別な急須よ。この“茶杓”と一緒でね」

メイは“杖茶杓”を振りながら言う。

「もうすぐ、ウィーが持ってくるはずだわ」

言い終わったと同時に、ウィーが扉を開けて入ってきた。
できたメイドだな、とツヅキは思う。
ウィーは、左手に黒いアタッシュケースを持っていた。

「お待たせ……しましたか? してないですよねっ」

ウィーはアタッシュケースを両手持ちすると、メイに近づく。

「お嬢さま、開錠お願いしまーす」

はいはい、とメイはアタッシュケースに手をかざし、何やら呟く。
黒いアタッシュケースの側面に、青緑色の紋様が浮かび上がった。
野球のボールみたいなマークだな、とツヅキは思った。

カチリと小気味いい音がアタッシュケースから響く。

「では、ツヅキ殿へ」

メイは大法官ヴァーシュの口調を真似て、恭しくツヅキの方へ手を向けた。
ツヅキもなんとなく応えた。

「……それでは、受け取りましょう」

「急須をどうぞ」

“心中お察し”してのメイの一言。
それには顔をわざとらしく歪めて応えるツヅキ。

ツヅキがアタッシュケースを開くと、黒い急須がそこにはあった。
黒く重厚感のある、高級さを備えた品だったが、それ以外はなんということはない普通の急須だった。

ツヅキはメイとウィーを見る。二人とも『どうしました? 早く受け取ってください』の笑顔だ。
急須を取る。

「……えーっと。ありがとう、でいいのかな」

「銃として使ってみて」

メイが言う。急須を銃として使う?

「どうすんだ?」

「どうするも何も、そう思うのよ」

「……」

思ってみる、と

急須は滑らかに変形し、銃の形になった。


◇◇◇


その銃こそが、今ここで射撃訓練を行っている銃だった。
銃弾は、メイから渡された物がたんまりとある。
「とりあえず、百発百中になるまで撃ち続けて」と言われ数日、かなり命中率は上がったのではないかと、ツヅキも自負心が生まれつつあった。

それに結構、ストレス解消だ。

「ストレス解消、ご苦労さま」

後ろから、メイが声をかけてきた。

「だいぶ、上手くなったようね。じゃあ次の段階、仲間探しよ」
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