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南山城国(3)
烏渡し
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一通り様々な説明を聞き、朝食を食べ、閉じられた襖の前に今、カオルと童仙は正座していた。
襖の向こうには南山城国の主、月野ヶ瀬夢絃がいるはずだった。
これより、夢絃から“まれびと”に対し、“筒”『烏渡し』の譲渡が行われるという。
二人はその譲渡に先立ち、『烏渡し』の清めが終わるのを、襖の前で待っていたのだった。
「入ってよい」
中から、夢絃の声が聞こえた。
「失礼つかまつる」
答えて、童仙が襖を開ける。
夢絃は二人に背を向け、正座をしている。
深呼吸をして背を伸ばし直すと、夢絃は二人の方を向いた。
「入られよ、まれびと殿」
「……失礼します」
こんな時、どのようにして入ったらいいかなど、カオルにはわからなかった。
とりあえず、元の世界での茶道部や剣道部はどんな感じだったっけ、と考えていたが、どうにもわからないので普通に入った。
夢絃の前まで行くと、右手で床を指し示されたので、そこに正座した。
夢絃の前には小さな台の上に、白い布を被せられた何かがあった。
ちょうどそれを挟んで、カオルと夢絃は対峙する格好となった。カオルの左隣に童仙が座る。
「まずはお初にお目にかかり申す。そしてようこそ、“まれびと”カオル殿」
「……初めまして。えーっと、月野ヶ瀬、さん?」
「夢絃でよい。長いのでな。
そして何よりもまず最初に、儂からは謝らせていただく。誠に申し訳ござらぬ」
「えっ、どうしてですか?」
「わけのわからぬ役回りを、わけのわからぬ土地と者等の間で勤めねばならぬ。心中お察しいたす」
「あーまあ、そうですね」
「しかし、やってもらうより他はないのだが喃」
そう言い、夢絃は自らの右脇に置いていた刀を少し離れた位置に置き直した。対面のカオルに、より見せつけるように。
「女人にこのような責務を預けねばならぬこと、重ねて心苦しくはある」
この人は言ってることと動作が分離してるな、とカオルは思った。めっちゃサイコパスやん。
「これよりそなたに責務と共に預ける『烏渡し』が、そなたとそなたの今後を守らんことを願っている」
「よろしくお願いします」
指をついて礼をする、童仙に事前に言われた通りに。
『烏渡し』にかかっている白い布が外される。実は結構、カオルはこの瞬間を楽しみにしていた。
襖の向こうには南山城国の主、月野ヶ瀬夢絃がいるはずだった。
これより、夢絃から“まれびと”に対し、“筒”『烏渡し』の譲渡が行われるという。
二人はその譲渡に先立ち、『烏渡し』の清めが終わるのを、襖の前で待っていたのだった。
「入ってよい」
中から、夢絃の声が聞こえた。
「失礼つかまつる」
答えて、童仙が襖を開ける。
夢絃は二人に背を向け、正座をしている。
深呼吸をして背を伸ばし直すと、夢絃は二人の方を向いた。
「入られよ、まれびと殿」
「……失礼します」
こんな時、どのようにして入ったらいいかなど、カオルにはわからなかった。
とりあえず、元の世界での茶道部や剣道部はどんな感じだったっけ、と考えていたが、どうにもわからないので普通に入った。
夢絃の前まで行くと、右手で床を指し示されたので、そこに正座した。
夢絃の前には小さな台の上に、白い布を被せられた何かがあった。
ちょうどそれを挟んで、カオルと夢絃は対峙する格好となった。カオルの左隣に童仙が座る。
「まずはお初にお目にかかり申す。そしてようこそ、“まれびと”カオル殿」
「……初めまして。えーっと、月野ヶ瀬、さん?」
「夢絃でよい。長いのでな。
そして何よりもまず最初に、儂からは謝らせていただく。誠に申し訳ござらぬ」
「えっ、どうしてですか?」
「わけのわからぬ役回りを、わけのわからぬ土地と者等の間で勤めねばならぬ。心中お察しいたす」
「あーまあ、そうですね」
「しかし、やってもらうより他はないのだが喃」
そう言い、夢絃は自らの右脇に置いていた刀を少し離れた位置に置き直した。対面のカオルに、より見せつけるように。
「女人にこのような責務を預けねばならぬこと、重ねて心苦しくはある」
この人は言ってることと動作が分離してるな、とカオルは思った。めっちゃサイコパスやん。
「これよりそなたに責務と共に預ける『烏渡し』が、そなたとそなたの今後を守らんことを願っている」
「よろしくお願いします」
指をついて礼をする、童仙に事前に言われた通りに。
『烏渡し』にかかっている白い布が外される。実は結構、カオルはこの瞬間を楽しみにしていた。
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