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バクエット・ド・パクス(2)

私をみなみやましろへ連れてって

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「あのー、もしもーし」

「フガっ!」

20代後半女子の寝起き一声目にしては豚度ましましの声で、彼女は起きた。いや起こされた。
彼女の目の前には、10代前半と思しき若さが羨まs……じゃない、女の子が怪訝そうに顔を覗き込んでいた。

「エッ……! 誰っ……?」

「私の台詞なんですが……」

周りを見渡し、そりゃそうだと思い出した。

「あっ……ゴメンゴメン! 南山城国の人だよね? お姉さん道に迷っちゃってさー、人がいるとこまで案内してくんない? “まれびと”って言えばわかるからさー」

「“まれびと”? みなみやま?」

「そうそう! お嬢ちゃんまだ小さいから知らないかもだけど、大丈夫だから! とりあえず人のいるとこまで、ねっ?」

彼女は自分でも不審者すぎるお願いだと思ったが、言葉の勢いで押し倒すことにした。
いざとなればこの程度の小さい女の子などちょちょいのちょいで……

「良いですよ!」

むしろ気圧されるぐらいの快諾。

「や、やったー。ヨロシクね」

昨日打った臀部がまだ痛むことを思い出しながら、目の前の小さな女の子の手を借りて、彼女は立ち上がった。


◇◇◇


彼女はムネがドキドキしていた。
女の子に連れられてしばらく歩くと、真紅の鳥居が印象的な神社にたどり着いた。
鳥居を越え、正面の大きな拝殿へ近づく。

「拝殿の中に本日はたくさん人が集まっていますので……待っていた人が来る日とのことですから」

「そうそう、その待たせてた人が私!」と言いたくなる気持ちを抑えて

「へ、へぇ~」

と彼女は返した。いや、特に隠す必要もないのだが。さっき色々もうペラペラしゃべっちゃったし。

拝殿の扉の前に立った。ドキドキ最高潮。だってこの向こうには私を待ちわびているイケメン勢がいるはずなのだ、と彼女は心の中で思った。多分。

「“ぺルソン・ラー”さま、来られました!」

えっ、ぺるそん? 何?
扉が開く。

大勢の女の子が飛び出してきた。そして飛びついてきた。

「えっ、えっ。うわっ、何?」

人数が人数だったので、半ば後ろに吹っ飛ばされる形で尻もちをつく。二日連続の衝撃。
「ぐあっ」とおっさんっぽいドス声が彼女からは押し出されたが、お構いなしに女の子たちが飛び込んでくる。
そしてせーので叫んだ。黄色い声で

「「「ようこそ、ぺルソン・ラーさま!」」」
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