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アドベント

テラ・ドス・ヴェルメロス

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「おい! ホントにこの塔の上なのかよ!?」

「間違いないって! 俺の計算を信用しろ!」

少年二人が階段を駆け上っていた。
周囲には複雑に絡み合った大小様々な歯車と、所々で蒸気を噴き上げるパイプ。
ここは蒸気機関で稼働する、街一番の巨大さを誇る時計塔の中だった。

外光を取り入れる窓からの光は黄昏色で、既に太陽がかなり傾いていることを示していた。
さらにその光は、時計台を動かしている真鍮のパーツたちに反射して、時計台の中を黄金きらびやかに染め上げている。
もっとも少年たちの目は、それらとは関係なく輝いていた。

「大人たちは“サザンカ広場”に現れるって言ってたぜ!」

「もしそうだとしても、時計塔のてっぺんから“サザンカ広場”まではひとっ飛びさ」

「それもそうだな」

「もうすぐだ!」

時計塔の頂上に到達した彼らに、西日が降り注ぐ。
一瞬、視界が失われた。
手で夕日を遮りながら目を凝らす。

「お」

誰かが、仰向けに寝かされていた。
歳は十代中頃、彼らより少し年長。手を胸の上に重ねて置いているので、二人は生きているのかをまず疑った。

近づいて顔をよく見る。
ショートカットだが、顔立ちからは男なのか女なのかハッキリしなかった。

「生きてるのかな?」

「息はしてるみたいだな。胸、動いてるし」

「触ってみろよ」

「いや、それはマズいって! 女の子かもしれないし」

「違うって、肩だよ」

「あ、はい」

手を伸ばす。と、

「うわっ!」

肩に触れるよう言った方の少年が声を上げた。
思わず触れようとした少年も手を引っ込める。

彼、もしくは彼女が目を開けていた。
目を開け、首を少しだけ傾けて、少年二人の方を見つめていた。

二人、というか三人ともそのまましばらく微動だにしなかったが、肩に触れようとしていた方の少年が、手を身体に近づけていたことの言い訳をするかのように口を開いた。

「よ、ようこそ! ララさん!」
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