カメリア・シネンシス・オブ・キョート

アドベント

シュロッス・イン・デル・ゾーネ

目が覚めて最初に飛び込んできたのは、流れる雲だった。
しばらくは視界の右から左へと、雲が流れるままに任せた。
やがて一つの雲に焦点が移り、それを追う。

雲につられるまま、左へ視野を傾けていくと、竹でできた骨組みがあることに気づいた。
地上2～3mくらいの高さの空中を、格子状に覆っているようだ。

さらに視野を左へ傾けると、樹が視界に入った。
背丈は低いが、葉の生い茂った樹が生け垣のように、視界の上下に伸びている。

彼は今改めて、自分が地面に寝転がっていることを、視覚でもって確認した。

「やっぱりここだったわね」

頭上から声が落ちてきた。
見ると、髪の長い女性が白い指で、右耳に髪の毛をかけ直していた。

「ようこそ、ゼルテーネくん」

彼女は空いている左手を彼に投げた。