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3章 待ちて焦がれる
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「おきゃくさん!」
「いらっしゃいませ!」
チヨとトワがドアを開け放ち、ぴょこぴょこと飛び跳ねながら駆け寄ってきた。「え、え?」渚は思わぬ子どもたちの登場に戸惑っている。
「おい、出てくるなって言っただろが」
「つまんないもん!」
トワが唇を突き出した。チヨはさっさと渚のそばに寄り、「あそぼー!」と声をかけている。
「えっと、この子たちは……」
「それはだな、俺の知り合いの親戚の」
「ゆうれいだよ!」
衝撃発言を大声で叫ぶチヨ。「幽霊?」目を丸くする渚に、トワも走り寄る。改めて二人の着物姿を見て、渚も違和感を覚えたらしい。それでも、あまりに活き活きとした二人の様子に恐怖は感じないようだ。本当だろうかと首を傾げている。
「二人とも、嘘つくんじゃねえよ」この場のフォローに入る彰。
「うそじゃないもん!」ぷっくりと頬を膨らませるチヨ。
「あきらのうそつき!」反対に嘘つき呼ばわりするトワ。嘘をついているのは彰の方だから間違いない。
どちらを信じればいいのか分からずにいる渚。彼女はきょろきょろさせた視線でその姿を捉え、悲鳴を上げた。
「ねー、アイロン入荷してくれましたー?」
胸に鮮血を散らせた女幽霊が、ドアの向こうからひょいと顔をのぞかせていた。
驚きのあまりソファーでのけぞった渚に、気が付いた幽霊が足音もなく駆け寄る。
「なになになに? あなた、今、私見て悲鳴上げたの?」
「ちっ、血が、血が……!」
「あー、そうなのよ。死ぬ時にめっちゃ吐いちゃってさ」
卒倒しそうになる渚。慌てて晴斗が彼女に水の入ったコップを差し出す。なんとかそれを受け取り、くらくらする頭で渚は水を喉に流した。眼前では血まみれのワンピースを来た女が目をきらきらさせている。
「怖い? ねえ、私のこと怖いって思った?」
こくこくと首が折れそうなほどに頷く彼女を見て、幽霊は歓声を上げた。他人に怖がられることを目標としている彼女に、渚の反応は十分だったのだ。
「ありがとー! 見知らぬ女の子!」
血に濡れた女に抱きつかれ、渚は声の限り悲鳴を上げた。
「いらっしゃいませ!」
チヨとトワがドアを開け放ち、ぴょこぴょこと飛び跳ねながら駆け寄ってきた。「え、え?」渚は思わぬ子どもたちの登場に戸惑っている。
「おい、出てくるなって言っただろが」
「つまんないもん!」
トワが唇を突き出した。チヨはさっさと渚のそばに寄り、「あそぼー!」と声をかけている。
「えっと、この子たちは……」
「それはだな、俺の知り合いの親戚の」
「ゆうれいだよ!」
衝撃発言を大声で叫ぶチヨ。「幽霊?」目を丸くする渚に、トワも走り寄る。改めて二人の着物姿を見て、渚も違和感を覚えたらしい。それでも、あまりに活き活きとした二人の様子に恐怖は感じないようだ。本当だろうかと首を傾げている。
「二人とも、嘘つくんじゃねえよ」この場のフォローに入る彰。
「うそじゃないもん!」ぷっくりと頬を膨らませるチヨ。
「あきらのうそつき!」反対に嘘つき呼ばわりするトワ。嘘をついているのは彰の方だから間違いない。
どちらを信じればいいのか分からずにいる渚。彼女はきょろきょろさせた視線でその姿を捉え、悲鳴を上げた。
「ねー、アイロン入荷してくれましたー?」
胸に鮮血を散らせた女幽霊が、ドアの向こうからひょいと顔をのぞかせていた。
驚きのあまりソファーでのけぞった渚に、気が付いた幽霊が足音もなく駆け寄る。
「なになになに? あなた、今、私見て悲鳴上げたの?」
「ちっ、血が、血が……!」
「あー、そうなのよ。死ぬ時にめっちゃ吐いちゃってさ」
卒倒しそうになる渚。慌てて晴斗が彼女に水の入ったコップを差し出す。なんとかそれを受け取り、くらくらする頭で渚は水を喉に流した。眼前では血まみれのワンピースを来た女が目をきらきらさせている。
「怖い? ねえ、私のこと怖いって思った?」
こくこくと首が折れそうなほどに頷く彼女を見て、幽霊は歓声を上げた。他人に怖がられることを目標としている彼女に、渚の反応は十分だったのだ。
「ありがとー! 見知らぬ女の子!」
血に濡れた女に抱きつかれ、渚は声の限り悲鳴を上げた。
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