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第2章
小さな親切大きなお世話
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ハル「お主等、あれを退かしたらここから出て行くのかの?」
『うん。もちろん出て行くよ。』
『そうらね。もちろん出て行くね。』
ハル「そうかそうか。ならば退かしてやろう。」
とりあえず、此奴等を追い払うことが先決である。コーヒー豆の瓶を咥えて入り口と反対側へ持っていく。
『すごい!!あれを動かせるなんて。』
『そうらね。すごいね。あれを動かせるなんて。』
『あそこで遊べるね』
『そうらね。あそこで遊べるね』
ハル「待て待て待て。出ていくと言っておったであろう?」
『カタカタしてみたかったの』
『そうらね。カタカタきてみたかったの』
そう言いながらぴょんぴょんと思いの外すばしこく机の上まで登ってくると、キーボードの数字の上で二度ずつ跳ねる
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すると、驚いたことにロックが解除される。
パソコン画面が今までの花畑の壁紙から青い壁紙に変わりデスクトップには幾つかのファイルが現れる。
『できたね』
『そうらね。できたね。』
ハル「どういう事だ?なぜ、パスワードを?」
『パスワード?』
『そうらね。パスワード?』
ハル「今、カタカタとしたであろう?」
『みんなしてるよ』
『そうらね。みんなしてるよ』
『順番だね』
『そうらね。順番らね』
そう言うと、満足したのかぴょんぴょんとしたに降りていく。
なるほど。皆が押しているボタンを覚えておったのか……それにしてもなんと言う幸運。今のうちにデータをコピーしてしまおうと、入っているデータをざっと覗いていく。どうやら外部回線と繋がっておらずメールやチャットなどのアプリはあるものの、やりとりが残っている様子はない。研究データ以外はもともと入っていないのか、個人情報という事で削除されたのかは分からないがとりあえずUSBを差し込み研究データをコピーする。
それなりに時間もかかりそうではあるし、下の段ボール箱の中身をもう少し調べてみることにして机から降りる。
『助けてもらったら、お礼しないといけないよ。』
『そうらね。助けてもらったら、お礼しないといけないね。』
嫌な予感しかしない。
「礼なら充分だ。早く行け。」
『探し物、手伝ってあげる。』
『そうらね。探し物、手伝ってあげるね。。』
背中を嫌な汗が流れていく・・・・・・ような気がする。
「手伝いなどいらぬ。さっさと」
『これに探し物が入っているんだね。』
『そうらね。これに探し物が入っているんだね。』
我の台詞を遮って2匹は手伝おうと段ボール近づいていく。何を探しておるのか知っておるのか?知らぬであろう。何せ何が出て来るか、儂にだって分からぬのだ。とりあえずとっ散らかる前に気を逸らさねば・・・・・・そう、話だ、話をしよう、話せば分かる、何事も。
ハル「ちょっと待て、小鬼め等。」
1『コオニメラ?』
2『コオニメラ?』
ハル「お主等の事だ。お主等・・・・・・そうだな、最近、どうなのだ?」
会話も思いつかずとりあえず出てきた言葉を口にする。
1『最近どうなのだ?って何?』
2『そうらね。最近どうなのら?って何?』
ハル「そうらね。最近どうなのら?って、何らろうね。」
我まで後に続いてしまった。だいたい“どう”に大して意味はない。これはただの挨拶替わりで、まあまあだよ。などと返すのがエチケットであろう。なんて、小鬼にそんなもの求めてもせんなきこと。。
ハル「そうじゃな。ずっとこんな所におって、ちゃんと食っておるのか?」
1『時々邪気が湧くから食べてるよ。』
2『そうらね。時々邪気が湧くから食べてるね。』
1『でも、前よりずっと少ないの』
2『そうらね。前よりずっと少ないね。』
1『濃くて美味しいのも湧かないよ。』
2『そうらね。濃くて美味しいのも湧かないね。』
どうやら、尾上の邪気は濃くて美味しかったようである。
ハル「お主等、人間は見えるのか?」
1『ニンゲン?ニンゲンって、大鬼様が言ってた邪気を作ってくれるやつ?』
2『そうらね。ニンゲンって、大鬼様が言ってたじゃきを作ってくれるやつらね。』
ハル「そう。それじゃ。」
1『見たことないよ。』
2『そうらね。見たことないよね。』
1『それが見えたら、美味しい邪気がたくさん食べられるようになるんだって。』
1『そうらね。それが見えたら、美味しい邪気がたくさん食べられるようになるんだってね。』
ハル「それも大鬼様が言っておったのか?」
1『うん。一人前だって。』
2『そうらね。一人前らってね。』
1『一人前、なりたいねぇ。』
2『そうらね。なりたいねぇ』
ならんでいい。小鬼のままなら可愛いままだ。
ハル「では、濃くて美味しい邪気が湧いている時に尾上と言う人間も見たことはないか?」
1『オノウエ?知らないよ。』
2『そうらね。オノウエって知らないね。』
で、あろうな。人間が見えないのだから当然か。
ハル「では、もう一つ。その頃、何か変わった事は無かったかの?変わった物を見たとか、不思議な事があったとか。なんでもいいのだが。」
二匹は考えてくれている様子で、こそこそ相談を始める。おでこがくっつきそうなくらい近づいて話し合うハニワは、やはり可愛らしい。
1『餓鬼が来たよ。』
2『そうらね。餓鬼が来たね。』
1『でも、餓鬼じゃ無いかもしれない。』
2『そうらね。餓鬼じゃ無いかも知れないね。』
ハル「はて?面白いの。では、何故、餓鬼だと思ったのだ?」
1『ずっと食べ物を探していたの。』
2『そうらね。ずっと食べ物を探していたの。』
1『ガチすぎて怖かったよ。』
2『そうらね。ガチすぎて怖かったよ。』
1『あれは飢えてたんだよ。』
2『そうらね。あれは飢えてたんだよ。』
二匹の様子が愛らしくて吹き出しそうになる。
ハル「飢えて居たら餓鬼なのか?」
1『この子と同じ位の大きさで必死に食べ物を探していたら、それは餓鬼かも知れないって。』
2『そうらね。この子と同じ位の大きさで必死に食べ物を探していたら、それは餓鬼かもしれないって。』
小鬼等はお互いを指差して言う。
ハル「大鬼様が言ったのか?」
1『そうだよ。危ないから近づいたらダメだって。』
2『そうらね。危ないから近づいたらダメだってね。』
ハル「では何故、餓鬼では無いかもしれないと思うのだ?」
1『餓鬼が手に持った食べ物は、燃えてしまうの。』
2『そうらね。餓鬼が手に持った食べ物は、燃えてしまうんだよ。』
またプチ教師は話し続ける。
1『でも、あの子達は食べ物を食べていたの。』
2『そうらね。あの子達は食べ物を食べていたよね。』
ハル「なるほど。食べていたのに飢えていたのか?」
1『いくら食べても、飢えていたよ。きっと欲しい物が違うんだよ。』
2『そうらね。きっと欲しいものが違うんだよね。』
ハル「それは、これに似ておったか?」
唐草ポシェットからスマホを取り出し、実験用マウスの画像を見せる。
1『あっ。これに似ていたよ。』
2『そうらね。これに似ていたね。』
急に幼子の様な喋り方に戻った♡♡♡♡
ハル「あの子達と言っておったが、何匹かおったのか?」
1『えっとね、ふたつと、ふたつと、ひとつ。』
2『そうらね。ふたつと、ふたつと、ひとつ、らよね。』
ふたつと、ふたつと、ひとつ・・・・・?
ハル「あぁ、五匹か。」
1『ゴヒキって、なに?』
2『そうらね。ゴヒキって何?』
ハル「5匹は5匹。」
1『ゴヒキはゴヒキ。』
2『ゴヒキはゴヒキ』
1『ゴヒキはゴヒキ。ゴヒキはゴヒキ。うふふふふ』
2『ゴヒキはゴヒキ。うふふふふ。』
何がツボにはまったのか、二匹は“五匹は五匹”と連呼しながらきゃっきゃ、きゃっきゃとはしゃぎ出す。まるで園児である。儂がいくらなだめても、聞く耳持たず。まあ仕方ない。此奴等は放って置いてダンボールを見てみようかと気を取り直したその時、部屋の扉が開き上機嫌な煉螺の声が聞こえてくる。
(はっ!!もう帰ってきたのか?!)
話しを聞くのに時間を食ってしまったようだ。パソコンの電源を切り、ケージに戻らねばならない。まあ、此奴等はどうでもいい。どうせペスカには見えないのだ。慌てて椅子を経由し、机に登る。そこで、小鬼等の声が耳に入る。
1『あっ。探し物、手伝わなきゃ。』
2『そうらね。探し物、手伝わなきゃね。』
(なに?!)
1『探し物は一度全部出すのがコツだよ。』
2『そうらね。探し物は一度全部出すのがコツだよね。』
ハル(待てっ!!)
と、思ってもここから声をかければ、我の声はブースの外まで聞こえてしまうであろう。煉螺達はすぐそこまで迫っている。
ハル(どうする?)
とりあえず、パソコンの電源をぶっち切り、机から飛び降りる。その時には既に小鬼め等は肩車でダンボールの淵に手を掛けていた。
ハル(間に合わん!!)
迫る足音と傾く段ボールに思わず目をつぶる。
ーボゴッー
乾いた音と共に段ボールが倒れた事を知らせる微かな風を感じてから、心なしゆっくり目を開くと中身がゴロゴロと転がり出てくる。周りではタペストリーをマントにして駆け回る小鬼が一匹、木彫りの熊に挨拶している小鬼が一匹・・・・・・。ブースの外では2つの足音が加速するのが分かった。仕切りから先に顔を出したのは煉螺。一瞬、目を見開きパソコンに視線を向け、舌先を出して表情を凍らせる。
ハル(しまった!USBか!!)
我がミスを悔いるより早く、駆け込んで来た煉螺は少し強い口調で我の名を呼びながら抱き上げる。そして
煉螺「ちょ、ちょっと、ハルちゃん暴れちゃダメっ。って、うわっ!伊達さん!!」
勝手に台詞を吐きながら、儂をペスカに向かって投げる。
ペスカ「うわっ!ごめん!!今捕まえるから。」
なるほど、逃げろと。心得た。何故か謝り慌てるペスカの横を駆け抜け、ドアの方へ向かって走り出す。が、ドアノブがレバーではない!
ハル(肉球にはレバー!!)
そんな心の叫びを他所に、行く手をドアに阻まれた我はペスカトーレに容易く捕まってしまいそのままブースに連れ戻されたのだった。
『うん。もちろん出て行くよ。』
『そうらね。もちろん出て行くね。』
ハル「そうかそうか。ならば退かしてやろう。」
とりあえず、此奴等を追い払うことが先決である。コーヒー豆の瓶を咥えて入り口と反対側へ持っていく。
『すごい!!あれを動かせるなんて。』
『そうらね。すごいね。あれを動かせるなんて。』
『あそこで遊べるね』
『そうらね。あそこで遊べるね』
ハル「待て待て待て。出ていくと言っておったであろう?」
『カタカタしてみたかったの』
『そうらね。カタカタきてみたかったの』
そう言いながらぴょんぴょんと思いの外すばしこく机の上まで登ってくると、キーボードの数字の上で二度ずつ跳ねる
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すると、驚いたことにロックが解除される。
パソコン画面が今までの花畑の壁紙から青い壁紙に変わりデスクトップには幾つかのファイルが現れる。
『できたね』
『そうらね。できたね。』
ハル「どういう事だ?なぜ、パスワードを?」
『パスワード?』
『そうらね。パスワード?』
ハル「今、カタカタとしたであろう?」
『みんなしてるよ』
『そうらね。みんなしてるよ』
『順番だね』
『そうらね。順番らね』
そう言うと、満足したのかぴょんぴょんとしたに降りていく。
なるほど。皆が押しているボタンを覚えておったのか……それにしてもなんと言う幸運。今のうちにデータをコピーしてしまおうと、入っているデータをざっと覗いていく。どうやら外部回線と繋がっておらずメールやチャットなどのアプリはあるものの、やりとりが残っている様子はない。研究データ以外はもともと入っていないのか、個人情報という事で削除されたのかは分からないがとりあえずUSBを差し込み研究データをコピーする。
それなりに時間もかかりそうではあるし、下の段ボール箱の中身をもう少し調べてみることにして机から降りる。
『助けてもらったら、お礼しないといけないよ。』
『そうらね。助けてもらったら、お礼しないといけないね。』
嫌な予感しかしない。
「礼なら充分だ。早く行け。」
『探し物、手伝ってあげる。』
『そうらね。探し物、手伝ってあげるね。。』
背中を嫌な汗が流れていく・・・・・・ような気がする。
「手伝いなどいらぬ。さっさと」
『これに探し物が入っているんだね。』
『そうらね。これに探し物が入っているんだね。』
我の台詞を遮って2匹は手伝おうと段ボール近づいていく。何を探しておるのか知っておるのか?知らぬであろう。何せ何が出て来るか、儂にだって分からぬのだ。とりあえずとっ散らかる前に気を逸らさねば・・・・・・そう、話だ、話をしよう、話せば分かる、何事も。
ハル「ちょっと待て、小鬼め等。」
1『コオニメラ?』
2『コオニメラ?』
ハル「お主等の事だ。お主等・・・・・・そうだな、最近、どうなのだ?」
会話も思いつかずとりあえず出てきた言葉を口にする。
1『最近どうなのだ?って何?』
2『そうらね。最近どうなのら?って何?』
ハル「そうらね。最近どうなのら?って、何らろうね。」
我まで後に続いてしまった。だいたい“どう”に大して意味はない。これはただの挨拶替わりで、まあまあだよ。などと返すのがエチケットであろう。なんて、小鬼にそんなもの求めてもせんなきこと。。
ハル「そうじゃな。ずっとこんな所におって、ちゃんと食っておるのか?」
1『時々邪気が湧くから食べてるよ。』
2『そうらね。時々邪気が湧くから食べてるね。』
1『でも、前よりずっと少ないの』
2『そうらね。前よりずっと少ないね。』
1『濃くて美味しいのも湧かないよ。』
2『そうらね。濃くて美味しいのも湧かないね。』
どうやら、尾上の邪気は濃くて美味しかったようである。
ハル「お主等、人間は見えるのか?」
1『ニンゲン?ニンゲンって、大鬼様が言ってた邪気を作ってくれるやつ?』
2『そうらね。ニンゲンって、大鬼様が言ってたじゃきを作ってくれるやつらね。』
ハル「そう。それじゃ。」
1『見たことないよ。』
2『そうらね。見たことないよね。』
1『それが見えたら、美味しい邪気がたくさん食べられるようになるんだって。』
1『そうらね。それが見えたら、美味しい邪気がたくさん食べられるようになるんだってね。』
ハル「それも大鬼様が言っておったのか?」
1『うん。一人前だって。』
2『そうらね。一人前らってね。』
1『一人前、なりたいねぇ。』
2『そうらね。なりたいねぇ』
ならんでいい。小鬼のままなら可愛いままだ。
ハル「では、濃くて美味しい邪気が湧いている時に尾上と言う人間も見たことはないか?」
1『オノウエ?知らないよ。』
2『そうらね。オノウエって知らないね。』
で、あろうな。人間が見えないのだから当然か。
ハル「では、もう一つ。その頃、何か変わった事は無かったかの?変わった物を見たとか、不思議な事があったとか。なんでもいいのだが。」
二匹は考えてくれている様子で、こそこそ相談を始める。おでこがくっつきそうなくらい近づいて話し合うハニワは、やはり可愛らしい。
1『餓鬼が来たよ。』
2『そうらね。餓鬼が来たね。』
1『でも、餓鬼じゃ無いかもしれない。』
2『そうらね。餓鬼じゃ無いかも知れないね。』
ハル「はて?面白いの。では、何故、餓鬼だと思ったのだ?」
1『ずっと食べ物を探していたの。』
2『そうらね。ずっと食べ物を探していたの。』
1『ガチすぎて怖かったよ。』
2『そうらね。ガチすぎて怖かったよ。』
1『あれは飢えてたんだよ。』
2『そうらね。あれは飢えてたんだよ。』
二匹の様子が愛らしくて吹き出しそうになる。
ハル「飢えて居たら餓鬼なのか?」
1『この子と同じ位の大きさで必死に食べ物を探していたら、それは餓鬼かも知れないって。』
2『そうらね。この子と同じ位の大きさで必死に食べ物を探していたら、それは餓鬼かもしれないって。』
小鬼等はお互いを指差して言う。
ハル「大鬼様が言ったのか?」
1『そうだよ。危ないから近づいたらダメだって。』
2『そうらね。危ないから近づいたらダメだってね。』
ハル「では何故、餓鬼では無いかもしれないと思うのだ?」
1『餓鬼が手に持った食べ物は、燃えてしまうの。』
2『そうらね。餓鬼が手に持った食べ物は、燃えてしまうんだよ。』
またプチ教師は話し続ける。
1『でも、あの子達は食べ物を食べていたの。』
2『そうらね。あの子達は食べ物を食べていたよね。』
ハル「なるほど。食べていたのに飢えていたのか?」
1『いくら食べても、飢えていたよ。きっと欲しい物が違うんだよ。』
2『そうらね。きっと欲しいものが違うんだよね。』
ハル「それは、これに似ておったか?」
唐草ポシェットからスマホを取り出し、実験用マウスの画像を見せる。
1『あっ。これに似ていたよ。』
2『そうらね。これに似ていたね。』
急に幼子の様な喋り方に戻った♡♡♡♡
ハル「あの子達と言っておったが、何匹かおったのか?」
1『えっとね、ふたつと、ふたつと、ひとつ。』
2『そうらね。ふたつと、ふたつと、ひとつ、らよね。』
ふたつと、ふたつと、ひとつ・・・・・?
ハル「あぁ、五匹か。」
1『ゴヒキって、なに?』
2『そうらね。ゴヒキって何?』
ハル「5匹は5匹。」
1『ゴヒキはゴヒキ。』
2『ゴヒキはゴヒキ』
1『ゴヒキはゴヒキ。ゴヒキはゴヒキ。うふふふふ』
2『ゴヒキはゴヒキ。うふふふふ。』
何がツボにはまったのか、二匹は“五匹は五匹”と連呼しながらきゃっきゃ、きゃっきゃとはしゃぎ出す。まるで園児である。儂がいくらなだめても、聞く耳持たず。まあ仕方ない。此奴等は放って置いてダンボールを見てみようかと気を取り直したその時、部屋の扉が開き上機嫌な煉螺の声が聞こえてくる。
(はっ!!もう帰ってきたのか?!)
話しを聞くのに時間を食ってしまったようだ。パソコンの電源を切り、ケージに戻らねばならない。まあ、此奴等はどうでもいい。どうせペスカには見えないのだ。慌てて椅子を経由し、机に登る。そこで、小鬼等の声が耳に入る。
1『あっ。探し物、手伝わなきゃ。』
2『そうらね。探し物、手伝わなきゃね。』
(なに?!)
1『探し物は一度全部出すのがコツだよ。』
2『そうらね。探し物は一度全部出すのがコツだよね。』
ハル(待てっ!!)
と、思ってもここから声をかければ、我の声はブースの外まで聞こえてしまうであろう。煉螺達はすぐそこまで迫っている。
ハル(どうする?)
とりあえず、パソコンの電源をぶっち切り、机から飛び降りる。その時には既に小鬼め等は肩車でダンボールの淵に手を掛けていた。
ハル(間に合わん!!)
迫る足音と傾く段ボールに思わず目をつぶる。
ーボゴッー
乾いた音と共に段ボールが倒れた事を知らせる微かな風を感じてから、心なしゆっくり目を開くと中身がゴロゴロと転がり出てくる。周りではタペストリーをマントにして駆け回る小鬼が一匹、木彫りの熊に挨拶している小鬼が一匹・・・・・・。ブースの外では2つの足音が加速するのが分かった。仕切りから先に顔を出したのは煉螺。一瞬、目を見開きパソコンに視線を向け、舌先を出して表情を凍らせる。
ハル(しまった!USBか!!)
我がミスを悔いるより早く、駆け込んで来た煉螺は少し強い口調で我の名を呼びながら抱き上げる。そして
煉螺「ちょ、ちょっと、ハルちゃん暴れちゃダメっ。って、うわっ!伊達さん!!」
勝手に台詞を吐きながら、儂をペスカに向かって投げる。
ペスカ「うわっ!ごめん!!今捕まえるから。」
なるほど、逃げろと。心得た。何故か謝り慌てるペスカの横を駆け抜け、ドアの方へ向かって走り出す。が、ドアノブがレバーではない!
ハル(肉球にはレバー!!)
そんな心の叫びを他所に、行く手をドアに阻まれた我はペスカトーレに容易く捕まってしまいそのままブースに連れ戻されたのだった。
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