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アリーナは口の中をなぞられて、ん、と声が漏れる。アリーナの口の中をなぞっていたライの熱が、アリーナの逃げようとした舌をからめとる。
あっという間に思考が奪われて、アリーナは抵抗する力をなくした。
ライの唇が離れても、ふわふわした感覚に包まれている。
とろり、と愛おしそうな視線を向けるライに、好きなように頬を撫でられても、抵抗する力が出てこない。
「アリーナはひどい。」
ライがアリーナの耳元に口を寄せる。
耳元から吹き込まれたライの声に、アリーナはびくりと反応する。
「こんなにかわいい反応をするのに、私の気持ちの十分の一以下の気持ちしか持たないなんてひどい。」
あんなことを言っていたが、ライは十分にアリーナの気持ちは理解しているらしい。
「全部私にください」
アリーナの両方の頬に手を添えたライは、またアリーナの唇に近づいてくる。
が、唇がアリーナに触れる前に、アリーナの耳に話し声が届いて、アリーナは我に返った。
アリーナは普段のアリーナには存在しない反射神経で自分の口を覆う。
アリーナの反応に、ライがぱちくりと目を見開く。
「気が散ってしまいましたね」
まるでライとのキスに夢中になっていたように言われて、アリーナは恥ずかしくて真っ赤になる。
そんなつもりはなかった。だが、確かにライにキスをされると、アリーナの思考は奪われてしまって冷静になれない。
そこまで考えて、アリーナは昨日肝心なことを度忘れしてしまった原因がこれなのではないかと思う。
今もまだ続くふわふわした感覚は、昨日寝るまで完全に抜けなかった感覚と同じで、それがライとのキスが原因だったのだと思い至る。
「何を考えてるんですか」
廊下を通る人間からアリーナを隠すように、アリーナを軽く抱き締めたライが、アリーナの頭の上から問いかける。
「あなたのせいです」
キッとアリーナがライを睨み付ける。
「何がですか」
ライは睨み付けられたにも関わらず楽しそうに笑う。
「あなたがキスなんてするから、ファム公爵のことを度忘れしちゃったんです」
「どういう意味です」
「あなたとキスすると、頭がふわふわしてきちんと考えられなくなるの」
アリーナが必死に訴えているにも関わらず、当のライは嬉しそうに笑う。
「そうですか」
「私は怒ってるんですけど!なに笑ってるのよ」
足音が遠ざかって行くのを聞きながら、ライはアリーナから体を離すと、アリーナの頬をもう一度撫でる。
「嬉しくもなりますよ。私とのキスが気持ちいいって言われてるんですから」
「そんなこと言ってません」
頬を撫でるライの手を離すために掴もうとアリーナが意識を向け片手を動かしたその瞬間をライは見逃さなかった。
アリーナの顎はクイッと捕まれ、もう一方の唇を覆っていた手が振り落とされ無防備になったアリーナの唇にライの唇が重なる。
ライを打とうと上げた手はそのままライの大きな手に押さえられ、指を絡ませられ壁に押し付けられる。
アリーナは下唇を甘噛みされ、少し出来た隙間にライの熱が入り込む。
逃げようとするアリーナの舌を、なだめるようにライの舌がなぞり、ぞわぞわした感覚にアリーナな気をとられた時には、舌が絡めとられていた。口の端から洩れる声が、アリーナ自身が感じている声だなんて思いたくはなかったが、ライの舌に抵抗しようとすればするほど、アリーナの口の中をなぞられて、その声は漏れていく。
ぎゅっとライに握られた手と、壁に押し付けられた体でなければ、アリーナはその姿勢を保っていられそうにもなかった。
その不安な気持ちが自由に動けるもう片方の手をライの体にしがみつかせる。
アリーナがライにしがみついたのに気づいたんだろう、ライの目が嬉しそうに緩まる。当のアリーナは目を伏せていて、その目を見ることはなかったが。
そのライにしがみついていたアリーナの手に力が入らず緩んだのを感じて、流石にライもやりすぎたと、渋々唇を離す。唇が離れた瞬間、ライの唇を目で追うアリーナに、ライの心は喜びに満たされたのだとはアリーナは知らない。
「大丈夫ですか」
アリーナの顔をライが覗き込めば、既に赤らんでいたアリーナの顔がますます赤くなる。
「…だい…丈夫じゃ、ない」
キッと睨みつける表情も、ライを煽るだけだとは、アリーナは知るはずもない。
「アリーナがかわいいから悪いんですよ」
「な…んなの…その理由…。私は…かわいくない」
ふい、とライから顔をそむけるアリーナの耳元にライが近づく。
「昨日の口紅をさした唇もいいですが、口紅のない唇もかわいらしくていいですね。口紅が取れる心配をしなくて、仕事場のキス向きです」
アリーナのむっとした表情がライの方に少しだけ向く。
「化粧してないのは…そのためじゃないです」
「ええ。わかっていますよ。だけど、私にとってもアリーナにとっても、口紅がないのは幸いです。昨日はすっかりアリーナの口紅が取れてしまってましたからね」
今更な事実の公表に、アリーナは愕然とする。
つまり、昨日アリーナは、口紅が取れた状態で両親たちの前に現れたことになる。
つまり、昨日アリーナとライが完全に口紅が取れるようなことをしたと言うことがバレバレだったということだ。
あの両親の狂喜乱舞は、それも見てのことだったのだと、改めて理解した。
あっという間に思考が奪われて、アリーナは抵抗する力をなくした。
ライの唇が離れても、ふわふわした感覚に包まれている。
とろり、と愛おしそうな視線を向けるライに、好きなように頬を撫でられても、抵抗する力が出てこない。
「アリーナはひどい。」
ライがアリーナの耳元に口を寄せる。
耳元から吹き込まれたライの声に、アリーナはびくりと反応する。
「こんなにかわいい反応をするのに、私の気持ちの十分の一以下の気持ちしか持たないなんてひどい。」
あんなことを言っていたが、ライは十分にアリーナの気持ちは理解しているらしい。
「全部私にください」
アリーナの両方の頬に手を添えたライは、またアリーナの唇に近づいてくる。
が、唇がアリーナに触れる前に、アリーナの耳に話し声が届いて、アリーナは我に返った。
アリーナは普段のアリーナには存在しない反射神経で自分の口を覆う。
アリーナの反応に、ライがぱちくりと目を見開く。
「気が散ってしまいましたね」
まるでライとのキスに夢中になっていたように言われて、アリーナは恥ずかしくて真っ赤になる。
そんなつもりはなかった。だが、確かにライにキスをされると、アリーナの思考は奪われてしまって冷静になれない。
そこまで考えて、アリーナは昨日肝心なことを度忘れしてしまった原因がこれなのではないかと思う。
今もまだ続くふわふわした感覚は、昨日寝るまで完全に抜けなかった感覚と同じで、それがライとのキスが原因だったのだと思い至る。
「何を考えてるんですか」
廊下を通る人間からアリーナを隠すように、アリーナを軽く抱き締めたライが、アリーナの頭の上から問いかける。
「あなたのせいです」
キッとアリーナがライを睨み付ける。
「何がですか」
ライは睨み付けられたにも関わらず楽しそうに笑う。
「あなたがキスなんてするから、ファム公爵のことを度忘れしちゃったんです」
「どういう意味です」
「あなたとキスすると、頭がふわふわしてきちんと考えられなくなるの」
アリーナが必死に訴えているにも関わらず、当のライは嬉しそうに笑う。
「そうですか」
「私は怒ってるんですけど!なに笑ってるのよ」
足音が遠ざかって行くのを聞きながら、ライはアリーナから体を離すと、アリーナの頬をもう一度撫でる。
「嬉しくもなりますよ。私とのキスが気持ちいいって言われてるんですから」
「そんなこと言ってません」
頬を撫でるライの手を離すために掴もうとアリーナが意識を向け片手を動かしたその瞬間をライは見逃さなかった。
アリーナの顎はクイッと捕まれ、もう一方の唇を覆っていた手が振り落とされ無防備になったアリーナの唇にライの唇が重なる。
ライを打とうと上げた手はそのままライの大きな手に押さえられ、指を絡ませられ壁に押し付けられる。
アリーナは下唇を甘噛みされ、少し出来た隙間にライの熱が入り込む。
逃げようとするアリーナの舌を、なだめるようにライの舌がなぞり、ぞわぞわした感覚にアリーナな気をとられた時には、舌が絡めとられていた。口の端から洩れる声が、アリーナ自身が感じている声だなんて思いたくはなかったが、ライの舌に抵抗しようとすればするほど、アリーナの口の中をなぞられて、その声は漏れていく。
ぎゅっとライに握られた手と、壁に押し付けられた体でなければ、アリーナはその姿勢を保っていられそうにもなかった。
その不安な気持ちが自由に動けるもう片方の手をライの体にしがみつかせる。
アリーナがライにしがみついたのに気づいたんだろう、ライの目が嬉しそうに緩まる。当のアリーナは目を伏せていて、その目を見ることはなかったが。
そのライにしがみついていたアリーナの手に力が入らず緩んだのを感じて、流石にライもやりすぎたと、渋々唇を離す。唇が離れた瞬間、ライの唇を目で追うアリーナに、ライの心は喜びに満たされたのだとはアリーナは知らない。
「大丈夫ですか」
アリーナの顔をライが覗き込めば、既に赤らんでいたアリーナの顔がますます赤くなる。
「…だい…丈夫じゃ、ない」
キッと睨みつける表情も、ライを煽るだけだとは、アリーナは知るはずもない。
「アリーナがかわいいから悪いんですよ」
「な…んなの…その理由…。私は…かわいくない」
ふい、とライから顔をそむけるアリーナの耳元にライが近づく。
「昨日の口紅をさした唇もいいですが、口紅のない唇もかわいらしくていいですね。口紅が取れる心配をしなくて、仕事場のキス向きです」
アリーナのむっとした表情がライの方に少しだけ向く。
「化粧してないのは…そのためじゃないです」
「ええ。わかっていますよ。だけど、私にとってもアリーナにとっても、口紅がないのは幸いです。昨日はすっかりアリーナの口紅が取れてしまってましたからね」
今更な事実の公表に、アリーナは愕然とする。
つまり、昨日アリーナは、口紅が取れた状態で両親たちの前に現れたことになる。
つまり、昨日アリーナとライが完全に口紅が取れるようなことをしたと言うことがバレバレだったということだ。
あの両親の狂喜乱舞は、それも見てのことだったのだと、改めて理解した。
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