2 / 11
2
しおりを挟む
「い、生きていたのね、ルーナ!」
我に返ったカレイナがルーナの手を取ろうとしたそのときだった。
パシン、とその手がはたかれ、会場がざわめく。
「な、何をするんだ!」
アーノルドが憮然とした表情で進み出る。アーノルドが睨み付けたのは、正体不明の美丈夫の方だった。カレイナの手を振り払ったのは、美丈夫だったからだ。
「汚ならしいその手で、我が番に手を触れないで欲しいからね」
ざわめきが更に広がる。
『汚ならしい手』という言葉と、『番』という聞きなれない言葉がざわめきの主な理由だった。
「汚ならしいとはなんだ! 我が婚約者を侮辱するとは、許せん!」
アーノルドが強い口調で反論する。
「本当のことを言って、何が悪い?」
美丈夫の表情は冷たくアーノルドを見下ろしている。
「何だと?!」
アーノルドが美丈夫に掴みかかろうとした瞬間、アーノルドの体が後ろに吹き飛ぶ。ガシャンガシャン、と皿が床に落ちて割れる。テーブルの足にアーノルドがぶつかったせいだった。
「何をするの!?」
カレイナがアーノルドにすがり付く。アーノルドは美丈夫をにらみながら立ち上がる。
「何をするんだ!」
アーノルドの表情は、屈辱で歪んでいる。会場にいる人々が見たこともない表情だった。
「汚い手で触れるな。穢れる」
美丈夫は表情を変えずに冷たい目を向けたまま告げた。
「我々の婚約パーティーに突然現れて、パーティーを壊したあげく、我々を汚いなどと言う権利がどこにあるんだ!」
アーノルドは興奮して顔を真っ赤にしている。
「罪を犯した人間を汚いと言って何が悪い」
『罪』という言葉に、また会場がざわめいた。
「罪など犯していない!」
「変な言いがかりをつけるなんてひどいわ!」
アーノルドは激昂し、カレイナが泣き出す。
先程までお祝いムードに溢れていた会場は、一変していた。
「一体、どうしたんだ」
屋敷の奥にある応接間で王族と歓談していたカレイナとアーノルドのそれぞれの両親が、騒ぎを聞き付けて駆け寄ってくる。
その後ろには、皇太子と第3王女の姿もあった。
「ルーナ」
どちらの両親もが、驚愕で目を見開く。4人ともルーナの顔をよく知っているからだ。
「ルーナ? 亡くなったルーナ・メソフィスのことか?」
ルーナの顔までは覚えていない皇太子が、首をかしげる。
「間違いないわ! ルーナ、ルーナなのね!」
感激した表情の第3王女が、ルーナに抱きつく。
第3王女は、ルーナの親友であり、カレイナの学友でもあったためこの場にいるようなものだった。
「ヴィアンカ、久しぶりね」
ルーナも懐かしそうに頬を緩める。
今までとは違って、美丈夫もにこやかに二人を見ている。
「ル、ルーナ……どうして……」
メソフィス伯爵が、ようやく声を絞り出す。
「魔の森に置いてきぼりにして殺したはずなのに、生きているのが不思議か」
美丈夫の『魔の森』という言葉と『殺した』という言葉に会場が更に騒然となる。
我に返ったカレイナがルーナの手を取ろうとしたそのときだった。
パシン、とその手がはたかれ、会場がざわめく。
「な、何をするんだ!」
アーノルドが憮然とした表情で進み出る。アーノルドが睨み付けたのは、正体不明の美丈夫の方だった。カレイナの手を振り払ったのは、美丈夫だったからだ。
「汚ならしいその手で、我が番に手を触れないで欲しいからね」
ざわめきが更に広がる。
『汚ならしい手』という言葉と、『番』という聞きなれない言葉がざわめきの主な理由だった。
「汚ならしいとはなんだ! 我が婚約者を侮辱するとは、許せん!」
アーノルドが強い口調で反論する。
「本当のことを言って、何が悪い?」
美丈夫の表情は冷たくアーノルドを見下ろしている。
「何だと?!」
アーノルドが美丈夫に掴みかかろうとした瞬間、アーノルドの体が後ろに吹き飛ぶ。ガシャンガシャン、と皿が床に落ちて割れる。テーブルの足にアーノルドがぶつかったせいだった。
「何をするの!?」
カレイナがアーノルドにすがり付く。アーノルドは美丈夫をにらみながら立ち上がる。
「何をするんだ!」
アーノルドの表情は、屈辱で歪んでいる。会場にいる人々が見たこともない表情だった。
「汚い手で触れるな。穢れる」
美丈夫は表情を変えずに冷たい目を向けたまま告げた。
「我々の婚約パーティーに突然現れて、パーティーを壊したあげく、我々を汚いなどと言う権利がどこにあるんだ!」
アーノルドは興奮して顔を真っ赤にしている。
「罪を犯した人間を汚いと言って何が悪い」
『罪』という言葉に、また会場がざわめいた。
「罪など犯していない!」
「変な言いがかりをつけるなんてひどいわ!」
アーノルドは激昂し、カレイナが泣き出す。
先程までお祝いムードに溢れていた会場は、一変していた。
「一体、どうしたんだ」
屋敷の奥にある応接間で王族と歓談していたカレイナとアーノルドのそれぞれの両親が、騒ぎを聞き付けて駆け寄ってくる。
その後ろには、皇太子と第3王女の姿もあった。
「ルーナ」
どちらの両親もが、驚愕で目を見開く。4人ともルーナの顔をよく知っているからだ。
「ルーナ? 亡くなったルーナ・メソフィスのことか?」
ルーナの顔までは覚えていない皇太子が、首をかしげる。
「間違いないわ! ルーナ、ルーナなのね!」
感激した表情の第3王女が、ルーナに抱きつく。
第3王女は、ルーナの親友であり、カレイナの学友でもあったためこの場にいるようなものだった。
「ヴィアンカ、久しぶりね」
ルーナも懐かしそうに頬を緩める。
今までとは違って、美丈夫もにこやかに二人を見ている。
「ル、ルーナ……どうして……」
メソフィス伯爵が、ようやく声を絞り出す。
「魔の森に置いてきぼりにして殺したはずなのに、生きているのが不思議か」
美丈夫の『魔の森』という言葉と『殺した』という言葉に会場が更に騒然となる。
32
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
父が転勤中に突如現れた継母子に婚約者も家も王家!?も乗っ取られそうになったので、屋敷ごとさよならすることにしました。どうぞご勝手に。
青の雀
恋愛
何でも欲しがり屋の自称病弱な義妹は、公爵家当主の座も王子様の婚約者も狙う。と似たような話になる予定。ちょっと、違うけど、発想は同じ。
公爵令嬢のジュリアスティは、幼い時から精霊の申し子で、聖女様ではないか?と噂があった令嬢。
父が長期出張中に、なぜか新しい後妻と連れ子の娘が転がり込んできたのだ。
そして、継母と義姉妹はやりたい放題をして、王子様からも婚約破棄されてしまいます。
3人がお出かけした隙に、屋根裏部屋に閉じ込められたジュリアスティは、精霊の手を借り、使用人と屋敷ごと家出を試みます。
長期出張中の父の赴任先に、無事着くと聖女覚醒して、他国の王子様と幸せになるという話ができれば、イイなぁと思って書き始めます。
【完結】なんで、あなたが王様になろうとしているのです?そんな方とはこっちから婚約破棄です。
西東友一
恋愛
現国王である私のお父様が病に伏せられました。
「はっはっはっ。いよいよ俺の出番だな。みなさま、心配なさるなっ!! ヴィクトリアと婚約関係にある、俺に任せろっ!!」
わたくしと婚約関係にあった貴族のネロ。
「婚約破棄ですわ」
「なっ!?」
「はぁ・・・っ」
わたくしの言いたいことが全くわからないようですね。
では、順を追ってご説明致しましょうか。
★★★
1万字をわずかに切るぐらいの量です。
R3.10.9に完結予定です。
ヴィクトリア女王やエリザベス女王とか好きです。
そして、主夫が大好きです!!
婚約破棄ざまぁの発展系かもしれませんし、後退系かもしれません。
婚約破棄の王道が好きな方は「箸休め」にお読みください。
戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~
アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。
朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。
そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。
だけど、他の生徒は知らないのだ。
スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。
真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる