28 / 49
アリスの誕生日の前々日
しおりを挟む
できた!
ハースは、完成したものに、感動すら覚えた。
完璧だ!
ここはハースの寮の部屋。いつもなら整然としているこの部屋は、今は雑然としていた。
ハースが作っていたもののためだ。
ハースの目の前には、箱のようなものがあった。
高さはハースの身長を越え180センチはあるだろうか。
箱の大きさは、ちょうど人一人入れるくらいの、そう、ハースがぴったり一人、立って入れるくらいの箱のようなものだった。
箱のようなもの、と説明するしかないのは、その素材のせいだった。
箱のようなものの本体は、木枠。その平面は、透ける素材の布で覆われていた。
本当はガラスのように透明のもので覆いたかったのだが、生憎ガラスは扱いにくくて断念した。
手持ちのノリでもネジでもくっつけることができなかったからだ。
透ける素材の布を見たとき、天啓を受けたような気持ちになった。
これだ! とハースは確信した。
その布は、ピシッとひとつのよれもなくきっちりと張られている。
それぞれの木枠に、のりでピッチリとくっつけた。
これぞ、アリスにあげるのにふさわしい入れ物だ!
と、ハースは自画自賛した。
この中に入ったハースをうっすらとした布の向こう側から気づいたアリスは、きっと感激するだろう。と、ハースはその成功の図を思い描いて、微笑んだ。
ただ、問題が4つ。
ドアからも窓からも出せそうにないこの木枠を、どうやって学院に持っていくかが一つ。
ピッチリと四方と底には布を張り付けたため、ハースがこの箱のようなものに入るためには上から入るしか無さそうだが、どうやって180センチ上から入るのかが一つ。
もし学院に持っていけて、ハースが中に入れたとして、一番てっぺんの布を誰がピッチリときれいに張ってくれるのかが一つ。
そして最後の最大の問題は、プレゼントをプレゼントに飾り立てるリボンを、きっちりと美しく誰が結んでくれるのかが一つ。
ハースであれば、布の問題もリボンの問題も解決するのだが、生憎箱のなかではなにも出来ない。
ハースは出来上がった箱もどきを見ながら、どうしようかと悩み始めた。
ハースは、完成したものに、感動すら覚えた。
完璧だ!
ここはハースの寮の部屋。いつもなら整然としているこの部屋は、今は雑然としていた。
ハースが作っていたもののためだ。
ハースの目の前には、箱のようなものがあった。
高さはハースの身長を越え180センチはあるだろうか。
箱の大きさは、ちょうど人一人入れるくらいの、そう、ハースがぴったり一人、立って入れるくらいの箱のようなものだった。
箱のようなもの、と説明するしかないのは、その素材のせいだった。
箱のようなものの本体は、木枠。その平面は、透ける素材の布で覆われていた。
本当はガラスのように透明のもので覆いたかったのだが、生憎ガラスは扱いにくくて断念した。
手持ちのノリでもネジでもくっつけることができなかったからだ。
透ける素材の布を見たとき、天啓を受けたような気持ちになった。
これだ! とハースは確信した。
その布は、ピシッとひとつのよれもなくきっちりと張られている。
それぞれの木枠に、のりでピッチリとくっつけた。
これぞ、アリスにあげるのにふさわしい入れ物だ!
と、ハースは自画自賛した。
この中に入ったハースをうっすらとした布の向こう側から気づいたアリスは、きっと感激するだろう。と、ハースはその成功の図を思い描いて、微笑んだ。
ただ、問題が4つ。
ドアからも窓からも出せそうにないこの木枠を、どうやって学院に持っていくかが一つ。
ピッチリと四方と底には布を張り付けたため、ハースがこの箱のようなものに入るためには上から入るしか無さそうだが、どうやって180センチ上から入るのかが一つ。
もし学院に持っていけて、ハースが中に入れたとして、一番てっぺんの布を誰がピッチリときれいに張ってくれるのかが一つ。
そして最後の最大の問題は、プレゼントをプレゼントに飾り立てるリボンを、きっちりと美しく誰が結んでくれるのかが一つ。
ハースであれば、布の問題もリボンの問題も解決するのだが、生憎箱のなかではなにも出来ない。
ハースは出来上がった箱もどきを見ながら、どうしようかと悩み始めた。
11
お気に入りに追加
250
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は間違えない
スノウ
恋愛
王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。
その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。
処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。
処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。
しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。
そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。
ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。
ジゼットは決意する。
次は絶対に間違えない。
処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。
そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。
────────────
毎日20時頃に投稿します。
お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。

悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)
くも
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」
王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。
ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

婚約破棄されました。
まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。
本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。
ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。
習作なので短めの話となります。
恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。
ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。
Copyright©︎2020-まるねこ

王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

完結 女性に興味が無い侯爵様 私は自由に生きます。
ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ!
そんな私に好都合な相手が。
女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく
付いてきました。

婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる