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蝉の声が消えた。
空の青と白い花のコントラストが鮮烈な印象と衝撃を蒼佑にもたらした。
「蒼佑」
巧の声に蒼佑は我に返る。蝉の声が耳に戻ってくる。
「あれって、さっき渡した花、だよな?」
「ああ……」
蒼佑は俯く。
「北原の妹だって……被害者だよな」
そこに思い至らなかった自分に、蒼佑はため息が出る。
「本人が亡くなっても、噂が消えるわけじゃないからな。家族にとっては、辛いよ」
巧の言葉に、蒼佑は唇を噛む。
また重くなった足を引きずるように階段を下りる。少女の傷までもえぐってしまったことに、後悔の気持ちが増す。
ふいに強い風が吹き、蒼佑は立ち止まると潮の香りに誘われるように海に視線を向けた。巧もつられるように立ち止まった。
蒼佑は穏やかな海を見ながら、自分の思考が自分本位で浅はかだったことを悔いた。重くなった心で、美和にも顔向けができない気持ちになって、空を見上げることもできなかった。小さく息を吐くと、蒼佑は俯いてまた階段を下り始める。
「三毛猫だ。尾道って、猫多いよな」
足取りの重い蒼佑と巧の横を、三毛猫が悠然と追い越していく。尾道は猫が多い。でも、蒼佑が尾道に着いて猫の姿を認識したのは、今が初めてだった。蒼佑は苦笑する。どれだけ周りが見えなくなっていたのかと、猫にも巧にも言われた気がした。
「僕は、弘大が言った通り、本当に自己満足でしか動いてなかったのかもしれない」
ぼそりと蒼佑の自嘲する言葉に、巧が、うーん、と声を漏らす。
「でもな。……北原さんの家族の反応、ちょっと変だった気がするんだけど」
「変?」
蒼佑が巧を見ると、巧は真面目な顔で頷いた。
「噂のせいで迷惑を掛けられたんだろうと思う。でも……まるで北原さんだけが悪いみたいな感じがしたんだけど」
「……確かに、そうだったな」
「あのお母さんって随分若いけど、北原さんの義理の母親なのかな? “美和ちゃん”って他人行儀に呼んでたし」
巧の指摘に、蒼佑は頷く。
「たぶん、そうだと思う。昔会った北原の母親は、あの人じゃなかった。それに、弘大に北原の家は複雑だから行かない方が良い、って言われてたから……おばさんは歓迎しないだろう、って」
うつむく蒼佑に、巧が、あー、と声を漏らす。
「それ、先に知りたかったかも」
「悪い。あのお母さんと妹さん見て、思い出したんだけど……行かなきゃよかったな」
蒼佑の声も沈む。
「いや。それを知ってたら、もっと北原さんの家族から話を聞けるように動けたかもしれないな、と思って」
思いもかけない巧の言葉に、蒼佑は顔を上げた。
「北原の家族から?」
「ほら、大分、俺らの事警戒してただろ? ……確かに、聞くに堪えない噂があって、その上で自殺したら、家族はその後困るとは思うんだけど……ちょっと警戒しすぎな気がして」
「警戒しすぎ? ……そう、かもしれないけど……」
「だって、雑誌記者でも何でもない、同級生がお線香をあげたいってやって来ただけだよ? あの噂を知っている同級生なら、今更の話だろ? どうしてあんなに警戒するんだろうって」
「そう、だな」
ドアから顔を出したあの母親のことを蒼佑は思い出す。確かに、誰だかわからない若い男性が二人で訪ねてきたら、不信感を持つだろう。それでも、お線香を上げに来た、と告げた相手にあんな風に拒絶の色を見せる必要はないかもしれない。
「でも……やっぱり、今更って思うんだろう。ようやく噂が薄れて来たのにって……」
「それだけ、かな? あの家族は、北原さんが実際に妊娠してたかどうか、知っているはずだろ? 北原さんが妊娠してなかったとしたら、あの噂が悪質な噂でしかなかったって、知ってるはずだよ。なら、北原さんが被害者でしかないってわかってるはずだ。なのに、お母さんも妹さんも、今でも北原さんに対して怒りを抱えている」
巧の指摘に、蒼佑は俯く。
「確かに、そうだけど……義理の親子なら、一層複雑にも思うのかもしれないし」
もう一つの可能性があるとは、蒼佑は思いたくはなかった。美和が妊娠するようなことがあったとは、考えたくもなかった。
巧は北原の家の方向を見つめた。
「それは、否定できないけどな。なら、あの噂が出た時、北原さんの家族は、どんな風な反応したのかな? ……あのお母さんも、妹さんも、北原さんに対して、ひどく他人行儀な感じだった。それに、あのお父さんも、あのお母さんの味方だった。……あの家に、北原さんの居場所ってあったのかな?」
蒼佑はハッとする。
美和は、家のことは殆ど話すことはなかった。蒼佑が聞いた話は、妹が出来た、と言う話くらいのものだった。
10年前に美和にできた、血のつながりのある小学生の妹。あの家族が出来上がった複雑な背景を組み立てると、家の中には美和の居場所はおそらくなかった。
そこに沸き上がった美和に関する心ない噂。悪意ある噂を義理の母親が耳にして、美和に対してどう対応したのか。美和に線香を上げに来たと言った蒼佑に対する反応を思い出すだけでも、とてもポジティブな態度があったとは到底考えられなかった。美和の実の父親でさえ、蒼佑が持ってきた花束を受け取ろうとしなかったのは、美和の味方が家の中に誰もいなかったことを示すようにも思えた。
「あの家族も、北原を追い詰めたってこと、か?」
「だから、自分たちのしたことを忘れたいと願ってる。そう考えれば、あの過剰な反応は、納得できる気がするんだけど」
蒼佑は巧に同意しかできなくて、息を吐いた。
「学校にも、家にも居場所がない。……それって、他に居場所がなければ、高々17才の女の子には、辛いだろうな」
巧の言葉に、蒼佑の心はぎゅっとつかまれる。
学校に行けなくなった美和が安心できる場所は、どこにもなかったのかもしれない。美和が自殺したのは、噂に悩んだことばかりが原因ではなかったのかもしれない。想像するだけで嫌な気分が蒼佑を支配した。
「スケッチブックも、捨てられたんだろうな」
蒼佑は拳を握る。
「そうかもな」
巧が、頷いた。
少女が口にしたスケッチブック。美和の遺品も、あの家族が手元に残そうとすることはなかっただろう。存在しないから蒼佑に見せることができないに違いない。だからきっと少女は口をつぐんでしまったと蒼佑は確信にも似た気持ちになる。
「でも、スケッチブックに、蒼佑の絵が描いてるって、言ってたな」
巧の言葉に、蒼佑は顔を向けた。
「……だけど、僕がモデルになった記憶はないよ」
「目の前に蒼佑が居なくても、北原さんは蒼佑の絵を描いてたって、ことじゃないか?」
「……そんなこと、あるかな?」
蒼佑は首を傾げた。巧が頷く。
「好きな相手だとしたら、あり得ると思うけど」
巧の言葉に、蒼佑は苦笑した。
「残念ながら、それはないよ」
美和の気持ちが蒼佑になかったのだと、既に否定されている。
「どうして?」
「弘大が言ってた。北原は、ずっと同じ美術部だった津山のことが好きだったんだって」
「津山……って同級生?」
蒼佑は頷いた後、あのポスターのことを思い出した。
「駅に、尾道の夕暮れの景色のポスターがあっただろ? あの写真撮ったのが、津山だ」
ああ、と巧が声を漏らした。
「あのポスターか。と言うか、蒼佑よく、その津山ってやつのこと、覚えてたな」
蒼佑は頷く。
「今でも麻子が仲良くしてるから。時々、話題に上るんだよ」
「なるほどな」
「だから、そのスケッチブックにあったって絵も、僕じゃない可能性の方が高いと思う」
「……そうかな?」
「もうスケッチブックは存在しないから。それに……北原が誰を好きだったかってことは、もう大事なことじゃないよ」
蒼佑は唇を噛む。
美和は、純粋に絵を描きたがっていただけだ。煌めく瞳で夢を語る美和の笑顔は、蒼佑の目には眩しかった。
「蒼佑君、来年東京で会おうねぇ」
最後に美和と会ったときのことを思い出す。周囲の悪意によって美和の屈託のない笑顔が殺されたと思うと、蒼佑にはやるせなさしか生まれてこなかった。
届いてすぐにきちんと本を読んでいたとしたら。
縋るように見上げた空の青が霞んでいった。
*
「あれ? ソースケか?」
蝉の鳴き声と暑さがこもるホームで、ぼんやりと電車を待つ蒼佑に声をかけてきたのは、高校の同級生だった。車社会の尾道で知り合いに駅で遭遇することなどないだろう、と思っていた蒼佑は少し狼狽える。
「ああ……中山か。久しぶり」
忘れていた名前がスッと出てきて、蒼佑は案外覚えていると自分でも驚く。
「やっぱりか。似とるなーって思ったんじゃ」
蒼佑の記憶にある中山哲平は坊主頭だった。癖っ毛の茶髪は、蒼佑の知っている姿とは違うが、面長な顔と、気安く声を掛けてくる様子は昔のままだった。
「蒼佑、誰?」
「ああ、高校の同級生の中山」
「初めまして。古澤と言います」
巧がぺこりと頭を下げると、中山がおざなりに頭を下げた。
中山は蒼佑が浅く広く仲良くしていたうちの一人で、中山の距離感が仲良くなったきっかけではあったが、距離感が近すぎるところが苦手で、逆に距離を置いていた。
物静かな蒼佑にとっては、弘大と中山の二人は、同じように快活な喋り手だった。だが蒼佑が中山に壁を作った決定的な理由は、中山の無神経さだった。
「何でここに? 確か東京におるって誰かに聞いた気がするんじゃけど」
蒼佑は中山と直接連絡を取り合ってはいない。だが、やはり誰かからはその噂が伝わってくるらしい。
「蒼佑が尾道に居たことがあるっていうから、観光に連れて来てもらったんですよ」
巧がニコリと笑う。正直、巧が一緒にいて助かったと思った。蒼佑一人だったら、今の状況で嘘をつける気がしなかった。
「東京に帰るんじゃったら、新尾道の方じゃないんか?」
首を傾げて疑問が移った中山に、蒼佑は心の中でホッとした。
「福山で乗り換えようと思って」
蒼佑の言葉に、中山が頷いた。
「福山までか。じゃあ、一緒じゃなー」
中山が蒼佑の記憶にある人懐こい笑顔を見せる。どうやら、福山までは中山と話をすることになるらしい。蒼佑は余計なことを言わないように気を付けよう、と自分を諫めた。中山は良くも悪くも人との距離が近い。蒼佑の言葉も誰かに伝わる可能性は高い。
「来るって知っとったら同級生で集まったのになー。ああそうじゃ。番号、高校ん頃と変わっとったんじゃった。教えとくわ」
中山のジーンズのポケットから取り出されたスマートフォンに、その流れが仕方がないものだと分かってはいるが、蒼佑は進まない気持ちで自分のスマートフォンをバッグから取り出す。
スマートフォンの画面に触れると、LINEが来ていた。今の蒼佑には開けそうにもなかった。きっとそれは麻子からのLINEだと予想できた。蒼佑が尾道に着いてからずっとスマートフォンを触っていなかったのは、麻子に対する後ろめたい気持ちがあったためだ。だから今は、麻子からのメッセージを読む気分になれなかった。
中山と連絡先を交換すると、蒼佑はスマートフォンをそのままバッグに戻した。
「車は?」
福山までの距離なら車で行くのが普通だろうと、駅にいる中山を疑問に思ったのは蒼佑の素直な気持ちだった。でもそれ以上に、当たり障りのない会話をしたい気持ちの方が強かった。
「ああ、昨日飲んで帰るつもりやったけぇ、電車で来たんじゃ。結局実家に泊まって今までグダグダしとうたけど。流石に昼間のうちに帰らんと、嫁さんが怒るけぇな」
「ああ、結婚したのか。おめでとう。こっちに住んでるんじゃないのか?」
蒼佑も社会人として働いている。興味があろうとなかろうと、日常会話のスキルは積んでいるつもりだ。中山との会話を卒なくこなす。そういう気持ちで会話を続けた。
「職場は福山じゃけぇな」
「ああ、なるほどな」
福山の方が町の規模は大きい。仕事も尾道よりあるのは違いないと蒼佑も納得する。
ホームに滑り込んできた濃い黄色の電車に顔を向ける中山を見ながら、蒼佑は福山までの二十分を思って小さく溜め息を吐いた。重くなった気持ちのせいで、気分的には気軽に話ができるような状態ではなかった。暑さのせいではない汗がじわりとにじんだ。既に、今の会話だけでも蒼佑は疲れていた。
冷房が効いた人もまばらな車内で、蒼佑と巧は横並びに、中山は向かい合わせの席に座る。中山がスマートフォンを弄っていることで会話をせずに済むことに安堵しつつ、蒼佑は窓の外に視線を向けた。電車がホームを滑り出し、体が電車の揺れに慣れた頃、海が見えた。蒼佑は頭を動かせずに、ぼんやりと午後の日差しを緩やかに反射させる海を眺めていた。
「ソースケは結婚は?」
同級生に会えばよくある質問で、蒼佑は少しばかりホッとしつつ、背もたれに体重をかけた。
「ああ、来月。結婚式はまだ先なんだけど」
「へえ、おめでとう」
「ありがとう」
「東京でもソースケならモテそうやしな。高校で実は隠れファンおったって知っとるか? 物静かで勉強できて、何だかミステリアス! ってな」
「単なる噂だろ」
蒼佑は苦笑する。
「えー。俺んところには、色々噂が聞こえて来とったでー」
蒼佑は、中山が噂話を好むのも、苦手にしていた理由だったと思い出す。誰それが、そんな話を中山は良くしていた。
高校時代、中山は美和との仲にも言及してきた。実は付き合ってるんじゃないのか、そう度々言われることが、蒼佑の気持ちを軽々しく扱われているようで不快だった。蒼佑は美和との関係を大切にしたかったし、美和が進もうとする道の邪魔にもなりたくなかった。だから一層、美和への気持ちを大事にしていたことを、踏みにじられているような気がしていた。
そして、美和の自殺の顛末を思い出して、更に嫌な気分が蒼佑を覆った。中山は噂を広めた一人に違いないと思えた。それでも今、中山を責めても何も生むことはないと分かっている。それに、蒼佑の行動だって美和の自殺の理由の一つだったかもしれない。中山を一方的に責める権利など蒼佑に存在しないと、表面化しそうになる怒りを抑える。
「モテたことはないよ」
蒼佑の言葉は決して謙遜ではなかった。勉強だけが取り柄だった学生時代も、それなりの会社で働きだした社会人になってからも、蒼佑にはモテたような記憶はない。
ちらりと大学のゼミの同期だった早瀬弥生(はやせやよい)の顔が浮かんできたが、嫌な記憶として残っているだけだ。議論の好敵手で当初は蒼佑も尊敬していた相手だったが、麻子への態度が原因で、必要最低限の会話しか交わさなくなった。「麻子を信用しない方がいい」という嫉妬心から作られただろう悪口が、疎遠になる決定打になった。
美和の気持ちが自分にあると思っていたことについては、自惚れだったと言われたくらいで、むしろ中山の言葉は場をつなぐためのお世辞にしか聞こえなかった。
実際に蒼佑が付き合ったのは麻子だけだ。大学三年生の頃から付き合ってきて、就職し環境が変わっても付き合いに波風は立つことはなく、穏やかに月日を重ねた。
結婚を決めたのも、付き合っていた流れで当然だと思えたし、蒼佑は麻子と過ごす安寧の日々に満足していたからでもある。
「相手は、向こうで知り合ったん?」
興味津々な中山に呆れつつ、蒼佑は首を傾げて曖昧にした。
既に中山なら情報として持っていてもおかしくない話題なのに、とも思う。ただ、いくら狭い町とは言え、高校の中に限ったコミュニティーとは違って、人の話が全て中山に届くわけでもない。実際、高校時代に仲が良かった東も知らなかったことだ。中山はもう地元に住んでいないせいで、噂が十分に伝わってこないのかもしれないし、元々麻子は目立つようなタイプではないために、話題には上りにくいのかもしれない。
「麻子さんは高校時代の同級生だろ?」
巧の言葉に、蒼佑は慌てて巧を見る。だが、巧は何かを決めたような表情で、蒼佑に頷いた。
空の青と白い花のコントラストが鮮烈な印象と衝撃を蒼佑にもたらした。
「蒼佑」
巧の声に蒼佑は我に返る。蝉の声が耳に戻ってくる。
「あれって、さっき渡した花、だよな?」
「ああ……」
蒼佑は俯く。
「北原の妹だって……被害者だよな」
そこに思い至らなかった自分に、蒼佑はため息が出る。
「本人が亡くなっても、噂が消えるわけじゃないからな。家族にとっては、辛いよ」
巧の言葉に、蒼佑は唇を噛む。
また重くなった足を引きずるように階段を下りる。少女の傷までもえぐってしまったことに、後悔の気持ちが増す。
ふいに強い風が吹き、蒼佑は立ち止まると潮の香りに誘われるように海に視線を向けた。巧もつられるように立ち止まった。
蒼佑は穏やかな海を見ながら、自分の思考が自分本位で浅はかだったことを悔いた。重くなった心で、美和にも顔向けができない気持ちになって、空を見上げることもできなかった。小さく息を吐くと、蒼佑は俯いてまた階段を下り始める。
「三毛猫だ。尾道って、猫多いよな」
足取りの重い蒼佑と巧の横を、三毛猫が悠然と追い越していく。尾道は猫が多い。でも、蒼佑が尾道に着いて猫の姿を認識したのは、今が初めてだった。蒼佑は苦笑する。どれだけ周りが見えなくなっていたのかと、猫にも巧にも言われた気がした。
「僕は、弘大が言った通り、本当に自己満足でしか動いてなかったのかもしれない」
ぼそりと蒼佑の自嘲する言葉に、巧が、うーん、と声を漏らす。
「でもな。……北原さんの家族の反応、ちょっと変だった気がするんだけど」
「変?」
蒼佑が巧を見ると、巧は真面目な顔で頷いた。
「噂のせいで迷惑を掛けられたんだろうと思う。でも……まるで北原さんだけが悪いみたいな感じがしたんだけど」
「……確かに、そうだったな」
「あのお母さんって随分若いけど、北原さんの義理の母親なのかな? “美和ちゃん”って他人行儀に呼んでたし」
巧の指摘に、蒼佑は頷く。
「たぶん、そうだと思う。昔会った北原の母親は、あの人じゃなかった。それに、弘大に北原の家は複雑だから行かない方が良い、って言われてたから……おばさんは歓迎しないだろう、って」
うつむく蒼佑に、巧が、あー、と声を漏らす。
「それ、先に知りたかったかも」
「悪い。あのお母さんと妹さん見て、思い出したんだけど……行かなきゃよかったな」
蒼佑の声も沈む。
「いや。それを知ってたら、もっと北原さんの家族から話を聞けるように動けたかもしれないな、と思って」
思いもかけない巧の言葉に、蒼佑は顔を上げた。
「北原の家族から?」
「ほら、大分、俺らの事警戒してただろ? ……確かに、聞くに堪えない噂があって、その上で自殺したら、家族はその後困るとは思うんだけど……ちょっと警戒しすぎな気がして」
「警戒しすぎ? ……そう、かもしれないけど……」
「だって、雑誌記者でも何でもない、同級生がお線香をあげたいってやって来ただけだよ? あの噂を知っている同級生なら、今更の話だろ? どうしてあんなに警戒するんだろうって」
「そう、だな」
ドアから顔を出したあの母親のことを蒼佑は思い出す。確かに、誰だかわからない若い男性が二人で訪ねてきたら、不信感を持つだろう。それでも、お線香を上げに来た、と告げた相手にあんな風に拒絶の色を見せる必要はないかもしれない。
「でも……やっぱり、今更って思うんだろう。ようやく噂が薄れて来たのにって……」
「それだけ、かな? あの家族は、北原さんが実際に妊娠してたかどうか、知っているはずだろ? 北原さんが妊娠してなかったとしたら、あの噂が悪質な噂でしかなかったって、知ってるはずだよ。なら、北原さんが被害者でしかないってわかってるはずだ。なのに、お母さんも妹さんも、今でも北原さんに対して怒りを抱えている」
巧の指摘に、蒼佑は俯く。
「確かに、そうだけど……義理の親子なら、一層複雑にも思うのかもしれないし」
もう一つの可能性があるとは、蒼佑は思いたくはなかった。美和が妊娠するようなことがあったとは、考えたくもなかった。
巧は北原の家の方向を見つめた。
「それは、否定できないけどな。なら、あの噂が出た時、北原さんの家族は、どんな風な反応したのかな? ……あのお母さんも、妹さんも、北原さんに対して、ひどく他人行儀な感じだった。それに、あのお父さんも、あのお母さんの味方だった。……あの家に、北原さんの居場所ってあったのかな?」
蒼佑はハッとする。
美和は、家のことは殆ど話すことはなかった。蒼佑が聞いた話は、妹が出来た、と言う話くらいのものだった。
10年前に美和にできた、血のつながりのある小学生の妹。あの家族が出来上がった複雑な背景を組み立てると、家の中には美和の居場所はおそらくなかった。
そこに沸き上がった美和に関する心ない噂。悪意ある噂を義理の母親が耳にして、美和に対してどう対応したのか。美和に線香を上げに来たと言った蒼佑に対する反応を思い出すだけでも、とてもポジティブな態度があったとは到底考えられなかった。美和の実の父親でさえ、蒼佑が持ってきた花束を受け取ろうとしなかったのは、美和の味方が家の中に誰もいなかったことを示すようにも思えた。
「あの家族も、北原を追い詰めたってこと、か?」
「だから、自分たちのしたことを忘れたいと願ってる。そう考えれば、あの過剰な反応は、納得できる気がするんだけど」
蒼佑は巧に同意しかできなくて、息を吐いた。
「学校にも、家にも居場所がない。……それって、他に居場所がなければ、高々17才の女の子には、辛いだろうな」
巧の言葉に、蒼佑の心はぎゅっとつかまれる。
学校に行けなくなった美和が安心できる場所は、どこにもなかったのかもしれない。美和が自殺したのは、噂に悩んだことばかりが原因ではなかったのかもしれない。想像するだけで嫌な気分が蒼佑を支配した。
「スケッチブックも、捨てられたんだろうな」
蒼佑は拳を握る。
「そうかもな」
巧が、頷いた。
少女が口にしたスケッチブック。美和の遺品も、あの家族が手元に残そうとすることはなかっただろう。存在しないから蒼佑に見せることができないに違いない。だからきっと少女は口をつぐんでしまったと蒼佑は確信にも似た気持ちになる。
「でも、スケッチブックに、蒼佑の絵が描いてるって、言ってたな」
巧の言葉に、蒼佑は顔を向けた。
「……だけど、僕がモデルになった記憶はないよ」
「目の前に蒼佑が居なくても、北原さんは蒼佑の絵を描いてたって、ことじゃないか?」
「……そんなこと、あるかな?」
蒼佑は首を傾げた。巧が頷く。
「好きな相手だとしたら、あり得ると思うけど」
巧の言葉に、蒼佑は苦笑した。
「残念ながら、それはないよ」
美和の気持ちが蒼佑になかったのだと、既に否定されている。
「どうして?」
「弘大が言ってた。北原は、ずっと同じ美術部だった津山のことが好きだったんだって」
「津山……って同級生?」
蒼佑は頷いた後、あのポスターのことを思い出した。
「駅に、尾道の夕暮れの景色のポスターがあっただろ? あの写真撮ったのが、津山だ」
ああ、と巧が声を漏らした。
「あのポスターか。と言うか、蒼佑よく、その津山ってやつのこと、覚えてたな」
蒼佑は頷く。
「今でも麻子が仲良くしてるから。時々、話題に上るんだよ」
「なるほどな」
「だから、そのスケッチブックにあったって絵も、僕じゃない可能性の方が高いと思う」
「……そうかな?」
「もうスケッチブックは存在しないから。それに……北原が誰を好きだったかってことは、もう大事なことじゃないよ」
蒼佑は唇を噛む。
美和は、純粋に絵を描きたがっていただけだ。煌めく瞳で夢を語る美和の笑顔は、蒼佑の目には眩しかった。
「蒼佑君、来年東京で会おうねぇ」
最後に美和と会ったときのことを思い出す。周囲の悪意によって美和の屈託のない笑顔が殺されたと思うと、蒼佑にはやるせなさしか生まれてこなかった。
届いてすぐにきちんと本を読んでいたとしたら。
縋るように見上げた空の青が霞んでいった。
*
「あれ? ソースケか?」
蝉の鳴き声と暑さがこもるホームで、ぼんやりと電車を待つ蒼佑に声をかけてきたのは、高校の同級生だった。車社会の尾道で知り合いに駅で遭遇することなどないだろう、と思っていた蒼佑は少し狼狽える。
「ああ……中山か。久しぶり」
忘れていた名前がスッと出てきて、蒼佑は案外覚えていると自分でも驚く。
「やっぱりか。似とるなーって思ったんじゃ」
蒼佑の記憶にある中山哲平は坊主頭だった。癖っ毛の茶髪は、蒼佑の知っている姿とは違うが、面長な顔と、気安く声を掛けてくる様子は昔のままだった。
「蒼佑、誰?」
「ああ、高校の同級生の中山」
「初めまして。古澤と言います」
巧がぺこりと頭を下げると、中山がおざなりに頭を下げた。
中山は蒼佑が浅く広く仲良くしていたうちの一人で、中山の距離感が仲良くなったきっかけではあったが、距離感が近すぎるところが苦手で、逆に距離を置いていた。
物静かな蒼佑にとっては、弘大と中山の二人は、同じように快活な喋り手だった。だが蒼佑が中山に壁を作った決定的な理由は、中山の無神経さだった。
「何でここに? 確か東京におるって誰かに聞いた気がするんじゃけど」
蒼佑は中山と直接連絡を取り合ってはいない。だが、やはり誰かからはその噂が伝わってくるらしい。
「蒼佑が尾道に居たことがあるっていうから、観光に連れて来てもらったんですよ」
巧がニコリと笑う。正直、巧が一緒にいて助かったと思った。蒼佑一人だったら、今の状況で嘘をつける気がしなかった。
「東京に帰るんじゃったら、新尾道の方じゃないんか?」
首を傾げて疑問が移った中山に、蒼佑は心の中でホッとした。
「福山で乗り換えようと思って」
蒼佑の言葉に、中山が頷いた。
「福山までか。じゃあ、一緒じゃなー」
中山が蒼佑の記憶にある人懐こい笑顔を見せる。どうやら、福山までは中山と話をすることになるらしい。蒼佑は余計なことを言わないように気を付けよう、と自分を諫めた。中山は良くも悪くも人との距離が近い。蒼佑の言葉も誰かに伝わる可能性は高い。
「来るって知っとったら同級生で集まったのになー。ああそうじゃ。番号、高校ん頃と変わっとったんじゃった。教えとくわ」
中山のジーンズのポケットから取り出されたスマートフォンに、その流れが仕方がないものだと分かってはいるが、蒼佑は進まない気持ちで自分のスマートフォンをバッグから取り出す。
スマートフォンの画面に触れると、LINEが来ていた。今の蒼佑には開けそうにもなかった。きっとそれは麻子からのLINEだと予想できた。蒼佑が尾道に着いてからずっとスマートフォンを触っていなかったのは、麻子に対する後ろめたい気持ちがあったためだ。だから今は、麻子からのメッセージを読む気分になれなかった。
中山と連絡先を交換すると、蒼佑はスマートフォンをそのままバッグに戻した。
「車は?」
福山までの距離なら車で行くのが普通だろうと、駅にいる中山を疑問に思ったのは蒼佑の素直な気持ちだった。でもそれ以上に、当たり障りのない会話をしたい気持ちの方が強かった。
「ああ、昨日飲んで帰るつもりやったけぇ、電車で来たんじゃ。結局実家に泊まって今までグダグダしとうたけど。流石に昼間のうちに帰らんと、嫁さんが怒るけぇな」
「ああ、結婚したのか。おめでとう。こっちに住んでるんじゃないのか?」
蒼佑も社会人として働いている。興味があろうとなかろうと、日常会話のスキルは積んでいるつもりだ。中山との会話を卒なくこなす。そういう気持ちで会話を続けた。
「職場は福山じゃけぇな」
「ああ、なるほどな」
福山の方が町の規模は大きい。仕事も尾道よりあるのは違いないと蒼佑も納得する。
ホームに滑り込んできた濃い黄色の電車に顔を向ける中山を見ながら、蒼佑は福山までの二十分を思って小さく溜め息を吐いた。重くなった気持ちのせいで、気分的には気軽に話ができるような状態ではなかった。暑さのせいではない汗がじわりとにじんだ。既に、今の会話だけでも蒼佑は疲れていた。
冷房が効いた人もまばらな車内で、蒼佑と巧は横並びに、中山は向かい合わせの席に座る。中山がスマートフォンを弄っていることで会話をせずに済むことに安堵しつつ、蒼佑は窓の外に視線を向けた。電車がホームを滑り出し、体が電車の揺れに慣れた頃、海が見えた。蒼佑は頭を動かせずに、ぼんやりと午後の日差しを緩やかに反射させる海を眺めていた。
「ソースケは結婚は?」
同級生に会えばよくある質問で、蒼佑は少しばかりホッとしつつ、背もたれに体重をかけた。
「ああ、来月。結婚式はまだ先なんだけど」
「へえ、おめでとう」
「ありがとう」
「東京でもソースケならモテそうやしな。高校で実は隠れファンおったって知っとるか? 物静かで勉強できて、何だかミステリアス! ってな」
「単なる噂だろ」
蒼佑は苦笑する。
「えー。俺んところには、色々噂が聞こえて来とったでー」
蒼佑は、中山が噂話を好むのも、苦手にしていた理由だったと思い出す。誰それが、そんな話を中山は良くしていた。
高校時代、中山は美和との仲にも言及してきた。実は付き合ってるんじゃないのか、そう度々言われることが、蒼佑の気持ちを軽々しく扱われているようで不快だった。蒼佑は美和との関係を大切にしたかったし、美和が進もうとする道の邪魔にもなりたくなかった。だから一層、美和への気持ちを大事にしていたことを、踏みにじられているような気がしていた。
そして、美和の自殺の顛末を思い出して、更に嫌な気分が蒼佑を覆った。中山は噂を広めた一人に違いないと思えた。それでも今、中山を責めても何も生むことはないと分かっている。それに、蒼佑の行動だって美和の自殺の理由の一つだったかもしれない。中山を一方的に責める権利など蒼佑に存在しないと、表面化しそうになる怒りを抑える。
「モテたことはないよ」
蒼佑の言葉は決して謙遜ではなかった。勉強だけが取り柄だった学生時代も、それなりの会社で働きだした社会人になってからも、蒼佑にはモテたような記憶はない。
ちらりと大学のゼミの同期だった早瀬弥生(はやせやよい)の顔が浮かんできたが、嫌な記憶として残っているだけだ。議論の好敵手で当初は蒼佑も尊敬していた相手だったが、麻子への態度が原因で、必要最低限の会話しか交わさなくなった。「麻子を信用しない方がいい」という嫉妬心から作られただろう悪口が、疎遠になる決定打になった。
美和の気持ちが自分にあると思っていたことについては、自惚れだったと言われたくらいで、むしろ中山の言葉は場をつなぐためのお世辞にしか聞こえなかった。
実際に蒼佑が付き合ったのは麻子だけだ。大学三年生の頃から付き合ってきて、就職し環境が変わっても付き合いに波風は立つことはなく、穏やかに月日を重ねた。
結婚を決めたのも、付き合っていた流れで当然だと思えたし、蒼佑は麻子と過ごす安寧の日々に満足していたからでもある。
「相手は、向こうで知り合ったん?」
興味津々な中山に呆れつつ、蒼佑は首を傾げて曖昧にした。
既に中山なら情報として持っていてもおかしくない話題なのに、とも思う。ただ、いくら狭い町とは言え、高校の中に限ったコミュニティーとは違って、人の話が全て中山に届くわけでもない。実際、高校時代に仲が良かった東も知らなかったことだ。中山はもう地元に住んでいないせいで、噂が十分に伝わってこないのかもしれないし、元々麻子は目立つようなタイプではないために、話題には上りにくいのかもしれない。
「麻子さんは高校時代の同級生だろ?」
巧の言葉に、蒼佑は慌てて巧を見る。だが、巧は何かを決めたような表情で、蒼佑に頷いた。
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