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渡辺円37才独身。彼氏いない歴=年齢。趣味は乙女ゲーム。
目が覚めるとなぜか目の前に、乙女ゲーム『レイモンド学園の華』のハンセン・フォーム伯爵令息がいた。そして、心配そうに円を見つめていた。
「アンナ嬢、目を覚ましたんだね!」
ホッとした表情になったハンセンの言葉に、円は衝撃を受ける。
アンナ、とはヒロイン、アンナ・オレック男爵令嬢のことだからだ。オレック男爵の隠し子だったヒロインは最後の1年間だけ学園に通うことになっていた。だから、これはその1年の始まりに違いなかった。
「うっそ、マジで、異世界転生キター! しかもヒロイン! 私にも運が巡って来た! ひゃっほい!」
と、口に出してしまったのは、ぼっち歴が長すぎて話し相手が自分しかいないせいで、独り言が多すぎる円の癖のせいだった。
驚いた顔のハンセンを見て、円、いやアンナはハッとする。
コホン、と咳払いすると、取り繕って精一杯の笑顔を見せた。
幸いアンナの表情筋は円の表情筋には影響されず、はにかんだ笑顔になった。
が、ハンセンの表情が曇った。
今はきっと学園の保健室。
確かこれはハンセンのフラグのシーンのはずで、もしかしたら余計なことを言ったばかりに、好感度が下がってしまったのかもしれない。
だが、それならそれで仕方ないし、円は別に構わなかった。円の推しは、ハンセンではなかったからだ。
「アンナ嬢、先ほど出会い頭でぶつかったことと言い、今叫んだことと言い、噂には聞いていましたが、本当にマナーがなっていないのですね!」
ハンセンの声は、とっても怒っていた。
アンナは表情を固まらせて、首をかしげた。
「ええっと、申し訳ございません」
確かこの自由奔放さが、攻略対象の気持ちを動かすポイントなので、叱られることなど悪役令嬢以外にあるはずもなかった。
「ここでぶつかったのも、何かの縁でしょう。あなたのマナー、徹底的に鍛え直して差し上げます!」
本気で、ハンセンはイラついているようだった。
その迫力に、アンナが必要ありません! と答えられるはずもなかった。
目が覚めるとなぜか目の前に、乙女ゲーム『レイモンド学園の華』のハンセン・フォーム伯爵令息がいた。そして、心配そうに円を見つめていた。
「アンナ嬢、目を覚ましたんだね!」
ホッとした表情になったハンセンの言葉に、円は衝撃を受ける。
アンナ、とはヒロイン、アンナ・オレック男爵令嬢のことだからだ。オレック男爵の隠し子だったヒロインは最後の1年間だけ学園に通うことになっていた。だから、これはその1年の始まりに違いなかった。
「うっそ、マジで、異世界転生キター! しかもヒロイン! 私にも運が巡って来た! ひゃっほい!」
と、口に出してしまったのは、ぼっち歴が長すぎて話し相手が自分しかいないせいで、独り言が多すぎる円の癖のせいだった。
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幸いアンナの表情筋は円の表情筋には影響されず、はにかんだ笑顔になった。
が、ハンセンの表情が曇った。
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だが、それならそれで仕方ないし、円は別に構わなかった。円の推しは、ハンセンではなかったからだ。
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「ええっと、申し訳ございません」
確かこの自由奔放さが、攻略対象の気持ちを動かすポイントなので、叱られることなど悪役令嬢以外にあるはずもなかった。
「ここでぶつかったのも、何かの縁でしょう。あなたのマナー、徹底的に鍛え直して差し上げます!」
本気で、ハンセンはイラついているようだった。
その迫力に、アンナが必要ありません! と答えられるはずもなかった。
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