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シャル視点②

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「えーっと、今日は誰のお披露目会なの?」
 シャルはコルセットを締められながら、使用人仲間に尋ねる。
「それは、行ってみればわかります」
 だが、どの使用人も、判を押したように同じ事しか言わない。
「でも、それだと、その方に失礼じゃないかしら?」

 シャルは真面目だ。だから、事前にきちんと情報収集をしてパーティーなどに行くようにしている。
 そうでなければ、フーシェに恥をかかせることになってしまうためだ。
 いつもいつも令嬢たちに注意されるので、できる限りのことはしていきたいと思うのだ。
「そこは気にされなくても大丈夫です。……シャル様は、フーシェ様のことだけ考えていただければ」
「えーっと、どうして様付けされるのかしら? ドレスを着てるからって、使用人であることには変わりないのに」
「……フーシェ様がそう言いつけておりますので」
 
 シャルが小さくため息をつく。
「私が庶民だから、見栄を張らないといけなくなるのよね……。私がせめて貴族の令嬢であれば、フーシェ様も私のことを恥ずかしがらずに傍に置いておけたでしょうに。本当に申し訳ないわ。……早く、ケガが治ってくだされば、私を傍に置いておかなくても済むようになるのに……」
 使用人たちの目が泳ぐ。
 今日が結婚式だというのに、未だにシャルは自分がどんな状況に置かれているか理解していない。

「あら、ドレスの装飾が、また一段と美しくなったのね。……今日のお披露目の方は、よほど礼儀を尽くさないといけない相手なのね」
 仮縫いのドレスよりも更にゴージャスになったウエディングドレスを見て、これが自分の結婚衣装だと気付かないシャルに、使用人たちは戸惑う。
「え? ベールも付けるの? ……あ、そうなのね! 今日のお披露目の方は、他の国の王族なのね! ベールをつける習慣がある国があるって教えてもらったわ!」
 もはや、使用人たちになすすべはない。

 あとは、教会でフーシェに頑張ってもらうしかないだろうと、使用人一同、顔を見合わせた。
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