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「妖精王になれない? 真実の番でなければ『偽りには死を』与えられる?」
 
 呆然と繰り返すジョエルに、お父様がにこりと笑う。
 ……あれって、本当のことだったんだ。
 お父様が国民に宣言した時点で、あれは形ばかりの文言だと思ってたけど……なんだ、頑張らなくてもジョエルの悪事は明らかになったのか……。いやでも、自分の手で明らかにしたかったし!

「当然だろう? 妖精王になるためには、真実の番の力が必要なんだから。それでもジョエル殿は、自分が真実の番だと言うかな?」

 それを待つとしても、結局は結末は同じだ。早いか遅いかの違いだろう。
 って、私はジョエルを番と認めないし、妖精王になるためのその時まで、ジョエルを婚約者として置いておきたくはないけど! 
 ジョエルは顔を青くして、小刻みに震えている。

「さて、番だと偽ったのは、ジョエル殿が始めた嘘かな? それとも、グエッラ家が始めた嘘かな? 最近、妖精王を単なるコマだと思いあがっている家もあるようだからね。徹底的に、調べる必要があるかな」

 ニコリと笑ってジョエルに問いかけるお父様は、笑っているはずなのに怖かった。
 これ以上嘘を重ねることもできないと思ったのか、ジョエルはだんまりを決め込んだらしかった。いや、怖すぎて口が開けないのかもしれない。

「とりあえず、ジョエル殿とエンマ、それからコラソン嬢だったかな、転移させてもらおう」

 お父様の言葉と共に、エンマとコラソンの悲鳴がかすかに聞こえて、そしてその悲鳴はこの会場から消えてなくなった。
 多分、牢に送られたんだろう。……多分。
 もうちょっと、自分でやり込めたかったけど、致し方ない。

「それで、フィオーレ」

 私に向き直ったお父様は、妖精王Verではなく、お父様Verの雰囲気に変わる。
 私も、ふっと力を抜いた。

「はい。お父様」
「テオ殿とは会ったことがなかったかな?」

 お父様の言葉に、私はテオ様を見る。
 でも、きっと一度でも言葉を交わすようなことがあれば、番だと気付いたと思うわけで……。
 私も次期妖精王として、人間界のパーティーに顔を出すことは、時折あったのだけど?
 お父様が名前を知ってるくらいだから、それなりの家の人なのよね?
 なぜ、会ってないんだろう?

「多分、なかったのだと思いますわ」
「……そうか、テオ殿は、パーティーの類は逃げてばかりいたんだったんだね」
 
 お父様の視線に、テオ様が苦笑して頭をかく。

「しがない第六王子ですから、いてもいなくても関係ないでしょう? せいぜい、女性に囲まれて嫌な気分になるだけですし……まさか、フィーの番だとは思いもよりませんし」

 そういえば、いつパーティーに行っても会うことのない王子っていたなぁ。でも、人間が番じゃないって思い込んでたところもあったから、特に気にもしてなかったけど。
 ……そうか、本当なら、もっと前に会っててもおかしくなかったのか……。

「え? テオ様、今日はどうしてこの会場に、いらっしゃったんですか?」

 パーティーの類は逃げてばかりだったって、言ったわよね?

「いや、ピエルパオロが無理やり連れてきたんだ。でも、来て正解だったね」

 視界の端に見えたピエルパオロがうんうん、と頷いている。
 もしかしたら、ピエルパオロは最後の頼みの綱として、テオ様を連れて来てくれたのかもしれない。

 肩をすくめるテオ様は、微笑みながら、私のシルバーの髪をするりとなでる。

 何だかテオ様ずるい!
 ……今まで会えなかった文句を言いたかったのに、そんな風にされたら、許してしまうじゃない!

「フィー、いやフィオーレ = ポルタルピ嬢、私、テオ = コストナーと結婚していただけますか?」

 テオ様の甘い視線に、私は心が満たされる。
 ああ、私、番には甘すぎるかしら。……仕方ないわ。だって、番だもの。

 番が見つからないので諦めて嫌な奴と婚約をしたら、番を見つけて、問題も解決してしまった←今ここ

 完
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