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だから⑧
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「国の貯えを使っていない。確かに、そうかもしれませんわ。お金が直接動いたわけではありませんものね。ゼビナ王国とカッセル王国の国境近くに立つ、ルロワ城と引き換えにされたんだもの」
クリスティアーヌ、どうして、それを!?
商人とノエリア以外は誰も知らないはずなのに!
「ファビアン! どういうことだ?!」
父上の勢いに、びくりとする。
顔を真っ赤にした父上に怒鳴りつけられる。
「ち、父上。どうして、そんなに怒るのです!? あの汚らしい古い城と、ノエリアのための美しい衣装を交換しただけではありませんか!」
しかも、カッセル王国と手を結ぶことになったんですよ!
バール王国の王子殿下がいる前では言えませんが!
「ファビアン、お前は本気でそんなことを言っているのか?!」
目を見開いた父上が、崩れ落ちる。
「父上、大丈夫ですか!?」
私が父上の顔を覗き込むと、青い顔をした父上がキッと私を睨む。
どうして、こんな風に睨まなければならないのだ!
きっと、カッセル王国とのことを知れば、父上だって喜ぶはずだ!
「あのルロワ城は、我が国の大事な要所。なのに、それを、あんなドレスのために売り渡すとは!」
「あんなドレスではありません! 美しいではありませんか!」
ああ、レナルド殿さえいなければ! 私の功績を告げられるのに!
要所?! 要所などであるものか! あそこは、狼藉者の掃き溜めだったんだ!
そうか、父上はそのことを知らないんだな!
「陛下、ファビアン殿下に政を任せると、すぐに我が国は滅んでしまうでしょう。ですから、私は廃嫡を望みます」
父上が、クリスティアーヌに虚ろな目を向ける。
「……だが、ルロワ城は戻らぬ。もう、我が国は、終わりだ……」
「廃嫡を認めてくださるのであれば、ルロワ城は我が国に寄付いたします」
クリスティアーヌの隣に立ったドゥメルグ公爵が、大きく頷いた。
ど、どういうことだ!?
「ど、どういうことだ?!」
私と同じ言葉を告げた父上に、クリスティアーヌが頷く。
「ファビアン殿下が、商人にルロワ城を譲ったとの情報を得た父の手はずにより、我が家の銀山と引き換えに、ルロワ城は我が家の持ち物となっております」
父上が、ホッと息をつく。
「助かった。流石、ドゥメルグ公爵。そのようなところにも目が行き届いていたか。わかった。クリスティアーヌ嬢の望みは叶えよう」
な、なぜだ?!
どうして私のやったことが悪いことにされてるんだ!?
それに!
「ち、父上! それでは、王家の血が絶えてしまいます!」
私は叫ぶ。
「黙れ、ファビアン。お前がいなくとも、王家の血は絶えぬ。……我が弟の子がおるからな」
「ワ、ワルテを次期国王にするつもりですか!? ワルテは、帝王学など学んでいないのですよ!」
ワルテは、従兄だ。だが、私は理論的なワルテとも相性が最悪だった。だから、話すことなど年に1度あればいい方だ。だが、あんないけすかない人間が、国王になるなど! 帝王学の一つも知らないだろうに!
そもそも、私は生まれながらにして、国王になるべくして生まれたのだぞ!
「ファビアン殿下も、きちんと学んでおられないではありませんか。冷静かつ、勤勉であり、私と共にバール王国に留学し、バール王国の言葉を使いこなせるワルテ様の方が、よほど国王にふさわしいと思いますわ」
クリスティアーヌが笑顔で告げる。
だ、誰か! 私が国王にふさわしいと言ってくれ!
父上がレナルド殿に向くと、口を開いた。
「レナルド殿下、ファビアンの処遇については、廃嫡、そして、幽閉いたします」
父上の言ったことが信じられなかった。
「ゆ、幽閉?! 私を幽閉するのか!?」
「ファビアンを下がらせよ。とりあえず、東の棟の牢へ」
いやだ!
私は国王なのだぞ!
どうして、幽閉などされなければならないのだ!
私の叫びに、誰も、ノエリアですら反応してくれなかった。
クリスティアーヌ、どうして、それを!?
商人とノエリア以外は誰も知らないはずなのに!
「ファビアン! どういうことだ?!」
父上の勢いに、びくりとする。
顔を真っ赤にした父上に怒鳴りつけられる。
「ち、父上。どうして、そんなに怒るのです!? あの汚らしい古い城と、ノエリアのための美しい衣装を交換しただけではありませんか!」
しかも、カッセル王国と手を結ぶことになったんですよ!
バール王国の王子殿下がいる前では言えませんが!
「ファビアン、お前は本気でそんなことを言っているのか?!」
目を見開いた父上が、崩れ落ちる。
「父上、大丈夫ですか!?」
私が父上の顔を覗き込むと、青い顔をした父上がキッと私を睨む。
どうして、こんな風に睨まなければならないのだ!
きっと、カッセル王国とのことを知れば、父上だって喜ぶはずだ!
「あのルロワ城は、我が国の大事な要所。なのに、それを、あんなドレスのために売り渡すとは!」
「あんなドレスではありません! 美しいではありませんか!」
ああ、レナルド殿さえいなければ! 私の功績を告げられるのに!
要所?! 要所などであるものか! あそこは、狼藉者の掃き溜めだったんだ!
そうか、父上はそのことを知らないんだな!
「陛下、ファビアン殿下に政を任せると、すぐに我が国は滅んでしまうでしょう。ですから、私は廃嫡を望みます」
父上が、クリスティアーヌに虚ろな目を向ける。
「……だが、ルロワ城は戻らぬ。もう、我が国は、終わりだ……」
「廃嫡を認めてくださるのであれば、ルロワ城は我が国に寄付いたします」
クリスティアーヌの隣に立ったドゥメルグ公爵が、大きく頷いた。
ど、どういうことだ!?
「ど、どういうことだ?!」
私と同じ言葉を告げた父上に、クリスティアーヌが頷く。
「ファビアン殿下が、商人にルロワ城を譲ったとの情報を得た父の手はずにより、我が家の銀山と引き換えに、ルロワ城は我が家の持ち物となっております」
父上が、ホッと息をつく。
「助かった。流石、ドゥメルグ公爵。そのようなところにも目が行き届いていたか。わかった。クリスティアーヌ嬢の望みは叶えよう」
な、なぜだ?!
どうして私のやったことが悪いことにされてるんだ!?
それに!
「ち、父上! それでは、王家の血が絶えてしまいます!」
私は叫ぶ。
「黙れ、ファビアン。お前がいなくとも、王家の血は絶えぬ。……我が弟の子がおるからな」
「ワ、ワルテを次期国王にするつもりですか!? ワルテは、帝王学など学んでいないのですよ!」
ワルテは、従兄だ。だが、私は理論的なワルテとも相性が最悪だった。だから、話すことなど年に1度あればいい方だ。だが、あんないけすかない人間が、国王になるなど! 帝王学の一つも知らないだろうに!
そもそも、私は生まれながらにして、国王になるべくして生まれたのだぞ!
「ファビアン殿下も、きちんと学んでおられないではありませんか。冷静かつ、勤勉であり、私と共にバール王国に留学し、バール王国の言葉を使いこなせるワルテ様の方が、よほど国王にふさわしいと思いますわ」
クリスティアーヌが笑顔で告げる。
だ、誰か! 私が国王にふさわしいと言ってくれ!
父上がレナルド殿に向くと、口を開いた。
「レナルド殿下、ファビアンの処遇については、廃嫡、そして、幽閉いたします」
父上の言ったことが信じられなかった。
「ゆ、幽閉?! 私を幽閉するのか!?」
「ファビアンを下がらせよ。とりあえず、東の棟の牢へ」
いやだ!
私は国王なのだぞ!
どうして、幽閉などされなければならないのだ!
私の叫びに、誰も、ノエリアですら反応してくれなかった。
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