44 / 50
だから⑦
しおりを挟む
「廃嫡と言う言葉すら知らない人間が皇太子とは、本当に信じられませんわ! ファビアン殿下は、勉強という勉強から逃げ回り、とうとう、ご自分に関係する言葉すら習得することなく、学院を卒業してしまわれるのですね」
クリスティアーヌめ!
「そ、そんなめったに聞かない言葉を、知らないからと言って、国王として困ることはないだろう! わからなければ、周りにいる人間たちに確認すればよいのだ!」
私の言葉に、クリスティアーヌが小さくため息をつく。
「廃嫡とは、皇太子の身分をはく奪することですわ。それでも、周りの人に聞いてから知ればよかった言葉だと思っていらっしゃるのかしら?」
は、はく奪?
「はく奪?! なぜ私が!?」
信じらない! 私は憤慨してクリスティアーヌを睨む。
「よく、そのような疑問を持つことができますわね。皇太子としての責務を全うせず、嫌なことから逃げ回り、自分に厳しい人間を遠ざけ、自分が好き勝手に生活する。それが、一国の国王となるべき人の態度でしょうか?」
「な、何を言う! わ、私だって国王になるべき帝王学は学んでいる! 学院での勉強など取るに足らぬことではないか! ち、父上は私が十分やっていると認めていたのだ! 現に、私の行動を許していたぞ!」
私の言葉に、クリスティアーヌが首を横にふる。
「そういわれてしまえば、国王陛下がお許しになっていたと考えざるを得ませんわね。ですが、私はファビアン殿下の近くで、国王陛下にたびたび苦言を告げられているのを見ていたのですよ? ただ、ファビアン殿下が、その苦言に一度も耳を傾けることがなかっただけではありませんか」
「そ、そんなことはない!」
そ、そんな記憶など一度もない!
……いや、ないはずだ!
「いいえ。そんなことが度々ありましたわ。国王陛下、そうでしたわよね?」
クリスティアーヌが話を振ると、父上は、まだ呆然とした表情でクリスティアーヌを見つめていた。
そうだ。
別にクリスティアーヌが言うことを、父上が聞き入れる道理はないんだ!
クリスティアーヌは、一介の貴族令嬢であるだけだ!
「陛下、もしや、ファビアン殿下がおっしゃっている通り、ファビアン殿下の行いを全てお許しになっていたのですか?」
レナルド殿の確認に、父上は我に返ると、ぶんぶんと首を横に振った。
え?!
父上!? なぜ、否定するのです?!
「いえ。私は、ファビアンに良き国王になってほしいと、長年その行いに苦言を述べていたのですが……」
そこまで言うと、父上がクリスティアーヌに向く。
父上?! 苦言など、述べられたことは……ない……ハズです!
「そうでしたわ。でも、ファビアン殿下は、少しも聞く様子がありませんでした。ファビアン殿下は、自分に厳しい意見を言う人間の話を、聞こうとはされません。学びもせず遊び惚けていたファビアン殿下が国のかじ取りをしたとき、国が傾くのは目に見えていますわ。苦言を呈する人間の言葉を聞こうともしないファビアン殿下では、国の明るい未来が見えませんわ」
そもそも、何を言っているのだ!
「意見など聞かなくとも、私はやれる! ノエリアもそう言っている! 私とノエリアの二人がいれば、この国は安泰だ!」
意気揚々と叫ぶ私に、会場は静けさを増した。ほら見てみろ。クリスティアーヌの言葉よりも、私の言葉の方が貴族に支持されているんだ!
「ファビアン殿下とノエリア様の二人がいたら、我が国の貯えも、早々に消えてしまうでしょうね。政治のかじ取りを失敗するだけではなくて、国の貯えまでも食いつぶす国王など、国が消滅するしかありませんのよ?」
「な、何を言い出すんだ! 貯えを食いつぶすなど、そんなことをするわけがないだろう! 我が国の貯えは潤沢にあるではないか!」
私はノエリアの高価なドレスを用意するためにも、お金を使わずに手に入れたのだぞ! ……他の物を引き換えにはしたが……。
「あら。ノエリア様のドレスは、とても高価なものでしてよ? 公爵家令嬢である私でも、手が届きそうにない衣装だわ。バール王国の王妃様くらいでなければ買えないような値段だと思うのだけど。そのドレス、どうやって手に入れたのかしら? ガンス男爵家では、到底買えない衣装でしょうに」
やはり、手に入れようとしていただけある。知っているのか。
忌々しい。私はクリスティアーヌを視界に入れたくなくて目をそらした。
父上が、私に近づいてくる。
「どういうことだ、ファビアン。ノエリア嬢のドレスは、どうやって手に入れたのだ!?」
「あ、あれは……しょ、商人が、そう、付き合いのある商人が、安くで手に入ると言うので、私のつてで買ったものです。国の貯えを使ったわけではないのです! わ、私の個人資産から払っております!」
流石に、王家の持ち物であるルロワ城を売ったとは、ここでは言い出しずらい。だが、後で言えばいいだろう。父上ならば理解してくださるさ。
それにあれは、いずれ国王になる私の持ち物に違いないのだ!
「ふふふふ」
なぜかクリスティアーヌが笑いだす。
気に障る笑い方だな!
「なぜ笑う! 私は国の貯えを使ってはおらん! 調べてみるがよい!」
「ファビアン、本当なのか?」
「父上、本当です! こんな女の言うことに、惑わされないでください!」
どこを調べようとも、国のお金は一切使っていない!
それは間違いないことだ!
だから、嘘は言っていない!
クリスティアーヌめ!
「そ、そんなめったに聞かない言葉を、知らないからと言って、国王として困ることはないだろう! わからなければ、周りにいる人間たちに確認すればよいのだ!」
私の言葉に、クリスティアーヌが小さくため息をつく。
「廃嫡とは、皇太子の身分をはく奪することですわ。それでも、周りの人に聞いてから知ればよかった言葉だと思っていらっしゃるのかしら?」
は、はく奪?
「はく奪?! なぜ私が!?」
信じらない! 私は憤慨してクリスティアーヌを睨む。
「よく、そのような疑問を持つことができますわね。皇太子としての責務を全うせず、嫌なことから逃げ回り、自分に厳しい人間を遠ざけ、自分が好き勝手に生活する。それが、一国の国王となるべき人の態度でしょうか?」
「な、何を言う! わ、私だって国王になるべき帝王学は学んでいる! 学院での勉強など取るに足らぬことではないか! ち、父上は私が十分やっていると認めていたのだ! 現に、私の行動を許していたぞ!」
私の言葉に、クリスティアーヌが首を横にふる。
「そういわれてしまえば、国王陛下がお許しになっていたと考えざるを得ませんわね。ですが、私はファビアン殿下の近くで、国王陛下にたびたび苦言を告げられているのを見ていたのですよ? ただ、ファビアン殿下が、その苦言に一度も耳を傾けることがなかっただけではありませんか」
「そ、そんなことはない!」
そ、そんな記憶など一度もない!
……いや、ないはずだ!
「いいえ。そんなことが度々ありましたわ。国王陛下、そうでしたわよね?」
クリスティアーヌが話を振ると、父上は、まだ呆然とした表情でクリスティアーヌを見つめていた。
そうだ。
別にクリスティアーヌが言うことを、父上が聞き入れる道理はないんだ!
クリスティアーヌは、一介の貴族令嬢であるだけだ!
「陛下、もしや、ファビアン殿下がおっしゃっている通り、ファビアン殿下の行いを全てお許しになっていたのですか?」
レナルド殿の確認に、父上は我に返ると、ぶんぶんと首を横に振った。
え?!
父上!? なぜ、否定するのです?!
「いえ。私は、ファビアンに良き国王になってほしいと、長年その行いに苦言を述べていたのですが……」
そこまで言うと、父上がクリスティアーヌに向く。
父上?! 苦言など、述べられたことは……ない……ハズです!
「そうでしたわ。でも、ファビアン殿下は、少しも聞く様子がありませんでした。ファビアン殿下は、自分に厳しい意見を言う人間の話を、聞こうとはされません。学びもせず遊び惚けていたファビアン殿下が国のかじ取りをしたとき、国が傾くのは目に見えていますわ。苦言を呈する人間の言葉を聞こうともしないファビアン殿下では、国の明るい未来が見えませんわ」
そもそも、何を言っているのだ!
「意見など聞かなくとも、私はやれる! ノエリアもそう言っている! 私とノエリアの二人がいれば、この国は安泰だ!」
意気揚々と叫ぶ私に、会場は静けさを増した。ほら見てみろ。クリスティアーヌの言葉よりも、私の言葉の方が貴族に支持されているんだ!
「ファビアン殿下とノエリア様の二人がいたら、我が国の貯えも、早々に消えてしまうでしょうね。政治のかじ取りを失敗するだけではなくて、国の貯えまでも食いつぶす国王など、国が消滅するしかありませんのよ?」
「な、何を言い出すんだ! 貯えを食いつぶすなど、そんなことをするわけがないだろう! 我が国の貯えは潤沢にあるではないか!」
私はノエリアの高価なドレスを用意するためにも、お金を使わずに手に入れたのだぞ! ……他の物を引き換えにはしたが……。
「あら。ノエリア様のドレスは、とても高価なものでしてよ? 公爵家令嬢である私でも、手が届きそうにない衣装だわ。バール王国の王妃様くらいでなければ買えないような値段だと思うのだけど。そのドレス、どうやって手に入れたのかしら? ガンス男爵家では、到底買えない衣装でしょうに」
やはり、手に入れようとしていただけある。知っているのか。
忌々しい。私はクリスティアーヌを視界に入れたくなくて目をそらした。
父上が、私に近づいてくる。
「どういうことだ、ファビアン。ノエリア嬢のドレスは、どうやって手に入れたのだ!?」
「あ、あれは……しょ、商人が、そう、付き合いのある商人が、安くで手に入ると言うので、私のつてで買ったものです。国の貯えを使ったわけではないのです! わ、私の個人資産から払っております!」
流石に、王家の持ち物であるルロワ城を売ったとは、ここでは言い出しずらい。だが、後で言えばいいだろう。父上ならば理解してくださるさ。
それにあれは、いずれ国王になる私の持ち物に違いないのだ!
「ふふふふ」
なぜかクリスティアーヌが笑いだす。
気に障る笑い方だな!
「なぜ笑う! 私は国の貯えを使ってはおらん! 調べてみるがよい!」
「ファビアン、本当なのか?」
「父上、本当です! こんな女の言うことに、惑わされないでください!」
どこを調べようとも、国のお金は一切使っていない!
それは間違いないことだ!
だから、嘘は言っていない!
21
お気に入りに追加
1,229
あなたにおすすめの小説
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
全てを諦めた令嬢の幸福
セン
恋愛
公爵令嬢シルヴィア・クロヴァンスはその奇異な外見のせいで、家族からも幼い頃からの婚約者からも嫌われていた。そして学園卒業間近、彼女は突然婚約破棄を言い渡された。
諦めてばかりいたシルヴィアが周りに支えられ成長していく物語。
※途中シリアスな話もあります。
婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
もふきゅな
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~
キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。
事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。
イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる
どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。
当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。
どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。
そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。
報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。
こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。
シスコン婚約者とはおさらばです。
火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢シャロンには、悩みがあった。
それは婚約者であり、ホロウス侯爵子息のアランが極度のシスコンで、妹のエミリーを溺愛していること。
二人きりの時も、彼女の話ばかり。
さらにエミリーと婚約したクラレンスを敵視しているようだった。
そして夜会の時に事件が起こる。
「よくもエミリーの心を傷付けたな……お前との婚約は破棄させてもらう!」
ついにアランから婚約破棄を言い渡されてしまう。
しかも良からぬ噂まで広まり、落ち込むシャロン。
それでも何とか立ち直ろうとしていると、意外な人物がシャロンの前に現れた。
※ツギクル様、なろう様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる