3 / 50
ただし③
しおりを挟む
ノエリア様はめそめそと泣き出した。
「馬鹿にするのもいい加減にしないか!」
ファビアン殿下にも、私の説明は理解されなかったみたいだわ。
「馬鹿にしたつもりはありませんわ。私は、礼儀として、初めてお会いしたノエリア様にご挨拶しただけにすぎませんわ」
「初めてじゃないのに!」
涙を浮かべ悔しそうに告げるノエリア様に、私は首をかしげるしかない。
だって、本当に初めてなのに。
あ、噂のノエリア様って、こんな感じの方だったのね、って本気で思ったのに。
ああ、どうして学院の卒業パーティーは、今回に限って学院生しかいないのかしら。
例年通りなら、国内の貴族と、国王陛下も参加するはずなのに。
国王陛下がいれば、この場を一挙に解決できるはずなのに!
ファビアン殿下が学院生だけのパーティーを考えているって聞いた時、呆れてしまったけど、本当に実行してしまうなんて思ってもみなかったわ。勉強には全く向いていらっしゃらなかったけれど、一応、実行力はあるのね。学院生が集まって踊るだけなんて、ばかばかしい催しでしかないけれど。卒業パーティーは、学院生が楽しむための催しではないのに。
「婚約を破棄されたくないからと、そのようにしらを切り通すなど、本当に不快だ! ノエリアをいじめて、自分の皇太子妃の座が安泰などと思っていたことも、忌々しいのに!」
ファビアン殿下と話が通じなかった記憶は数あれど、今日が一番ひどいかもしれないわ。
それに、何も事実が伴っていないもの。悪役令嬢だから、ハッキリと言ってもいいわよね。
「お言葉ですが、ファビアン殿下。私がノエリア様にお会いしたことがないことは事実ですし、いじめたこともありませんわ。それに、婚約を破棄されたくないと願っておられるのは、国王陛下ですわ。私ではありません」
会場がざわめく。
私がファビアン殿下に微笑みかけると、ファビアン殿下は唖然として私を見る。隣のノエリア様も呆然としていたけれど、ファビアン殿下よりも先にハッと我に返って口を開いた。
「この素晴らしいファビアン殿下との婚約を望まない方なんているはずがないわ! クリスティアーヌ様は、ご自分の名誉を守るために国王陛下の名前を出しているだけよ!」
ノエリア様の言葉に、私は首をかしげた。
「この素晴らしいファビアン殿下、と言うところを、どこがどう素晴らしいのか説明して下さる? 私には理解ができないのですけれど」
会場が、今日一番にざわめいた。
……今さらざわつくことかしら?
「私がファビアン殿下に愛されているからって、妬んで意地悪を言うなんてひどいわ!」
「私は、ファビアン殿下のどこが素晴らしいのか説明してほしいと言っているのです」
ノエリア様ったら、私が嫉妬などするわけないのに、何を言っているのかしら?
「ファ、ファビアン殿下は、何もかもが素晴らしいですわ! その素晴らしさがわからない婚約者など、婚約者の意味がありませんわ!」
「ノエリア様、どこが素晴らしいのか、具体的に教えてくださる?」
私が畳み掛けると、ノエリア様はわっと泣き始めた。
「ファビアン殿下、私はこのようにクリスティアーヌ様に言われて答えられなくて、いつも惨めな気持ちになるのです」
「クリスティアーヌ嬢、ノエリアをいじめるな!」
「いじめ? 本気でわからないから、教えてほしいだけですわ」
「私のよさが理解できぬ婚約者など、婚約者ではない!」
えーっと、先ほどご自分が婚約破棄するって言ったのだから、もはや婚約者として扱ってくださらなくてもいいのだけど。
「ええ、わからないものですから、ノエリア様にファビアン殿下の良さをご教授いただきたくて」
「ファ、ファビアン殿下の良さを説明して、クリスティアーヌ様がファビアン殿下に益々執着されたら困りますわ!」
メソメソと告げるノエリア様の言葉の意味が理解できないんですけれど、どうしたらいいかしら?
「説明ができない程度、と理解すればいいのかしら?」
私が首をかしげると、ファビアン殿下は顔を真っ赤にしてノエリア様を抱き締めた。
どうやら、侮辱したのは通じたみたいですわ。通じることもたまにあるのよね。滅多にないけれど。
「ノエリア、クリスティアーヌ嬢に私の良さを言うんだ!」
ファビアン殿下に促されて、ノエリア様が視線を揺らす。
ふふふ。何を説明してくれるか、楽しみだわ。
「ファビアン様は、頭もよくて!」
ノエリア様の言葉に、ファビアン殿下が満足したように、ウンウン頷く。
……これ、本気で言ってるのかしら?
「幼い頃から学んでいる語学を習得も出来ない方が、頭がいいと言えるのかしら?」
私の指摘に、ファビアン殿下は顔を歪める。でも、本当のことだわ。
「そ、それは、たまたま殿下には語学の才能がなかっただけですわ。それに、私の言っている頭のよさは、勉強などではなく、こうやって卒業パーティーをいつもと違う催しに変更するような、企画ができるような頭の良さを言っているのですわ! ファビアン殿下は、こうやって国民の意を汲んだものごとを考えられる方ってことですわ!」
ノエリア様が言い終わってホッとした顔になる。
なるほど、ものはいいようね。
私のターン、いいかしら?
「馬鹿にするのもいい加減にしないか!」
ファビアン殿下にも、私の説明は理解されなかったみたいだわ。
「馬鹿にしたつもりはありませんわ。私は、礼儀として、初めてお会いしたノエリア様にご挨拶しただけにすぎませんわ」
「初めてじゃないのに!」
涙を浮かべ悔しそうに告げるノエリア様に、私は首をかしげるしかない。
だって、本当に初めてなのに。
あ、噂のノエリア様って、こんな感じの方だったのね、って本気で思ったのに。
ああ、どうして学院の卒業パーティーは、今回に限って学院生しかいないのかしら。
例年通りなら、国内の貴族と、国王陛下も参加するはずなのに。
国王陛下がいれば、この場を一挙に解決できるはずなのに!
ファビアン殿下が学院生だけのパーティーを考えているって聞いた時、呆れてしまったけど、本当に実行してしまうなんて思ってもみなかったわ。勉強には全く向いていらっしゃらなかったけれど、一応、実行力はあるのね。学院生が集まって踊るだけなんて、ばかばかしい催しでしかないけれど。卒業パーティーは、学院生が楽しむための催しではないのに。
「婚約を破棄されたくないからと、そのようにしらを切り通すなど、本当に不快だ! ノエリアをいじめて、自分の皇太子妃の座が安泰などと思っていたことも、忌々しいのに!」
ファビアン殿下と話が通じなかった記憶は数あれど、今日が一番ひどいかもしれないわ。
それに、何も事実が伴っていないもの。悪役令嬢だから、ハッキリと言ってもいいわよね。
「お言葉ですが、ファビアン殿下。私がノエリア様にお会いしたことがないことは事実ですし、いじめたこともありませんわ。それに、婚約を破棄されたくないと願っておられるのは、国王陛下ですわ。私ではありません」
会場がざわめく。
私がファビアン殿下に微笑みかけると、ファビアン殿下は唖然として私を見る。隣のノエリア様も呆然としていたけれど、ファビアン殿下よりも先にハッと我に返って口を開いた。
「この素晴らしいファビアン殿下との婚約を望まない方なんているはずがないわ! クリスティアーヌ様は、ご自分の名誉を守るために国王陛下の名前を出しているだけよ!」
ノエリア様の言葉に、私は首をかしげた。
「この素晴らしいファビアン殿下、と言うところを、どこがどう素晴らしいのか説明して下さる? 私には理解ができないのですけれど」
会場が、今日一番にざわめいた。
……今さらざわつくことかしら?
「私がファビアン殿下に愛されているからって、妬んで意地悪を言うなんてひどいわ!」
「私は、ファビアン殿下のどこが素晴らしいのか説明してほしいと言っているのです」
ノエリア様ったら、私が嫉妬などするわけないのに、何を言っているのかしら?
「ファ、ファビアン殿下は、何もかもが素晴らしいですわ! その素晴らしさがわからない婚約者など、婚約者の意味がありませんわ!」
「ノエリア様、どこが素晴らしいのか、具体的に教えてくださる?」
私が畳み掛けると、ノエリア様はわっと泣き始めた。
「ファビアン殿下、私はこのようにクリスティアーヌ様に言われて答えられなくて、いつも惨めな気持ちになるのです」
「クリスティアーヌ嬢、ノエリアをいじめるな!」
「いじめ? 本気でわからないから、教えてほしいだけですわ」
「私のよさが理解できぬ婚約者など、婚約者ではない!」
えーっと、先ほどご自分が婚約破棄するって言ったのだから、もはや婚約者として扱ってくださらなくてもいいのだけど。
「ええ、わからないものですから、ノエリア様にファビアン殿下の良さをご教授いただきたくて」
「ファ、ファビアン殿下の良さを説明して、クリスティアーヌ様がファビアン殿下に益々執着されたら困りますわ!」
メソメソと告げるノエリア様の言葉の意味が理解できないんですけれど、どうしたらいいかしら?
「説明ができない程度、と理解すればいいのかしら?」
私が首をかしげると、ファビアン殿下は顔を真っ赤にしてノエリア様を抱き締めた。
どうやら、侮辱したのは通じたみたいですわ。通じることもたまにあるのよね。滅多にないけれど。
「ノエリア、クリスティアーヌ嬢に私の良さを言うんだ!」
ファビアン殿下に促されて、ノエリア様が視線を揺らす。
ふふふ。何を説明してくれるか、楽しみだわ。
「ファビアン様は、頭もよくて!」
ノエリア様の言葉に、ファビアン殿下が満足したように、ウンウン頷く。
……これ、本気で言ってるのかしら?
「幼い頃から学んでいる語学を習得も出来ない方が、頭がいいと言えるのかしら?」
私の指摘に、ファビアン殿下は顔を歪める。でも、本当のことだわ。
「そ、それは、たまたま殿下には語学の才能がなかっただけですわ。それに、私の言っている頭のよさは、勉強などではなく、こうやって卒業パーティーをいつもと違う催しに変更するような、企画ができるような頭の良さを言っているのですわ! ファビアン殿下は、こうやって国民の意を汲んだものごとを考えられる方ってことですわ!」
ノエリア様が言い終わってホッとした顔になる。
なるほど、ものはいいようね。
私のターン、いいかしら?
43
お気に入りに追加
1,227
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢がキレる時
リオール
恋愛
この世に悪がはびこるとき
ざまぁしてみせましょ
悪役令嬢の名にかけて!
========
※主人公(ヒロイン)は口が悪いです。
あらかじめご承知おき下さい
突発で書きました。
4話完結です。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
(完結)婚約破棄されたのになぜか私のファンクラブが結成されました。なお王子様が私のファンクラブ会長を務められています
しまうま弁当
恋愛
リンゼは婚約相手であるチャールズから突然婚約破棄を伝えられた。チャールズはリンゼが地味で華がないからという無茶苦茶な理由で婚約破棄を一方的に行い、新しい婚約者のセシルと共にゴブリンイカ女と酷い言葉でリンゼを罵るのだった。リンゼは泣く泣く実家へと戻ったのだが、次の日ドルチェス王子をはじめとしたたくさんの人々がリンゼを心配してリンゼの屋敷に駆けつけたのだった。そしてドルチェス王子をはじめとする駆けつけた人々から次々にリンゼへの愛の告白を行われ、ドルチェス王子が会長を務めるリンゼ熱烈ファンクラブが結成されたのだった。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
築地シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
【完結】まだ、今じゃない
蒼村 咲
恋愛
ずっと好きだった幼馴染に告白したい──そんな理由で恋人・平田悠一から突然別れを切り出された和泉由佳。
ところが、別れ話はそれで終わりではなかった。
なんとその告白がうまくいかなかったときには、またよりを戻してほしいというのだ。
とんでもない要求に由佳は──…。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる