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魔法の完成
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薬草園の隅の小屋で、二人……いや三人は今日も熱い議論を交わしていた。
「これで完成でいいと私は思うけれど」
サイールが、困ったようにレナを見る。
だが、サイールの前のレナは、術式を見つめながら、顔を曇らせたままだ。
「まだ、十分とは言えないと思いますの」
「でも、記録時間は十分に延びたよ。30分記録できて、しかも繰り返し使えるのならば、レナ嬢の言うところの、撮りこぼしはなくなると思うんだけど?」
サイールが肩をすくめた。
「確かに無限に画像を記録できるようにはなりましたわ。でも、これを正式に魔法局に登録したとして、この術式を悪用する人間が出てこないかしら?」
レナの訴えに、サイールが首をかしげた。
「悪用……?」
どうやらピンと来ていないらしいサイールに、レナは小さくため息をついた。
「好きな相手を陰からずっと撮影し続けるとか、相手の見られたくない場面を隠して撮るとか……そんなことにも使われてしまいますわ」
レナは前世の記憶にあるストーカーや盗撮などを思い浮かべて告げた。
だがサイールはまだ首をかしげたままだ。
「それは気持ち悪いな。だが、この術式を使うには、相当な魔力量が必要だ。それこそレナ嬢や私レベルの。私だってそんな使い方はしないよ」
「私たちはそんなことはしません。でも、私たち以外にも魔力量が多い人間はいるし、これから先出てくる魔力を膨大に持った人間が悪用しようとしないとも限りませんわ」
レナは首を横にふる。
「そんな魔力持ちが、この素晴らしい技術を、そんな馬鹿馬鹿しいことに使うか?」
サイールの声は呆れている。
「事実は小説より奇なりよ、サイール坊っちゃん」
コトリ、とテーブルにハーブティーの入ったカップが置かれた。
「ジャイ先生。……そんなことにこの素晴らしい術式に魔力を消費する人間がいるのでしょうか?」
ジャイを見上げたサイールの表情はまだ訝しげだ。
ジャイが、クスリと笑う。
「サイール坊っちゃんは魔法にしか興味がなくて知らないかもしれないけど、世の中にはいろんな人がいるわ。素晴らしい技術を悪用しようとする人間だって、五万とね。この術式は一部の人間しか使えないようだけど、悪用しようと考える人が出てくるのは間違いないでしょうね」
ジャイの言葉に、レナも頷く。
ようやく納得したらしいサイールが、レナを見る。
「勿体ないが、この術式は公にしない方がいいのかもしれないな」
レナが首をふる。
「魔法局に登録しなければ、この術式は公になることはないのだけれど……どうしても、この術式は登録したいんです」
この魔法は、レナがこの世界で断罪されないための方法のひとつだ。
魔法局に登録されてない術式を、断罪されている場面で出したところで、偽造だと言われかねない。そうなれば、頑張ってこの術式を練り上げた意味がなくなる。
「だが、悪用されると困るのだろう?」
サイールが眉を寄せた。
だが、レナの願いを叶えてあげたいという気持ちはある。ああ! とサイールが自分の髪をくしゃくしゃにした。
答えの出ない問題に、レナも眉を下げた。
「せっかく色々アドバイスをいただいているのに、困らせてしまって申し訳ありません」
頭を下げるレナに、サイールが慌てる。
「私だって、レナ嬢のお陰で、新しい術式を考え付いたりしてるから謝る必要はないよ! レナ嬢の役に立てて嬉しいくらいなんだから! あ、ああ……えーっと、深い意味はないから!」
ワタワタと取り乱すサイールに、レナは困ったように笑った。
「何か方法があれば……」
あたふたしたまま告げたサイールに、レナも頷く。
「記録した画像は全て魔法局で保存されるようにしたらどうかしら?」
頭上から落ちてきたジャイの言葉に、二人が弾かれたように顔を上げた。
「「そうだ!」ですわ!」
レナとサイールの声が揃う。
「ジャイ先生、ありがとうございます!」
レナが深く頭を下げた。
ジャイが微笑む。
「いえ。二人の役に立てて嬉しいくらいよ。私だって、二人のこと応援しているんですから」
「「ありがとうございます!」」
二人の言葉に、ジャイが頷く。
「二人の恋も応援したいんだけれど」
ジャイが小さく呟いた言葉は、また術式に夢中になり始めた二人には届いていなかった。
「これで完成でいいと私は思うけれど」
サイールが、困ったようにレナを見る。
だが、サイールの前のレナは、術式を見つめながら、顔を曇らせたままだ。
「まだ、十分とは言えないと思いますの」
「でも、記録時間は十分に延びたよ。30分記録できて、しかも繰り返し使えるのならば、レナ嬢の言うところの、撮りこぼしはなくなると思うんだけど?」
サイールが肩をすくめた。
「確かに無限に画像を記録できるようにはなりましたわ。でも、これを正式に魔法局に登録したとして、この術式を悪用する人間が出てこないかしら?」
レナの訴えに、サイールが首をかしげた。
「悪用……?」
どうやらピンと来ていないらしいサイールに、レナは小さくため息をついた。
「好きな相手を陰からずっと撮影し続けるとか、相手の見られたくない場面を隠して撮るとか……そんなことにも使われてしまいますわ」
レナは前世の記憶にあるストーカーや盗撮などを思い浮かべて告げた。
だがサイールはまだ首をかしげたままだ。
「それは気持ち悪いな。だが、この術式を使うには、相当な魔力量が必要だ。それこそレナ嬢や私レベルの。私だってそんな使い方はしないよ」
「私たちはそんなことはしません。でも、私たち以外にも魔力量が多い人間はいるし、これから先出てくる魔力を膨大に持った人間が悪用しようとしないとも限りませんわ」
レナは首を横にふる。
「そんな魔力持ちが、この素晴らしい技術を、そんな馬鹿馬鹿しいことに使うか?」
サイールの声は呆れている。
「事実は小説より奇なりよ、サイール坊っちゃん」
コトリ、とテーブルにハーブティーの入ったカップが置かれた。
「ジャイ先生。……そんなことにこの素晴らしい術式に魔力を消費する人間がいるのでしょうか?」
ジャイを見上げたサイールの表情はまだ訝しげだ。
ジャイが、クスリと笑う。
「サイール坊っちゃんは魔法にしか興味がなくて知らないかもしれないけど、世の中にはいろんな人がいるわ。素晴らしい技術を悪用しようとする人間だって、五万とね。この術式は一部の人間しか使えないようだけど、悪用しようと考える人が出てくるのは間違いないでしょうね」
ジャイの言葉に、レナも頷く。
ようやく納得したらしいサイールが、レナを見る。
「勿体ないが、この術式は公にしない方がいいのかもしれないな」
レナが首をふる。
「魔法局に登録しなければ、この術式は公になることはないのだけれど……どうしても、この術式は登録したいんです」
この魔法は、レナがこの世界で断罪されないための方法のひとつだ。
魔法局に登録されてない術式を、断罪されている場面で出したところで、偽造だと言われかねない。そうなれば、頑張ってこの術式を練り上げた意味がなくなる。
「だが、悪用されると困るのだろう?」
サイールが眉を寄せた。
だが、レナの願いを叶えてあげたいという気持ちはある。ああ! とサイールが自分の髪をくしゃくしゃにした。
答えの出ない問題に、レナも眉を下げた。
「せっかく色々アドバイスをいただいているのに、困らせてしまって申し訳ありません」
頭を下げるレナに、サイールが慌てる。
「私だって、レナ嬢のお陰で、新しい術式を考え付いたりしてるから謝る必要はないよ! レナ嬢の役に立てて嬉しいくらいなんだから! あ、ああ……えーっと、深い意味はないから!」
ワタワタと取り乱すサイールに、レナは困ったように笑った。
「何か方法があれば……」
あたふたしたまま告げたサイールに、レナも頷く。
「記録した画像は全て魔法局で保存されるようにしたらどうかしら?」
頭上から落ちてきたジャイの言葉に、二人が弾かれたように顔を上げた。
「「そうだ!」ですわ!」
レナとサイールの声が揃う。
「ジャイ先生、ありがとうございます!」
レナが深く頭を下げた。
ジャイが微笑む。
「いえ。二人の役に立てて嬉しいくらいよ。私だって、二人のこと応援しているんですから」
「「ありがとうございます!」」
二人の言葉に、ジャイが頷く。
「二人の恋も応援したいんだけれど」
ジャイが小さく呟いた言葉は、また術式に夢中になり始めた二人には届いていなかった。
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