【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

シェリ嬢の回想１３

　ある時シェリは、学院の有名人ハース先輩とマディーが握手している場面に遭遇した。
　とても奇妙だった。
　だが、マットが以前ハース先輩に相談したと言っていたことを思い出して、納得した。

「そうか、君が」
　マディーは明らかに戸惑っていた。
　ハースに握手をされている。しかもガッチリ。
「ええ、そうなんです」
　マットが笑ってしっかりと頷く。

「俺は応援しているから」
　ハースが大きく頷く。シェリはハッとする。マットは二人の関係を包み隠さずハース先輩に相談したのだと。
　そしてハース先輩は、変人ではあるが、心は広い人間らしい。
　二人の関係を応援する。何てすばらしい。
　シェリは胸が熱くなった。

　シェリも勿論、二人のことを応援している。
　だが、二人は大っぴらにしたいわけではないと理解しているので、公には応援できない。
　だから、その気持ちを、ハースが代弁してくれたような気がした。

「ありがとうございます」
　マットが返事をすると、マディーは首を傾げていた。
　きっとマディーはこうやって公に応援されて気恥しいんだろう。

　尊い。
　二人の尊さは、こうやってわかる人には分かることなんだと、シェリは頷いた。