【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

シェリ嬢の回想１２

　シェリはたまたまマットが告白されている場面に遭遇したことがある。
　シェリの視界には、その奥にマディーがいた。きっと、マディーの心中は穏やかではなかっただろう。
　相手は女生徒。

「マットくん、好きなの」
　たまたま通りかかったところで、告白されているマットにシェリは遭遇した。
　つい隠れてしまったのは、その奥にマディーが見えたからだ。嫉妬するマディーを見て見たい気がした。
「ごめんなさい」
　マットは即答していた。

　シェリは頷く。それ以外に答えはないだろう。
「他に好きな人がいるの？」
　いるに決まっている！　シェリは叫び出したい気持ちになった。なぜ気付かないのか、その方が不思議でしかなかった。
「とても大切な人がいるんです」
　即答しているマットに、マディーがホッとした。どうやらマディーは嫉妬心を露わにするタイプではないらしい。
　密やかに愛を与えるタイプなのかと、シェリはマディーに好感を持った。

「誰？」
　もはや、告白している女生徒は、シェリにとっても邪魔ものだった。早く、マディーとマットの二人きりの世界にしてあげて欲しかった。
「言いません。僕の大切な人が傷つけられたら困るので」
　マディーが顔を伏せた。
　
　ああ、なんて尊い！
　マットの言動が既にバレバレなことは気にはなったが、こうやって愛する人を守ろうとするその行動は、間違いなく尊かった。