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マディー・ガリヴァの憂鬱⑰

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 マディーはシェリをベッドにそっと横たえた。
 頬を赤らめ艶やかな表情のシェリは、上から眺めても扇情的だった。
 表情だけではない。乱れたドレスの裾から覗く白い足も、なまめかしい。
 マディーはコクリと唾を飲み込む。

 やることはわかっている。
 だが、マディーは初めてだった。
 だから、シェリを優しく扱えるのか不安があった。
 ともすれば、欲情に任せて、乱暴に扱ってしまうかもしれなかった。

 何しろ、初めて女性として意識したシェリは、どこもかしこ細い。
 いや、女性らしさを強調する胸やお尻にはそれなりの肉感があるのだが、ひどく扱えば折れてしまいそうな気さえした。
 
 それに、初めての行為でシェリを嫌な気分にさせてしまうかもしれないことに躊躇が生まれた。
 シェリを大事にしたいからだ。
 シェリとの将来を考えているからだ。

 この行為でシェリに嫌われてしまうかもしれない可能性はゼロではない。
 それを思うと、マディーは小部屋につれてきてしまった自分の浅はかさが憂鬱になった。
 もっとシェリと関係性を深めてから、こんな行為をするべきなのだ。

 考え込むマディーの手に、シェリがそっと触れた。
「マディー、シテ?」
 なまめかしく動くシェリの唇に、マディーはクラクラした。危うく勢いで襲いかねない。だがマディーは理性で感情を押し止めた。
「シェリ嬢……」

「責任を取ってほしいとは言わないわ。貴方を感じてみたいの……」
 シェリはマディーをじっと見ている。
「悪い、シェリ嬢」
 そのマディーの言葉に、シェリの表情が陰り、目を伏せた。
 マディーは慌てる。

「シェリを抱きたい気持ちはある。でも、責任を取るつもりでいるから、もっと二人の仲を深めてから……抱かせてくれないか?」
 え、とシェリが声を漏らして、ゆっくりとマディーを見た。
 マディーはシェリを抱き起こすと、シェリの足元にひざまづいた。
「シェリ嬢、結婚を前提に付き合ってくれないだろうか?」

 見上げるマディーの顔を見下ろすシェリの顔が、徐々に染まって行く。
「え、でも……あの……」
「俺じゃ、ダメか?」
 シェリの手をマディーがそっと握った。
「我が家は貧乏貴族だが、いずれ脱出つもりではいる。だから、俺のとなりに立ってくれないだろうか?」
 うつむいたままのシェリに、マディーは眉を下げた。

「やはり……結婚相手としては見てもらえないんだろうか」
 シェリは小さく首をふった。
「夢、みたいで。たぶん、私ずっと……マディーのことを意識していたんだと思うの」
 真っ赤になったシェリがうつむく。
 マディーは目を見開く。
 真っ赤になってうつむくシェリを、マディーは横に座り抱き締めた。

「好きだ」
 シェリはこくんとうなずくと、マディーを見上げた。
「ねえ……きちんと婚約しなきゃダメ?」
 潤んだ瞳で見つめられて、マディーは理性が焼ききれた。
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