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レイーアの戸惑い⑤

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「姉上。俺はシェリ嬢と先に帰る」
 先ほどどこかへ行ってしまったマディーが、シェリ嬢と呼ばれる令嬢と共に現れたのは、30分もしないうちだった。
 シェリの顔は赤らんでいて、くったりとしている。
 その体をマディーが支えている。
 
 どうやらシェリの体調が悪いらしい、とレイーアは理解した。
「そ、そうね。早く送って差し上げるといいわ」
 心配そうなレイーアに、マディーが目を伏せて頷いた。
「マディー、部屋を使わせてもらうといいよ」
 マットが提案する。

 ハッとしたマディーが、頷く。
「そう……だな……」
 気遣わしげにマディーがシェリの顔を覗き込む。
 シェリはちょっとだけ顔をあげた。その目は潤んでいて、苦しそうに見える。
 またうつむいたシェリが小さく頷くと、マディーはシェリを横抱きにした。
「失礼する」
 マディーが歩き出す。

 マディーの颯爽とした姿に、レイーアは何だか感慨深いものを感じる。
 女性を気遣えるような大人になったんだ、と。
「マディーも、大人になったのね」
 ぼそりと呟いたレイーアに、マットがクスリと笑う。
「どう見ても、大人だろう?」
「だって、あんな風に体調の悪い女性を気遣ったりできるようになったんだな、って」
 
 なるほど、とマットが頷く。
「レイーア、我々も休憩したいから、部屋をお借りしようか?」
 確かに久しぶりの夜会で、レイーアは疲れていた。
「そう、ね」
 頷いたレイーアに、マットが微笑む。
 その目が妖しい光をたたえているような気がして、レイーアは首をかしげた。
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